2016年10月25日

計画された偶発性


J・D・クランボルツ&A・S・レヴィン『その幸運は偶然ではないんです!』を読む。

その幸運は偶然ではないんです!.jpg


本書の原題は,

Luck is No Accident

である。つまり,

「幸福に偶然はない」

である。これは,著者の一人,J・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア論(1999),

プランド・ハップンスタンス(planned happenstance)理論(「計画された偶然」「意図された偶然」とも訳される),

に基づく実例集,それも偉人や特別な有名人のそれではなく,ごくごく普通の人のキャリアを巡る,失敗と成功(途上)の話である。

その理論は,数百人に及ぶ成功したビジネスパーソンのキャリアを分析したところ,そのうちの8割は『いまある自分のキャリアは予期せぬ偶然に因るものだ』と答えた,という。そのデータをきっかけとして構成された。その理論は,

●個人のキャリアは、予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される,
●その偶然の出来事,予期せぬ出来事に対し,最善を尽くし対応することを積み重ねることでキャリアは形成される,
●偶然の出来事をただ待つのではなく,それを意図的に生み出すように積極的に行動したり,自分の周りに起きていることに心を研ぎ澄ませることで自らのキャリアを創造する機会を増やすことができる,

という3つの骨子から構成される。そして,そのためには,

○好奇心(Curiosity):新しい学習機会を模索すること
○持続性(Persistence):失敗に屈せず努力をすること
○楽観性(Optimism):新しい機会が「必ず実現する」「可能となる」と捉えること
○柔軟性(Flexibility):信念、概念、態度、行動を変えること
○リスク・テイキング(Risk-taking):結果が不確実でも行動を起こすこと

という特性が必要らしい,というものだ。つまり,

偶然が起きた後も,そして偶然が起きる前も,それをもたらす準備を当人はしている。そこに,「プランド」すなわち「計画された」という含意がある。

本書は,45人の,普通の人のキャリア選択における,

プランド・ハップンスタンス(planned happenstance),

が示されている。各章の,

「想定外の出来事を最大限に活用する」
「選択肢はいつもオープンに」
「目を覚ませ!夢が現実になる前に」
「結果が見えなくてもやってみる」
「どんどん間違えよう」
「行動を起こして自分の運をつくりだす」
「まず仕事に就いてそれからスキルを学ぶ」
「内なる壁を克服する」

というタイトルに随所にそのマインドが見られる。

「私たちは,自分自身の経験から,キャリア開発とはいかに想定外のチャンスをつくりだし,いかにそれを活用するかの問題だと気づいたのです。」

と著者は書く。それには,

先ず動かくなくては何も始まらない,

ということたが,ソリューション・フォーカスト・アプローチの原則,

もしうまくいっていないのであれば,(なんでもいいから)違うことをせよ,

を思い起こさせる。著者は,

「人生の目標を決め,将来のキャリア設計を考え,自分の性格やタイプを分析したからといって,自分が望む仕事を見つけることができ,理想のライフスタイルを手に入れることができるとは限りません。
 人生には,予測不可能なことのほうが多いし,あなたはあなたは遭遇する人々や出来事の影響を受け続けるのです。」

「想定外の出来事は,生涯にわたって起こり続けます。あなたの人生に影響を与える出来事の多くは,実際にはあなたが生まれるよりずっと前に起きています。たとえば,自分の親や,母国語,人種や出生地などを自分で選ぶことはできません。(中略)キャリア構成理論はどうでしょう?(中略)
 自分がコントロールできるなんてことが存在するのだろうか?とあなたは思うかもしれません。幸いなことに,私たちは自分の行動と,さまざまな経験に対する自分の反応をコントロールすることができます。この二つは,人生の方向を決める重要な要因です。」

と書く。しかし,もちろん,

「結果をコントロールすることはだれにもできません。しかし,あなたの行動次第で望ましい結果が起こる確率を高めることができるのです。人生には保証されているものは何ひとつありません。唯一確かなことは,何もしないでいるす限り,どこにもたどり着かないということでしょう。」

と,そして,

「あなたは人生の目標を持ち,それを実現するために計画を立てるべきだと信じているかもしれません。私たちは,計画を立てることが正しいことだとずっと教えられてきました。でも,私たちはそうは思いません。計画を立てること自体には反対しませんが,意にそわないことが明らかになった計画に固執することに,私たちは反対なのです。」

とも。さらに,

「将来の夢を描くことは素晴らしいことです。夢を見ることを大いに楽しみ,実現するように努力してください。でも,もし夢が計画通りに実現しなかったとしても,がっかりしないでください。よくも悪くもあなたの人生には予測不可能なことのほうが多いのです。『夢はきえてしまった』と考えるのではなく,『状況が変わった。さらに自分にとってよいチャンスを探すにはどうしたらいいだろう!』と考えましょう。」

と。なぜなら,

「思い通りにならないことをやるのは,楽しくはないかもしれませんが,貴重な学びの体験になる可能性があります。失望する方で,何かをえることができるのです。」

「私たちが言いたいのは,時々失敗してしまうことは必ずしも致命的なことではなく,予想外の状況に前向きな方法で対応することもできるということです。」

と。「あとがき」に,並ぶポイントは,従来のキャリア開発に対する見事なアンチテーゼになっている。曰く,

将来何になるかを決める必要はない,
想定外の出来事があなたのキャリアに影響を及ぼすことは避けられない,
現実は,あなたが想定している以上の選択肢を提供しているかもしれない,
いろいろな活動に参加して,好きなこと,嫌いなことを発見する,
間違いを犯し,失敗を経験しよう,
想定外の幸運な出来事をつくりだそう,
どんな経験も学びへの道,
仕事以外でも満足感を得られる活動に携わる,
内面的な障害を克服するために,新しい考えや経験にオープンであり続ける,

まさに,

「神さまを笑わせたいのなら自分の人生計画を話すといい」

という格言通りである。変化はチャンス,ということだろう。それには,

いつも学び,いつも挑戦し,いつも好奇心をもつ,

に尽きるようだ。そうして,本書の45人の人生を垣間見た時,

「人生とは,なにかを計画している時に起こってしまう別の出来事のことをいう。結果が最初の思惑通りにならなくても,…最後に意味をもつのは,結果ではなく,過ごしてしまったかけがえのないその時間である。予期せぬ出来事の中で全身全霊を尽くしている時,予期せぬ世界が開けてくる。」

という,龍村仁の『ガイアシンフォニー第三番』にある言葉を思い出させる。それには,人生のそのときそのときを必死で生きることがなければ生まれては来ない。

予期せぬ出来事,

が,

プランド・ハップンスタンス(planned happenstance)

を指す。

参考文献;
J・D・クランボルツ&A・S・レヴィン『その幸運は偶然ではないんです!』(ダイヤモンド社)
龍村仁『魂の旅 地球交響曲第三番』(角川ソフィア文庫)
http://allabout.co.jp/gm/gc/441716/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E7%94%BB%E7%9A%84%E5%81%B6%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%90%86%E8%AB%96
http://www.educate.co.jp/2008-10-05-11-32-19/64-2009-03-06-08-11-14.html


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posted by Toshi at 05:02| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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