2016年11月19日

結構


結構です,

というとき,

いいです,

と同じように,肯定・否定の意味を持つ。「いいです」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/443961439.html

で触れたが,結構の場合も,

「大変結構です」

という場合と,

「もう結構です」

と可否両義の意味がある。しかし,「いいです」と違い,「結構です」の場合は,

http://okiteweb.com/language/kekkoudesu.html

も言っているように,

「もう結構です」
「いいえ、結構です」

という否定の使い方も,

「『私はもう十分満足しています』という満足の意を表しています。しかし、その満足の裏に『満足なのでそれは不要です』といった満足の裏返しとしての否定の意も持ち合わせているのです。」

という意味では,単なる否定ではない含意がある。「結構」の意味は,たとえば,

かまえつくること,組みたてること,
たくらみ,もくろみ,計画,
したく,用意,
申し分のないこと,
好人物のこと,気立てのよいこと,
これ以上のぞまないこと,

という名詞の意味の他,副詞的に,

何とか,まあまあ,

という意味がある(『広辞苑』)。これだけみると,その意味の広がり方がよくわからないが,『大言海』を見ると,含意のもつ広がり方がよくわかる。

結びかまふること,組み立つること,作りいだすこと,しつらふること,
心に結構すること,たくみ,企て,もくろみ,
結構しはててよく出来たりと云ふ意より,転じて,勝れたること,佳きこと,美しきこと,
心の好(よ)きこと,好人物,
懇ろなること,手厚きこと,優遇,

つまり,組みたてるという実際の行動が,心の中のことに転じ,それが計画や企みと変ずる。そしてその結果がよく出来ていることの評価(価値表現や美醜表現)となり,それが人物に反映し,その振る舞いへと転ずる,ということになろうか。『古語辞典』では,

結構人,

だと,

温和で礼儀正しい人,

お人よし,好人物,

だが,

結構者,

となると,

お人よし,

だけとなり,

結構立て,

で,

わざと気立て良く見せかける,

となり,

結構づく,



体裁よく物事をすること,

だが,今日は,

結構づくめ,

で,

言いことばかりである,

という意味に変る。しかし裏面に,どこか猜疑の含意がある。その延長線上に,

結構毛だらけ猫灰だらけ,

がある。『江戸語大辞典』には,「結構」の意味に,

大仰である,
十分,上手,
満足,

の意味しかなく,「結び構える」の原義は消えている。
手元の『語源辞典』は,「結構」について,

「中国語源で,『建築物の結構(構え仕組み)』や,『文章の結構(構造組立て)』をいいます。転じて,十分,見事,相当,かなり,の副詞的用法や,断り,辞退などの用法に広く使われます。」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ke/kekkou.html

は,

「漢語の『結構』は、建造物の構造や文章の構成など、組み立てや構成を意味する名詞である。この『結構』が日本に入り、『計画』『もくろみ』『支度』『準備』といった意味の名詞として用いられるようになった。さらに、その準備や計画を『立派だ』『よろしい』と評価 する用法がうまれ、結構は,『丁寧だ』『人柄がいい』といった意味でも使われるようになった。
断りの言葉として用いる『もう結構です』は、近代以降に見られる表現で、『十分満足しているから、これ以上必要ない』といったニュアンスから生まれたもの。
『結構おいしい』『結構楽しい』などの副詞は、『十分とは言えないが、思っていたよりも良い(満足できる)』の意味からである。」

と,変化の経緯に詳しい。因みに,

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1133782561

で,「結構いい」と「かなりいい」の比較をしていた。

「『結構』=『ある程度の可能性は予想していたが、その程度が予想外に高かった』ことを示すもので、多くはプラスの評価(肯定的)な場合に使う。(もともと『結構』は、結構なお住まい、などとプラス評価をするときに使う語なので、『けっこうつまらない』『けっこうさぼった』とは言いません)
『かなり』=『予想以上に度合いが大きい』ことをあらわし、プラス評価にもマイナス評価にも使う。
とくに、意志的な行為について、
『困難なきびしい状況の中で行なう』ことを述べる場合には、『かなり』を用い、『結構』は使いません。」

結構が,ある程度心積もりがある,含意を持っている,ということだろう。

「結」の字は,

「吉は,入れ物の口をしっかりとふたをしたさまを描いた象形文字。結は『糸+音符吉』で,糸や紐で入口をしっかりとくびること。中身が出ないように締めくくる意を含む。」

「構」の字は,

「冓は,むこうとこちらに同じように木を組んでたてたさま。むこうがわのものは逆に書いてある。『構』は,『木+音符冓』で,木をうまく組んで,前後平均するように組み立てること。」

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
【関連する記事】
posted by Toshi at 05:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください