2016年10月18日
日和
「ひより」を,
日和,
と書くのは,当て字らしい。『大辞林 第三版』には,「日和」を,
にわ,
と訓ませ,
「万葉集の『にはよくあらし』を日の和(な)いだことと解して当てた字」
とある。意味は,
海上の天気,または海上の天気の良いこと,
空模様,天候,特に良い天候,晴天,ある事をするのにふさわしい天候,
事のなりゆき,くもゆき,
日和下駄の略,
と載る(『広辞苑』)『古語辞典』には,
「日和の字は,万葉集256『飼飯の海の庭よく荒し』,同2609『武庫の海の爾波よくあらし』のニハを,後世,日の和らいだことと解して当てた『日和(ニハ)』という字面が,同義のヒヨリの語に当てられて新しく成立したもの」
とある。「には」を見ると,「庭」の,
魚場,
の意から転じて,
「風がなく海面の静かなさま」
という意味になる。だから,「ひより」の意味の,
海上の天気,または海上の天気の良いこと,
という意義には意味があるのである。
因みに,「日和下駄」とは,
晴天の日に履く歯の低い下駄,
のことらしい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8B%E9%A7%84#.E4.B8.8B.E9.A7.84.E3.81.AE.E7.A8.AE.E9.A1.9E
には,
「足駄(雨天用)に対する意味でこの名がある。時期によって定義はいろいろとあるが、男物の場合は角形で台は桐(糸柾目が高級品)、長さ七寸二~三分(女物は五分ほど短い)。歯は二寸二分程度がふつうで(大差という)、これを三寸三~四分にすると(京差という)、足駄(高足駄)というようになる。」
とある。下駄については,
https://www.getaya.org/co/column3.html
に譲るが,日和下駄は,
「駒下駄よりも背が高く薄い朴歯の下駄です。日和=晴れの日、ですが、『日和を選ばず(雨の日でも)履ける』という意味での『日和』ではないかと思います。『日和下駄』というと、通常女物の事を指す慣習があります。」
とあり,女物を指すものらしい。
では,「日和(には)」,はなく元々の「ひより」の語源はというと,
「日+寄り」
で,良い天気のこと,とある。『大言海』も,
「日寄の義にて,日の方の意と云ふ」
とある。これに対して,
「雲+寄り」
が,
曇り,
だとある(『語源辞典』)。ただ,『日本語の語源』には,
「黒雲の中に(雨)コモル(籠る)は(天)クモル(曇る)に転音・転義をとげた。その名詞形のクモリ(曇り)は語尾を落としてクモ(雲)になった。」
とある。『大言海』は,「くも(雲)」について,
「隠(くも)るの義なりと云ふ。かくむ,かこむ。くくもる,くこもる。曇ると云ふも,雲を活用せしめたるごなり,沖縄にて,クム,朝鮮にてクラム」
としており,
隠(くも)る,
という言い方の方に軍配を挙げたくなる。因みに,
晴れ,
は,語源は,
「原・墾・晴と同根」
で,「空に障害物,雲,霧などがなく,ハレバレした様」の意。「腹」の字も,「はらいせ」
http://ppnetwork.seesaa.net/article/442840201.html?1476560673
で触れたように,「原」と同根で,「ふさがっていた障害となるものがなくなって,ひろびろとした」という意味になる。
因みに,「雲」という字は,
「云(ウン)という字は,指事文字で,息や空気が曲折してたちあがるさまを示す。もと,口の中に息がとぐろを巻いてくちごもること。たちのぼる湯気が一印につかえて,もやもやとこもったさまを描いた象形文字。雲の原字。雲は,『雨+音符云』で,もやもやとたちこめた水蒸気。」
「曇」という字は,
「『日+雲』で,雲が深くて日を隠すことを示す。底深く重なって重苦しいこと。」
「晴」という字は,
「靑(セイ)という字は『生(清らかな芽生え)+音符丼(セイ 清らかな井戸水)』の会意兼形声文字で,澄みきった意を含む。晴は『日+音符靑』で,澄みきったひのこと。」
とある。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
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