2016年09月03日

思考の技術


アルベルト オリヴェリオ『論理的思考の技術―「考える脳」をつくる50の方法』を読む。

論理的思考の技術.jpg


同じ著者,アルベルト オリヴェリオの,

『覚える技術』については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/441242881.html

で触れた。その「アート」シリーズの第一作らしい。原題は,「Arte」とある。技術である。しかし,邦題の,

論理的思考の技術,

というのはいかがなものか。

Pensare

とは,「思考」であり,推薦のことばで,池谷裕二氏は,

「いかに考えるか」

ではないか,と書き,

「思考(神経情報処理)は,あえて脳科学的に説明すれば,『アトラクター・ダイナミクス』によって遂行されている。つまり,『帰納法』である。いかに少ない情報で全体を把握するかという能力であり,進化論的にみれば,動物が大自然の中で効率よく生き抜いていくために必要に迫られて発達させた機能である。」

と説明するとおりである。しかし,帰納法は,黒鳥が見つかるまで,「白鳥は白い」という結論は,それまで知られている範囲で(つまりは北半球で)しか帰納させられなかったように,既知の範囲で結論を出すという,一種の限界があり,その中で結論へと飛躍させるところに,勘違いや思い込みが入る余地がある。本書が,

「論理のワナ」にだまされてはいけない

という第一章から始めている所以である。

著者は,「はじめに」で,

「たいていの人は,論理的な思考力や,上手に考え,画期的な答えを出してくれる類推能力,創造力を高めようとしていません。その必要に迫られていないのです。」

しかし,「私たちの脳は,筋力と同じように訓練(経験や教養)によって鍛えることができる」。なぜなら,「『考えられる能力』とは人間の頭脳に初めから備わったものではなく,自分で身につけ,磨いていかなければ」いけないものだからである,と述べています。そして,

「『考える脳』は『意思決定できる脳』に結びついています。」

とも。本書は,

「私たちがなんらかの意思決定を下すときも,認識のワナや感情のワナ,社会のワナなどに陥る可能性はあるわけです。
 本書は,そんなワナにはまりたくないと考える人,あるいは理性による論理的な思考だげてなく,水平思考や拡散的思考など,新たな創造的思考を実践してみたいと思う人たちの容貌にお応えしたものです。」

とある。

典型的な認識のワナは,本書で再三出る,

フレーミング,

である。著者は,こう説明している。

「『枠組み(フレーム)』が現実の世界とは異なる絵の『世界』を私たちに見せてくれる…」

と。この「枠組み」が,でっち上げの意味の,

フレーミング,

に通じている。ミュラー・リアーの矢をはじめとする錯視は,われわれの認知に,フレーミングが存在していることを示している。別の言い方をすれば,

バイアス,

である。そして,帰納法(特殊から一般へ)や演繹法(一般から特殊具体例へ)を,われわれは気づかず使っているらしい。

「意識しているか否かにかかわらず,ほとんど自発的に私たちが理論を組みたてる際の基本的な方法になっているのです。たとえどんなに簡単なものであっても,演繹的な考え方は,ほとんどの場合,三段論法を基本としています。それは私たちの知能が現実の枠組みを正しくとらえ,導き出した結論の正当性を『保証する』ためにつくりあげるものです。
 私たちの知能が処理する大部分の情報は,論理の追求がなく,『自発的に』処理されているようにみえても,実は三段論法の鎖をかいくぐり,類推のふるいにかけられているのです。」

多くは,社会的常識に基づくが,その論理の組みたてが必ずしも有益な結論に至るとは限らない。たとえば,

①どんな政治家も嘘をつく。
②マリオは政治家である。
③マリオは嘘をつく。

という例を挙げる。一般論から演繹しているが,これが正しいとは限らない。しかし,こうしう常識を前提にして,論理を組み立てることはよくある。

論理の組み立て

枠組み

に,つまり粉飾に丸め込まれ,そのフレームの世界の中で,あやまったものを見させられる,とはこのことである。そのためにどうしたらいいかは,

考える脳の「プロセス」

「あいまい問題」

の読んで戴くほかはないが,個人的には,創造的思考や直観との絡みで,

類推思考,

の言及に興味がわく。なぜなら,著者は,本書の最後で,

「どんな意思決定においても,その基本となるべき論理・合理主義的な判断基準を『直観に基づいて(アプリオリ)』見極めることが大切なのです。
 また,多くの影響力をもつ他の『論理』を基準に,すでに実行している選択を正当化するために『経験に基づいて(ポステリオリ)』,それらを調べることを忘れてはならないでしょう。」

と。結論づけているのだから。

著者は,類推的思考を,こう述べている。

「類推的思考は,いわゆる(演繹的な論理に基づいているという意味で)『論理的』ではありませんが,未知の対象物を認識しようとする試みに対して『強制』したり押しつけたりする論理(類推 アナロジー)が伴っているのです。そして,類推には典型的な強制ともいえる次の3つの点が必然的に存在しています。
 1.いくつかの要素が類似していること。
 2.種々の役割における構造的な類似点を探求すること。
 3.類推的な思考を導くための目的や対象物が存在すること。」

通常,比喩を使って,類推と同じ思考スタイルをとるが,

「類推の働きについては,まだ第一に寓話や比喩を通じて,考え方を間接的に表現できる…。さらに,類推にはもう一つ重要な働きがあり,それは,『うまい駆け引き』ができることです(直接的な表現を使うことができなかったり,危険が伴ったりする場合,類推することで事実を暗示的に伝えられるからです)。(中略)
さらに,類推にはことばを飾る修辞的な働き(よりわかりやすく具体的なことばで,抽象的な世界を『視覚化』させながら対手を納得させる働き)もあります。」

といった利点があるが,類推的思考のプロセスを,著者は,

①(自分の記憶や知識の中から)情報源としていくつかの類似点を選択する。
②その類似点を対象物に応じて図式化する(類似点をさまざまな側面にあてはめる)。つまり,新しい視点を通して,既知の事実や可能性を未知の事実や自分の予想にまで拡大して考える。対象物のもっている新たな特性を明らかにしていく。
③対象物のもつユニークな側面を見極める。
④類推の結果,成功例や失敗例から多くのことを学び取る。

この能力を,強化するには,意識的に,

①対象物の相互関係を読み取る。
②類推的思考の対象となるべきものを図式化するために,記憶をたどって役に立つ情報源を引きだす。
③知能の論理的なプロセスを通して,類推を働かせる。

をしてみることだ,と著者は,説いている。僕は,鍵は,

図式化,

であり,これは,

モデル化,
象徴化,

ともなっていると思う。この積み重ねが,個人的には,

直観,

つまり,

パターン認識,

を醸成していくのだと感じている。

「直観とは,実はほとんど無意識下の思考力であり,意思決定能力です。それは知能が感知できないほど素早く行なわれる一種の価値判断や即座の連想に基づいているものなのです。」

そして,その,

「ほとんどが類推思考です。」

と,著者は書いている。もちろん,その危険も含めて承知しておく必要はある。

参考文献;
アルベルト オリヴェリオ『論理的思考の技術―「考える脳」をつくる50の方法』(大和書房)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:03| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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