2016年10月28日
支離滅裂
支離滅裂,
は,
統一もなくばらばらに乱れて,筋道がたたないさま,めちゃめちゃなこと,
と,『広辞苑』に乗る。想像されるように,中国語由来で,
「『支離』(はなればなれになる)滅裂(ばらばらにわかれる)』が語源です。文章や話の筋にまとまりがなく,全体がばらばらになっていることをいいます。」
と,『語源辞典』にはある。特別の由来はないようだが,『大言海』は,『荘子』
「夫支離其形者,猶足以養其身終其天年又況,支離其徳者乎」
さらに,駱寶王詩から,
「生涯一滅裂,岐路幾徘徊」
を引く。「支離」は,
分かれ散りて全からず(『字源』),
という意味の他に,実は,身体障害の意味があり,上記の『荘子』の「支離」は,それを指す。
「滅裂」は,
きれぎれ,
という意味だが,『荘子』に,
「治民焉勿滅裂」
とあるらしい。「支離」と「滅裂」は,似た意味でバラバラに使われていたものらしい。念のため,漢字に当たると,
「支」は,会意文字で,
「『竹の枝』+『又(手)』で,手に一本の枝を持つさまを示す。」
とある。意味は,
「わかれ,枝,もとから枝のように分かれ出たもの」
という意味で,そのメタファからか,
「胴体を幹とすれば,手足は枝」
という意味で,手足,という意味になり,四肢という。
「離」の字も,会意文字で,
「『隹(とり)+大蛇の姿』で,元,蛇と鳥が組みつ離れつ争うことを示す。ただし,普通は麗(きれいに並ぶ)に当て,二つ並んでくっつく,二つ別々になる意をあらわす。」
とある。
「滅」の字は,
「右側は,『戉(まさかり)+火』の会意文字で,刃物で火種を切って火を消すことを意味する。滅はそれを音符とし,水を加えた字で,水をかけて火を消し,または見えなくすること。」
とある。だから,
ほろぶ,ほろぼす,
という意味の他に,
この世からなくする,姿をなくする(「消滅」「滅国」),
消える(「点滅」),
という意味を持つ。
「裂」の字は,
「歹(ガツ)は,関節の骨の一片。それに刃をそえて,列(骨を刀で切り離す→切り離したものがずらずらと並ぶ)となる。裂は『衣+音符列』で,布地を切り裂くこと。」
とある。
漢字一つ一つの意味を見ていくと,いまの意味とうまくつながらないのは,使われていくうちに,謂れを離れて,言葉はそれ自体で独り歩きし始めるからだろう。
支離滅裂の類義語は,
四分五裂,
乱雑無章,
滅茶滅茶
目茶苦茶,
等々とあるが,四分五裂は,ちりじりに広がる感じなので,少しニュアンスが違う。乱雑無章は,
物や事柄がばらばらのまま整理されていないこと。無秩序のまま放置されていること,
で,「無章」は筋道が立たないこと,「章」は筋道・秩序の意で,
「乱雑にして章無なし」
と訓読するらしい。強いて言えば,「筋道が通らない」という意味では,乱雑無章が近いが,支離滅裂の語感にはかなわない。
因みに,対義語は,
終始一貫,
首尾一貫,
順理成章,
脈絡通徹,
理路整然,
といったところで,文脈が通る,という意味では,順理成章,脈絡通徹,が対義語に当たるのだろう。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
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