2016年10月03日

胡乱臭い


「胡散くさい」は,

どことなく疑わしい,何となく怪しい,

といった意味であるが,「うさん」を引くと,

烏盞,
胡盞,

の字を当てる。『広辞苑』には,

(ウ(胡)は唐音)黒色の釉の建盞(けんさん)で,茶家の用いる天目茶碗の一種,

とある。「建盞」を引くと,

「宋の頃から中国福建省建窯で焼かれた天目型茶碗。窯変・油滴が著名。古くは天目と区別し,建盞を一般の天目より高くみなしていた」

とある。建盞天目は,たとえば,

http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/71812/1

にあるような,

「建窯で造られていた天目茶碗には、口縁部が強く反るタイプのものと、あまり反らないタイプ(いわゆる天目形)の2種類があり。この碗は後者の一例。建窯の天目茶碗にかけられた黒い釉薬には、茶色や銀色の細かい縦筋が無数に見られるものが少なくない。日本では、これを稲の穂先の芒(禾)に見立てるため、この種の釉薬がかかった天目茶碗を禾目天目と呼んでいる。」

と説明される。天目茶碗は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%9B%AE%E8%8C%B6%E7%A2%97

によると,

天目茶碗.jpg

(宋代の天目茶碗)


「天目茶碗の代表的な物として、現在の福建省建陽市にある建窯で作られた建盞(けんさん)と呼ばれるものや、江西省吉安県にある吉州窯で作られた玳皮盞(たいひさん)/鼈盞(べつさん)が挙げられる。前者からは『曜変天目』(ようへんてんもく)・『油滴天目』(ゆてきてんもく)・『灰被天目』(はいかつぎてんもく)・『禾目天目』(のぎめてんもく)、後者からは『木葉天目』(このはてんもく)、『文字天目』(もじてんもく)、『鸞天目』(らんてんもく)が派生した」

と説明される。因みに,

「『曜変』…『天目』という言葉と同じく日本で作られた言葉で、中国の文献には出てこない。」

という。「曜変」とは,

「漆黒の器で内側には星の様にもみえる大小の斑文が散らばり、斑文の周囲は藍や青で、角度によって虹色に光彩が輝き、『器の中に宇宙が見える』とも評される。曜変天目茶碗は、現在の中国福建省建陽市にあった建窯で作られたとされる。」

さて,「胡散臭い」である。語源は,

「『ウ(胡,唐宋音)+サン(散,漢音)』で,どこなく怪しい意で,中世以後の言葉」

とあり,漢字の「胡」は,

「『肉+音符古』で,大きく表面を覆い隠す意を含む。古はたんに音をあらわし,原義(ふるい)には関係がない」

とあり,

ぼやけていてあいまいなさま,いいかげん,

といった含意で,どうやら当て字の気配がある。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/u/usankusai.html

には,

「胡散臭いは近世以降の言葉で、怪しいさまを意味する『胡散』に『らしい』を意味する接尾 語の『臭い』をつけて、形容詞化されたものである。 胡散の語源は、疑わしいを意味する 漢語「胡乱(うろん)」からとする説。 茶碗の一種で、黒の釉(うわぐすり)をかけた天目茶碗の『烏盞(うさん)』からとする説があり,この二説のいずれかと思われる。その他に,ポルトガル語で怪しいという意味の『Vsanna(ウサンナ)』からとする説もあるが,『胡散』の語がつかわれ始めた時代と合わない。香辛料の名前や薬の名前といった説もあるが,そのような名前の香辛料も薬も過去に実在しない。『胡』を「う」と読むのは唐音,『散』を『さん』と読むのは漢音のため,『胡散』は和製漢語と思われる。」

とある。どう考えても,「烏盞」から「胡散」が出てくる意味かがよくわからない。敢えて言うと,

「中国では曜変天目は不吉の前兆として忌み嫌われ、すぐに破棄されたために中国に現存せず、わずかに破壊の手を逃れたものが密かに日本に伝来した、とする説も唱えられた」

といことから(中国での陶片の出土状況から南宋時代の最上層の人々に曜変天目が使われていたらしいが),

乱り,
とか
怪しい,

という意味が牽強付会できなくもない。『大言海』は,「胡散」は,「胡乱」由来をとり,中国の俗語,とする。

「鎌倉時代に,禅僧の伝へたる語なるべし。胡散,胡盞,胡曹抄など云ふ音も,同じ」

として,

みだりなること,烏亂,
転じて,たしかならぬこと,怪しく疑わしきこと,

と意味を載せる。この方が,語源としては自然な気がしないでもない。

なお,「臭い」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/440846962.html?1470599269

で触れたが,「くさ(臭)し」は,『古語辞典』に,

「クサリ(腐り)・クソ(糞)と同根」

とされ,『日本語の語源』には,

「クサし(臭し)はいやなにおいがするさまをいう。樟脳や樟脳油をつくる樟(くすのき)は臭いがするのでクサキ(臭き)木と呼んだ。サキ(s(ak)i)の縮約でクシ・クス(樟)となった。…クサキフン(臭き糞)の語幹のクサはクソ(屎)になった。」

とある。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%9C%E5%A4%9%E5%A4%A9%E7%9B%AE%E8%8C%B6%E7%A2%97
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%9B%AE%E8%8C%B6%E7%A2%97
http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/71812/1


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
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