2016年12月10日
おぼろ
「おぼろ」は,
朧,
とあてるが,朧月の「おぼろ」の意味,
はっきりしないさま,
ほのかなさま,
薄く曇るさま,
の意の他に,いわゆる料理の「おぼろ」,つまり,
エビ・タイ・ヒラメなどの肉をすりつぶし味をつけて炒った食品。でんぶ,
の意味もある。その他に,
おぼろ昆布,
おぼろ染め,
おぼろ月,
おほろ豆腐,
等々,「おぼろ」のつくものは一杯ある。『古語辞典』には,
「オボはオボホレ(溺)・オボメキのオボと同根。ロは,状態を示す接尾語」
とあり,「ぼんやりしたさま」という意味を載せる。『古語辞典』は,
おぼほし,
は,したがって,
溺ほし(オボホレの他動詞形),
と当てる,
溺れるようにする,
の意の「おぼほし」と,
ぼんやりしているさま,
の意の,「おぼほし」があり,後者については,
「オボは,オボロ(朧)・オボメキ・オボロケのオボと同根。ぼんやりしているさま。奈良時代にはおほほしの形であったかもしれないが,オホ(大)とはアクセントの異なる別語」
とあり,前者の自動詞は,「おぼほ(溺)れ」で,
「オホ(朧)ホレ(惚)の意。古くは,オホホレと清音か。ぼんやりとして気を失った状態になる意」
としている。つまり,どちらも,「ぼんやりしたさま」を含意しているということになる。
料理でいう「おぼろ」,つまり「でんぶ」は,
田麩,
と当て,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E9%BA%A9
には,
「魚肉または畜肉加工品のひとつ。佃煮の一種。日本では魚肉を使うことが多く、江戸前寿司の店ではおぼろと称するほか、一部では力煮(ちからに)ともいう。中国や台湾では豚肉を使うことが多いが、鶏肉、牛肉を使うものもある。」
とあり,日本の「田麩」については,
「日本の田麩は魚肉を使うことが多い。三枚におろした魚をゆで、骨や皮を取り除いた後、圧搾して水気をしぼってから焙炉にかけてもみくだき、擂り鉢で軽くすりほぐす。その後、鍋に移して、酒・みりん・砂糖・塩で調味し煎りあげる。鯛などの白身魚を使用したものに食紅を加えて薄紅色に色付けすることもある。薄紅色のものは、その色から『桜でんぶ』と呼ばれる。(中略)伝説によれば、京のあたりの貞婦が、病気で食の進まない夫のために、産土神の諭しにしたがって、土佐節を粉にして、酒と醤油とで味をととのえ供したところ、夫の食欲は進んで病気もなおった。そして自分でも試み、人にもわけたのが初めであるという。もしこれが事実となんらかの関係があるとすれば、おそらく田麩のおこりはカツオであろうという。北海道の一部の地域などでは、単に そぼろ と呼ぶ場合がある。」
とあるが,なぜ「おぼろ」と呼ぶかはわからない。ただ,「そぼろ」について,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9D%E3%81%BC%E3%82%8D
「そぼろは、豚や鶏の挽肉、魚肉やエビをゆでてほぐしたもの、溶き卵などを、そのままあるいは調味して、汁気がなくなりぱらぱらになるまで炒った食品。」
とある。「おぼろ」の含意から,牽強付会すれば,
原形をわからなくする,
という意味なのかもしれない。『大言海』の「おぼろ」についての,
おほほろほろの約,
という,「おほほろほろ」は見当たらないが,おぼろに,という意味の,
おぼおぼし,
おぼほし,
という言い方がある。いずれも,「おぼろ(朧)」の「おぼ」である。
なお,「おぼろ昆布」については,とろろ昆布と比較して,
http://tominosuke.shop-pro.jp/?mode=f2
http://www.konbumura.co.jp/hpgen/HPB/entries/11.html
に,
「とろろ昆布の見た目がふわふわだとすると、おぼろ昆布はひらひらな見た目です。透けるほど薄いそれはまさに『おぼろ』。職人が一枚一枚手で削っています。」
とあり,透けるというところから,おぼろにが含意として見えるし,「おぼろ豆腐」は,
http://www.kubosannotofu.co.jp/type.html
http://www.kubosannotofu.co.jp/oboro.html
に詳しいが,
「豆乳が冷えないうちに凝固剤としてにがりを加え、櫂(かい)と呼ばれる木の板で撹拌(にがりを打った以降の一連の作業を“寄せ”と呼び、職人の技の見せ所です)し、豆乳の濃度、温度、にがりの量、そして『寄せ』がそろうと、豆乳は水と分離することなく固まり始め、やがておぼろ豆腐となります。」
とあり,『和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典』には,
①豆乳ににがりを加え、固まりきる前にすくい上げた、やわらかい豆腐。「くみ豆腐」「くみ出し豆腐」ともいう。
②丸くかたどった豆腐を湯通しし、くずあんをかけた料理。下の丸い豆腐が、くずあんを通しておぼろ月のように見えることからこの名がある。
とあり,料理のほうから来たのではないか,と推測される。その場合も,「朧に」の意味である。
朧饅頭
朧染
も,ぼかしや,透けるが「朧ろ」につながるようだ。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
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