2016年09月04日

学習方法の知


アルベルト オリヴェリオ『メタ認知的アプローチによる学ぶ技術』を読む。

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同じ著者,アルベルト オリヴェリオの,

『覚える技術』
『論理的思考の技術』

について,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/441242881.html

http://ppnetwork.seesaa.net/article/441581523.html?1472846643

で,それぞれ触れた。その「技術」シリーズの一冊である。

「何かを学習することは別の状況で役立てることができ,それを応用することが可能」

で,次の経験に活かすことができるが,それは,

「何かを経験することは,それに続く経験に活かされるのです。というのは,以前の経験の特殊な側面を利用するのではなく,それを異なる経験に応用したり,必要不可欠な情報を捜したり,より上手な方法を見につけたりして,『学習方法を学んだ』」

ことになる。この,

学習方法を学ぶ,

というのは,「生まれつきの能力ではなく,後天的な能力」であり,その認知能力を,

メタ認知能力,

と呼ぶ。つまり,

自分の認知をメタ化する能力,

である。たとえば,

「自分の考えの矛盾に気づいたり,課題の特性を把握したうえで解決方法を選択するなど,通常の認知より高次の」

省察とか反省とか,という言い方をすることもある,メタ・ポジションから自分を見る視点に立つ,という言い方もできる。いい例かどうかわからないが,知には,ライルの言う,

Knowing how(いかにやるかを知っている)

Knowing that(そのことについて知っている)

という二面があるが,Knowing howだけではなく,Knowing howについてのKnowing thatを高めていくことで,自分の「どうやるか」をメタ化した方法として意識することができる。その意味で,

「『メタ認知』というのは私たちが知能やその機能,問題解決法などについてもっている知識を示す言葉なのです。私たち人間がどのように考えるのかという働きを知ることは,認識能力を高めることにつながっていて,学習にとって不可欠な知能のプロセスを知ることにもなるのです。つまり,私たちの知能がどのような機能をもち,学習のメカニズムとはどんなものなのかを知ることが,学習方法を学ぶための第一歩となるわけです。」

と,著者は「はじめに」で書く。本書のタイトルに,「メタ認知的アプローチによる」がついている所以である。つまり,

「私たちの認知活動,つまり思考力を上手に用いること」

で,学びの効果を高めようとするのが狙い,というわけである。その点で,学習プロセスをクローズアップした,

第三章 学習の方法
第四章 最初の発見から学習方法を学ぶまで

は,なかなか面白い。学習とは,

「人の知能に修正を加えることであり,その修正は外部環境と自らの行動に左右され,さらには記憶,理解,思考といった学習レベル,すなわち成長とともに実現される体験や学習のレベルと深い関わりがある…。」

のであり,そのつどその学習体験を一般化して,応用しようとする能力は,

転移(トランスファー),

と呼ばれる。それは,

第一に,学習の「陳述記憶」力

つまり,

「新たな学習体験が連続的な動作などのプロセスを伴い具体的な物であっても,それを論理的に(抽象的に)説明する能力…,つまり,一連の概念や出来事を言葉で明確に表現できる(陳述できる)」

ことが重要になる。つまりは,言語化すること自体が,メタ化することなのだから,それが明晰であるほど,経験を対象化できていることを意味する。

第二は,学習の「状況設定」力,

つまり,

「可能な限り行動を状況に当てはめ,特定の場面や前後関係(コンテキスト)と関係づけようとする能力」

である。文脈抜きではあり得ない,というあたりまえのことだが,学習とは取り巻く環境との関係,つまり,グレゴリー・ベイトソンが言う,

相互作用のダンス,

なのであり,そのためには,

①学習課題に関する知識は,なるべくそれを実践する必要のある状況と関連していること,
②学習課題に関する諸要素は,どんな状況にも応用できるものではなく,特定の状況でのみ利用できるものであること,つまり抽象的ではなく具体的な場面で利用できるものであること。
③理屈っぽく抽象的な学習はほとんど役立たないこと。

と,著者は整理する。

かつては, 脳については,

青年期から老年期にかけて,ニューロンが減少していく,
誕生後,ニューロンは増殖しない,

というのが常識であった。しかし,この説は覆されつつある。むしろ,

ニューロンの刈り込みがあるからこそ,神経回路が形成されるし,

刺激のあ環境であれば,ニューロンは増殖する,

と言われる。それは,この変化の時代を生き抜くためには,

「青年期から老年期にかけても,ずっと学習を続ける必要がある」

ということでもある。その意味で,

学習方法の学習,

は一生続くのである。

参考文献;
アルベルト オリヴェリオ『メタ認知的アプローチによる学ぶ技術』(創元社)
三宮真智子編『メタ認知―学習力を支える高次認知機能』(北大路書房)
ギルバート・ライル『心の概念』(みすず書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:13| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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