2016年11月26日

取りあえず


「とりあえず」は,

取り敢えず,

と当てる。意味は,『広辞苑』には,

たちまちに,たちどころに,
さしあたって,まず,一応,

とある。これだと,両意味の関係が見えないが,『デジタル大辞泉』の,

ほかのことはさしおいて、まず第一に。なにはさておき。「取り敢えず母に合格を知らせる」「取り敢えずお礼まで」
何する間もなく。すぐに。「取り敢えず応急処置をして、病院へ運ぶ」

という説明だと,

すぐに,

まず第一に,

の意味は,ほぼ近接していることがわかる。さらに,『大辞林』では,

「取るべきものも取らずに,の意から」

と注記していて,

十分な対処は後回しにして暫定的に対応するさま。なにはさておき,
将来のことは考慮せず,現在の状態だけを問題とするさま。さしあたって,

とあって,より意味の真意がわかる。

取るものを取らず,

が,

第三者目線では,「すぐに」「ただちに」という意味となり,
当事者意識だと,「(他の事は差し置いて)まずは」

となる。

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%82%E3%81%88%E3%81%9A

では,

(もっとも優先させなければならないということが必然的であるというわけではないが、判断を保留してでも)すぐに、第一に。とりいそぎ。なにはさておき。

(他に優先して行なうべきこともないので)さしあたって。暫定的に、一応。

と両者の内容を深掘りしてみせている。

語源は,

「トリアエ(取り敢え)+ズ(打消し)」

で,

「急ぐために間に合わせる,他のことはさしおいてまず,などの意をあらわします。」

とある。『古語辞典』は,「手取り敢へ」について,

前以て心づもりをして対処する,不意の事態にきちんと間に合わせる,
耐え得る,こらえることができる,

とある。『広辞苑』は,「取り敢ふ」で,

間に合う,間に合わせる,
たまたまそこにある,ありあわせる,
とることができる,取る間がある,

の意味を載せる。「取り敢へ」が,その否定の「取り敢えず」の原意に沿いそうなのだが,それでいいのかどうか。

『古語辞典』の「敢へ」を見ると,

「合へと同根。ことの成り行きや,相手・対象の動き・要求などに合わせる。転じて,ことを全うし堪えきる意」

とある。で,

(事態に対処して)どうにかやりきる,どうにかもちこたえる,
こらえきる,
差し支えない,
(動詞連用形に続いて)すっかり~する,~しきれる,

とある。『大言海』は「敢ふ」を,

「増韻『敢,忍為(しのびてなす)也』」

と注記して,

堪ふ,こらへゆく,

とする項と,

「説文『敢,進取(すすみとる)也』廣韻『犯(おかす)也』」

と注記して,

遂(と)ぐ,しおほす,おしきる,

とする項とを分けている。「敢えて」という言葉は,

しいて,おしきって,

という意味なので,『大言海』の後者の意味の外延になる。『大言海』は,「敢へて」について,

「押しきって,のしかかって,はばからず。「説文『敢,進取(すすみとる)也』。漢文にて,不敢(ふかん)とあるは,敢へて何せずと読みて,敢不(かんふ)とあるには,敢へて何せざむやと読みて,反語となる。」

とある。とすると,「取り敢えず」は,

さしあたり,
とか,
ただちに,

ではあるが,そこには,

堪えきれず,

あるいは,

忍びきれず,

という含意があるのではないか。だから,

「余事をさしおいて先ず」

なのではないか。とすると,「取り」は,それを(主体の意識として)強調しているのでなくてはならない。その強調の「取り」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/444210858.html

で触れた。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:18| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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