2016年10月30日

ピアニストの脳


古屋晋一『ピアニストの脳を科学する:超絶技巧のメカニズム』を読む。

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本書は,

「ピアニストの脳と身体が,いったいどのような働きをしているのか,さまざまな実験と調査を駆使して探求した本」

である。

「感性豊かな芸術家であるとともに,高度な身体能力を持ったアスリートであり,優れた記憶力,ハイスピードで膨大な情報を緻密に処理できる,高度な知性の持ち主」

であるピアニストの,

「脳と身体」

を明らかにしようとしている。著者自身が,

「いわゆる理系人間として工学,医学の道に進みましたが,ピアニストを夢見た時期もあっ」

て,ずっとピアノを弾き続けてきた,という経験をもち,

「練習をして弾けなかった曲が弾けるようになると,脳や身体はどう変わるのか。『脱力』とは,どの筋肉をいつ弛めることなのか。指や腕や肩をどう動かせば狙った効果があるのか。」

等々,どの解剖学や運動学の教科書に載っていない,

「ピアノを弾く身体の動き」

を明らかにしようとしたものでもある。

たとえば,

「ピアニストが指をあれほど速く動かせるのはなぜでしょうか?」

その答は,

脳にある,

らしい。しかも,

「ピアニストの脳は,たくさん働かなくても複雑な指の動きができるように,洗練されている」

という省エネできる脳らしいのである。

「音楽家ではない人は,指の動きが複雑になればなるほど,高次運動野の神経細胞をもっとたくさん使わなければいけないが,ピアニストはこの部位をあまり働かせなくても,複雑な指の動きが可能である」

のである。それは,

「ピアノの演奏に必要な,複雑な指の動きをしやすいように,神経細胞の機能を特別に変化」

させている結果らしいのである。具体的には,

「ピアニストの脳の運動野の体積…は,音楽家でない人よりも…大きい」

だけでなく,運動の学習や力やタイミングの調節に関わっている,

「脳部位(小脳)の体積…が5%ほど大きい」

ことも分かっている。

「5%と聞くと,少ないと思われるかもしれませんが,小脳には一般に約1000億個の神経細胞があると言われています。ということは,ピアニストは音楽家でない人よりも,単純に計算すると,小脳の細胞が50億個近く多いということになる」

さらに,「大脳基底核の『被殻』」が,小さくなっている,という。

「この部位が大きい人ほど,演奏するときの動きが不正確で,バラつくことが報告されています。『バラつく』というのは,『正確なリズムで弾けない』ということです。」

訓練を積んだバレーダンサーの被殻も小さいそうで,

「この脳部位は,巧みな動作を生み出すうえでは『大きくないほうが良い』」

らしい。では,英才教育ではないが,はやく訓練を始めた方がいいのかどうか。

「(神経細胞(灰白質)の下の)脳の岩盤部分には,『白質』といって,脳の神経細胞同士が情報のやり取りをするために必要な,何百万本もの白いケーブルが詰まった部分があります。このケーブルは鞘(ミエリン)に包まれていて,20歳頃までに少しずつ発達していきます。…この鞘の発達のしかたが,運動能力や認知能力に影響を及ぼすことがわかっています。(中略)指を独立に動かしたり,両手の動きを協調させたりするときに使われるケーブルの周りの鞘は,11歳までの練習時間に比例して発達していました。(中略)これはつまり,11歳までにおこなう練習は,すればするほど鞘を発達させるが,12歳以降は,練習をたくさんすれば鞘が発達する,というわけではない」

と。しかし,指が早く動かせれば優れたピアニストかというと,そうとは限らない。

「指を動かす速さは,数ある表現手段の1つにすぎないからです。」

とも。

こう見ると,ピアニストはピアニストになるように,必要な脳機能を発達させているのだとすると,それはすべてのプロフェッショナルな職業に就いて当てはまるはずだ。僕が一番知りたいのは,

政治屋,

の脳の構造だ。

鉄面皮,
厚顔無恥,
嘘つき,

等々という機能は,脳のどこに現れているのだろうか。

参考文献;
古屋晋一『ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム』(春秋社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:23| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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