2016年10月31日

すだく


「すだく」は,

集く,

と当てる。『広辞苑』には,

多く集まってさわぐ,
多く集まる,
虫が集まって鳴く,

という意味が載る。どうやら,本来,

集まる,

という意味らしい。『語源辞典』には,

「ツドフ(集ふ)」とスダク(集く)と同源の語の変化」

とある。『大言海』には,

「集(つど)ひ挈(た)くの約。集ひ居て動く義」

とある。で,

集まる,多く集う,

というのが意味で,『大言海』は,

「誤りて,鳴く」

と載せる。意味として,

「虫集く」

とは,集まっている,という意味だけで,

鳴く,

意味は本来なかった。因みに,「挈(た)ぐ」は,

「手揚(たあ)ぐの約か」

として,

揚ぐ,もたぐ,

の意味を『大言海』は載せる。ただ,他の辞書には載らない。もし,『大言海』の説通りなら,

ただ集まる,

という意味だけではなく,

もたげる,

という含意がある。だから,ただ集まる意味に,

騒ぐ,
あるいは,
騒がしい,

という含意が,もともとあった,と考えるべきなのかもしれない。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1110853596

では,

「本来は “あつまる”、“むらがる” という意味でしたが、『庭に集(すだ)く虫の音(ね)』を『庭で鳴いている虫…』と誤解して、『すだく』に “鳴く” という意味があるかのような使い方がされるようになりました。」

というが,群がり,(それにともなって)騒がしい,という含意が,

蕪村の句の,

鬼すだく戸隠のふもとそばの花

に含まれている,と見なした方が,句の奥行が広がるのではあるまいか。『広辞苑』の「すだく」の用例に載る,

葦鴨(あしがも)の、すだく池水(いけみづ)、溢(はふ)るとも、まけ溝(みぞ)の辺(へ)に、我(わ)れ越(こ)えめやも

という万葉歌も,「騒がしい」という含意があるようだ。あるいは,

「かしがまし 野もせにすだく 虫の声や われだに 物は言はでこそ思へ」

という古歌も,「すだく虫の声」としているところを見ると,「すだく」には,

集まって騒がしい,

という意味を伴っている。しかし,『広辞苑』の引く,

ひとをまつむし秋にすだけども,

という『閑吟集』では,虫の声に「騒がしい」意味が薄らいでいる。たとえば,『学研全訳古語辞典』で引く,

「すだきけむ昔の人は影絶えて宿もるものはありあけの月」

という新古今の歌にも,「群がり集まる」意に,「賑やかだった」という含意が影のようにあるから,意味が陰翳を増す。

「秋の虫の叢(くさむら)にすだくばかりの声もなし」

という『雨月物語』の例も,騒ぐの含意があって,生きてくる。どうやら,

集まる→にぎやか→さわぐ→声

という意味の外延を広げていったのだと,推測がつく。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)


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