2016年10月29日

つま


「つま」は,

妻,
夫,
端,
褄,
爪,

と,当てて,それぞれ意味が違う。

爪,

を当てて,「つま」と訓むのは,「つめ」の古形で,

爪先,
爪弾き,
爪立つ,

等々,他の語に冠して複合語としてのみ残る。『古語辞典』をみると,

「端(ツマ),ツマ(妻・夫)と同じ」

とある。で,

端,

を見ると,

「物の本体の脇の方,はしの意。ツマ(妻・夫),ツマ(褄),ツマ(爪)と同じ」

とある。これだけでは,「同じ」というのが,何を指しているのかがわからない。その意味は,「つま(妻・夫)」を見ると解せる。

「結婚にあたって,本家の端(つま)に妻屋を立てて住む者の意」

つまりは,「妻」も,「端」につながる。で,「つま(褄)」を見れば,やはり,

「着物のツマ(端)の意」

とあり,結局「つま(端)」につながるのである。

しかし,果たしてそうか。『大言海』には,「つま(端)」について,

「詰間(つめま)の略。間は家なり,家の詰の意」

とあり,「間」の項を見よとある。「間」には,もちろん,いわゆる,

あいだ,

の意と,

機会,

の意などの他に,

「家の柱と柱との中間(アヒダ)」

の意味がある。さらに,「つま(妻・夫)」については,

「連身(つれみ)の略転,物二つ相並ぶに云ふ」

とあり,さらに,「つま(褄)」についても,

「二つ相対するものに云ふ。」

とあり,「つま(妻・夫)」の語意に同じ」とある。

どうやら,「つま」には,

はし(端)説,

あいだ説,

があるということになる。『語源辞典』をみると,二説あるらしい。

「説1は,『ツマ(物の一端)』が語源で,端,縁,軒端,の意です。説2は,『ツレ(連)+マ(身)』で,後世のツレアイです。お互いの配偶者を呼びます。男女いずれにも使います。上代には,夫も妻も,ツマと言っています。」

と。どやら多少の異同はあるが,

はし,

関係(間),

の二説といっていい。僕には,上代対等であった,





が,時代とともに,「妻」を「端」とするようになった結果,

つま(端)

語源になったように思われる。三浦佑之氏は,

「あちこちに女を持つヤチホコ神に対して,『后(きさき)』であるスセリビメは,次のように歌う。
 やちほこの 神の命(みこと)や 吾(あ)が大国主
 汝(な)こそは 男(を)に坐(いま)せば
 うちみる 島の崎々(さきざき)
 かきみる 磯の崎落ちず
 若草の つま(都麻)持たせらめ
 吾(あ)はもよ 女(め)にしあれば
 汝(な)を除(き)て 男(を)は無し
 汝(な)を除(き)て つま(都麻)は無し」

と紹介する。どうも,ツマは,

対(つい),

と通じるのではないか,という気がする。「対」は,中国語由来で,

二つそろって一組をなすもの,

である。『大言海』は,「つゐ(対)」について,

「むかひてそろふこと」

と書く。

「刺身につま」というときは,

具,

とも当てるが,その「つま」について,

http://temaeitamae.jp/top/t6/b/japanfood3.06.html

は,

「刺身にあしらわれてる千切り大根の事を『つま』そう思ってなさる方が多い。あれは『つま(妻)』ではありません。『けん』と言います。
けん、つま、辛み、この三種の「あしらい」を総称して「つま」という事もありますが、「つま」とは、端やふち、へり、を意味します。刺身に寄り添うかたちですね。ですから【妻】という字の代わりに【褄】と書いてもよいのです。」

と書く。対等の一対から,端へとおとされた「つま」が,「妻」に限定されていくように,「つま(具)」も,添え物のイメージへと変化していったようだ。『江戸語大辞典』には,「つま(妻)」は,

「料理のあしらいとして添えるもの」

としか載らない。

参考文献;
三浦佑之『古代研究-列島の神話・文化・言語』(青土社)
http://temaeitamae.jp/top/t6/b/japanfood3.06.html


ホームページ;
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今日のアイデア;
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ラベル:つま
posted by Toshi at 04:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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