「はからう(ふ)」は,
計らう(ふ),
と当てるが,
「ハカルの未然形+フ(継続反復)」
で,
いろいろと心を使い続ける,という意味になる。「はかる」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/444151160.html?1479587152
で触れたが,
計る,測る,量る,図る,謀る,諮る,議る,
等々と,当てる漢字を使い分けて,多様な意味を表現しようとしていたが,「図らう」と当てることもあるようだが,
計らう,
と「計」の字を当てながら,直接的な,
数量を調べて知る,
という計量ではなく,「計」を当てながら,『大言海』が「はかる」で,
「物事の程を知らむと試みる。つもる。はからふ。」
という,計量の対象の抽象度が上がり,心や思いに焦点が当たり,例えば,『広辞苑』では,
相談する,協議する,
見当をつける,見はからう,うかがい見る,
企てる,
適当に処置する,さばく,
手加減する,塩梅する,
で,あくまで,「はかる」の未然形,つまり,
未だそうなっていないことをそうしようとする,
という含意になる。だから,
計(図)らずも,
とか,
計(図)らざるに,
は,
思いがけず,
不意に,
という意味になる。『大言海』は,
心に思ひ図らぬに,
と意味を載せる。『大言海』の「はからひ」の説明はシンプルで,
とりあつかひ,処置,措置,
とある。「はからひ」の次項に,
「とりはからひのしゅう」
があり,
計衆,
と当てる。
「室町幕府の職名。諸家より献上したるものに対して,返し物を取り調べおき,其れを将軍の竊かに御覧ぜらるるを取扱ふ役人。おはからひかた,おはからひしゅう」
とある。そうみると,「はからひ」には,ただ扱う,とか,相談する,とか,企てる,と言うのとは少しニュアンスが異なる,敬意というか敬う含意があるような気がする。それは,扱う人そのもの(主体側)ではなく,扱う対象に対する,それなのかもしれない。
ただ,『古語辞典』は,「はからう」について,
「ハカリ(計)とアヒ(合)との複合」
とあるので,この場合だと,「はかる」のうちの,
諮る,
議る,
に,含意がシフトするのかもしれない。
「はからう」と似た意味で,
取りはからう,
という言い方がある。この「と(取)り」は,接頭語で,
「動詞の上について,その動作が,何か手を加えられることで,安定・定着することを示す」
としている。「取り」をつけることで,「はからう」ことが,主体の意志であることを強く印象付けるというニュアンスがある。接頭語の「うち」と同じであると,『大言海』はいい,
「唯其の意を強くする」
という用い方になっている,という。
「はからい」という言い方については,例の,
善人なおもって往生を遂ぐ,いわんや悪人をや,
という親鸞の言い回しについて,これだけ信心のためにしたのだから,往生とげるだろうというのを,
計らい,
として一蹴する含意だということを思い出す。やはり,計らいは,その行為の相手を意識する言葉のように思う。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
ラベル:はからう とりはからひのしゅう
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