2016年10月08日

メタ認知


三宮真智子編『メタ認知―学習力を支える高次認知機能』を読む。

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本書は,「はじめに」の劈頭,

「人間には,認知活動それ自体を対象として認知する心の働きがある。これがメタ認知とよばれるものである。」

で始まる。

自分自身をメタ・ポジションから見る,

と言ってもいい。当然,その自分自身をもメタ化することができる。

メタメタ認知,

もあるし,

メタメタメタ認知,

もありえるが,実感では,堂々巡りの言い換えのようなところに陥る。メタ化には限界があるはずである。ちょうど,鏡で自分の目の中に映る自分の目を見るのに似ている。当然視界の限度がある。

メタ認知が話題になっているのは,

「メタ認知を働かせることにより,私たちは,自分の判断や推理,記憶や理解など,あらゆる認知活動にチェックをかけ,誤りを正し,望ましい方向に軌道修正することが可能になる。また,自分の認知的な弱点を補い,パフォーマンスを向上させることができる。」

という機能を持っているからだが,これが重要になってくるのは,

「学習活動を効果的に行うために欠かせない」

からだし,

「学ぶ力すなわち学習力を考えるとき,メタ認知こそが,この学習力を支えてくれる。」

からだ。本書では,

「認知心理学,教育心理学,学習心理学,発達心理学,言語心理学,臨床心理学,障害児心理学,神経心理学といった多岐にわたる研究領域を視野に入れ,特に学習に関連するメタ認知研究の現状と課題を論じる」

ものになっている。当然研究途上のものもある。しかし,本書は,

「学習に関連したメタ認知の理論研究から応用研究までを幅広く網羅し,…最新のメタ研究の成果を系統的に紹介する」

ことを目指している。

第一章 メタ認知研究の背景と意義

で,かつては,

省察(reflection),
あるいは,
省察的思考(reflective thinking),
あるいは,
内観(introspection),

と呼ばれてきた先史から,ピアジェの,

認知の自己調整(self-regulation),

を経て,

心の理論(theory of mind),

や,ヴィゴツキーの,

外語(external speech)から内語(inner speech)へ,

等々を経て, 1970年代以降,

メタ認知(metacognition)

という言葉が使われ,現時点での,

メタ認知知識,

メタ認知活動,

を整理している。メタ認知知識は,

Knowing that,

メタ認知活動は,

Knowing how

と喩えると,僕にはわかりやすい。メタ認知活動は,

メタ認知的コントロール

メタ認知的モニタリング,

と分けられるらしい。そして,こう整理する。

「日常の学習場面においても,自分が学習内容を理解できていないことがわかったり(メタ認知的モニタリングの失敗),目標設定が高すぎたり低すぎたりする(メタ認知的コントロールの失敗)など,…メタ認知を修正するためには,メタ認知そのものを認知の対象とすること,すなわちメタメタ認知を働かせることが必要である。」

Knowing howについてのKnowing that,

の蓄積ということになる。さて,そうやって,メタ認知の研究を俯瞰した後,

第2章 学習におけるメタ認知と機能,
第3章 知識の獲得・利用とメタ認知,
第4章 学習方略とメタ認知,
第5章 学習における動機づけとメタ認知,
第6章 文章の理解におけるメタ認知,
第7章 数学的問題解決におけるメタ認知,
第8章 科学的思考と科学理論の形成におけるメタ認知,
第9章 談話の産出・理解におけるメタ認知
第10章 学習の障害とメタ認知
第11章 認知行動療法とメタ認知
第12章 メタ認知の神経科学的基礎

と各論に入る。特に,学習の,

自己調整,

つまり主体的に学習していくためには,

自己効力感(ある課題に対する自分にはできるだろうという自分への期待),

に支えられる,ということは,動機づけにおいての,

自己決定性,
自律性,

に繋がり,それが,原因帰属において,

自分以外の事柄(外的)
自分(内的)

に起因させるかにつながり,自尊感情を左右するところにもつながっていく。

最後に,

「前頭連合野はメタ認知的知識を利用したメタ認知的モニター,メタ認知的統御に最も重要な役割を果たしている…・前頭連合野損傷の患者が,『どのようにすべきかという知識については,正しく保持しているのに,それを場面に即して利用することができない』という事例が数多くあげられている。メタ認知の知識は意味記憶として海馬の働きで後連合野に,あるいは手続き記憶として大脳基底核に蓄えられていると考えられている。ただそうした知識を身につける過程では,『何をどのように身につけるか』という点で前頭連合野は重要な役割を果たしていると考えられる。」

どう身につけるかというプロセスをモニタリングした経験が,どうするかの実践のコントロールに活かされる,という意味で,実体験の感覚と合致する。それをコントロールし支えているのが,前頭連合野ということになるらしい。

参考文献;
三宮真智子編『メタ認知―学習力を支える高次認知機能』(北大路書房)



ホームページ;
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今日のアイデア;
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posted by Toshi at 04:59| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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