2016年10月05日
二人称
どんな二人称があるかについては,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E4%BA%8C%E4%BA%BA%E7%A7%B0%E4%BB%A3%E5%90%8D%E8%A9%9E
に詳しいが,乏しい意見では,
お前,
ぬし,
君,
なんじ,
等々のように,かつては,相手への尊称や敬称であったものが,相手を貶める言い方になっているものと,
われ(我),
てめえ(手前),
な(むぢ)(汝)
等々のように,かつては,自分のことを指していた呼称が,相手へ転化されたものと,
そち,
そなた,
そこもと,
あなた,
等々のように,方向を指していた言葉が転じたものと,
おたく(お宅),
のように,家や組織や分野など,その人の所属を二人称に代替したもの(今日の「オタク」の語源でもある),があるようである。
相手への尊称や敬称から二人称に転じた,「ぬし」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/434073304.html
で触れた。「お前」は,
御前,
あるいは,
大前,
で,神仏または貴人の前,という意味であった。なんじ(汝)は,
「ナ(汝)+ムチ(貴)」の音韻変化,
で,「なむぢ」とも訓む。「な」は,「己」と当てて,
自分の呼称,
であったが,二人称に転じて,「汝」と当てる。「君」は,
上代の姓の一つ,
自分の使える君主,
を指したが,二人称に転じた。貴様は,近世前期までは目上に対して使っていたが,近世後期以降,同等以下となり,最近は,貶めるニュアンスがある。
自称から二人称に転じたものとしては,「我」は,
「ワ(自分自身)+れ(指示的接尾語)」
で,自分自身を指す。中世以降,二人称に転じ,だんだん相手を卑しめる使い方になる。
われ,
とか
わりゃあ,
というのも転化したもの,と思われる。。「手前」は,
「手+前」
で,自分の手の前,転じて,自分を指す。
手前ども,
という言い方を,まだする。自分をへりくだった言い方だが,二人称に転ずると,目下を指し,
てめぇ,
と訛ると,相手を貶める意味になる。「おのれ」も,
「オノ(己)+レ(接尾語)
で,「レ」は,「ワレ(我)」や「カレ(彼)」の「レ」と同じである。この場合も,
自分自身,
を指すが,二人称に転ずると,
おのれ,
おんどれ,
おんどりゃあ,
等々と貶め度が高まる。「うぬ(汝)」も,「おのれ」の転化したもの。うぬぼれ(己惚れ)と同じ,「おのれ」「うぬ」と「o→u」転換である。
方向指示から二人称に転じたものとしては,「そち」は,
それとさせる方向,そちら,
の意であり,
「そこもと」は,
「そこ」よりも場所をしっかり特定するする,
意だし,
「そなた」は,
其の方の約で,
いずれも,方角から,目下の者を指す二人称に転じた。「あなた(彼方)」は,
此方(こなた)の対で,遠称,
で,「かなた(彼方)」から「k」が脱落したもの。本来,自分との距離を意識しているので,
「第三者を敬って指す語」
であったが,江戸時代以降,二人称に使うようになった。『大言海』に,「此方(こなた)」の項で,
「コノカタの,ノ,カ,約(つづま)りて,ナとなる」
とあり,「そのかた,そなた」「かのかた,かなた」「あのかた,あなた」「どのかた,どなた」が皆同じ,とある。相手を貶めるのは,発話者の近い距離の「そこ」だからのようだ。しかし,「あなた」も,
あんた,
と転化すると,少し意味が変わる。
参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E4%BA%8C%E4%BA%BA%E7%A7%B0%E4%BB%A3%E5%90%8D%E8%A9%9E
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
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