2016年09月19日


「朝」については,「朝まだき」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/442024908.html?1474144774

で触れたので,その対の,

夜,

の謂れを考えてみる。しかし,『古語辞典』には,「夜」は,

昼の対,

らしい。しかも,

「奈良時代には複合語に使わず,副詞的に独立した形で用いた」

とあり,『万葉集』の

「あかねさす昼は物思ひぬばたまの夜はすがらにねのみし泣かゆ」

を例に挙げている。通常は,「よる」ではなく「よ」と言ったらしく,

「『ひ』(昼・日)の対」

とある。『語源辞典』には,

「『ヨ(夜)+る(接尾語)』です。ヒ(日)+るに対する言葉です。日没から夜明けまでを言います。日本語のヨは,時間的空間的に限られた区間,区切りを表します。したがって,竹の節と節の間のヨと,本来同じ語源と思われます。ヨルは,接尾語ルをつけて,代,世と区別し,夜間を意識した語です。」

とある。「朝まだき」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/442024908.html?1474144774

で触れたように,『古語辞典』によると,上代には昼を中心にした言い方と,夜を中心とした時間の言い方とがあり,

昼を中心にした時間の区分,アサ→ヒル→ユフ,
夜を中心にした時間の区分,ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ,

と,呼び方が分けられている。前者がヒル,後者がヨル,ということになる。アサとアシタは同じ「朝」である。

「ヨ(ル)」に当てられた「夜」の字は,

「亦(エキ)は,人のからだの両わきにあるわきの下を示し,腋(エキ)の原字。夜は,『月+音符亦の略体』で,昼(日の出る時)を中心にはさんで,その両脇にある時間,つまりよるのことを意味する。」

とあるので,「昼」の視点から「夜」をみていることかをみていることがわかる。

「ひ(る)」は,『古語辞典』に,

「ヒ(日)と同根」

とあり,「ヒ(日)」を見ると,

「太陽というのが原義。太陽の出ている明るい時間,日中。太陽が出て没するまでの経過を時間の単位としてヒトヒ(一日)という。ヒ(日)の複数はヒビというが,二日以上の長い時間を一まとめに把握した場合には,フツカ(二日)・ミカ(三日)のようにカ(日)という。」

とある。語源は,

「ヒ(日)+ル(接尾語)」

で,「ヨ(夜)+ル」に対する語,とあり,さらに,

「朝夕をのぞいた明るい時間をいう」

と,『語源辞典』は言う。『古語辞典』の,

昼を中心にした時間の区分,アサ→ヒル→ユフ,

という,時間についての,昼を中心にした言い方で言う,「あさ」と「ゆう」の間の「ヒル」ということになる。

「ヒ」に当てた,「日」の字は,そのままズバリ,

太陽の姿を描いた象形文字,

で,「昼(晝)」の字は,

「晝は『筆を手に持つ姿+日を視覚に区切った形』。日の照る時間を,ここからここまでと筆でくぎって書くさまを示す。一日のうち,主となり中心となる時のこと。夜(わきにある時間)に対することば」

とある。昼夜は,きっちりと区切られている感覚,らしい。

昼を中心にした時間の区分,アサ→ヒル→ユフ,
夜を中心にした時間の区分,ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ,

の,グラデーションの感覚とは違うようだ。

ちなみに,

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1313110488

では,朝昼夜を,

「【朝】夜明け時のことを古くは「アケシダ(明け時)」と言い、この「アケシダ」の「ケ」が脱落して「アシタ」になり、さらに変化して「アサ」になったようです。

【昼】古代において「ル」というのは、「状態」を表す語だったそうで、「日(ヒ)(=太陽)」がある状態という意味で「ヒル」と言うようになったようです。

【夜】昼と同様に「ル」は状態。「ヨ」は、「他の」とか「停止」を表す語だったそうで、「他の状態(昼でない状態)」や「活動が停止している状態」ということから「ヨル」になったようです。」

と整理している。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


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ラベル: 朝まだき
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posted by Toshi at 05:06| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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