2017年01月28日

へこたれる


「へこたれる」は,

意志がくじけてよわる,ひるむ,
元気を失ってべったりする,

と,『広辞苑』にある。

元気を失ってべったりする,

は,

元気を失ってぐったりする,

ではないか。同じ擬態語だが,

べったり,

は,何かに貼り着いたり,ひとにまつわりついたり密接しているさまをいうが,

ぐったり,

は,

疲れて弱った様子,

を指すのだから。

さて,「へこたれる」であるが,語源は,

凹む+垂れる,

で,

気力がなくなり,くじけて弱ってしまうこと,

とある。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1113528756

は,

「『へこたれる』は江戸の俗語で『ヘコ』と『タレル』よりなる言葉。ヘコは凹むと同義で弱体を意味する。なお、凹むは『減りこむ』の短縮形だという。この『こむ』は「磨きこむ、のめりこむ」など、ぎりぎりの状態に達するまで同じ動作をつきすすめることだ。
『タレル』は垂れるの意味。すなわち凹むも垂れるも、高揚しぴんと張りつめる状態の反対なので、弱気やマイナス状態を指す。(中略)
『ヘコタレ』は『ヘノコ(古語で陰茎)』+『タレ(垂れ)』で元気のないことを言うとの説あり。」

という。「凹む」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/410104152.html

で触れた「凹む」の語源には,

「ヘ(減)+コム(籠む)」

というのと,

「引+込むの音韻変化」(ヒッコム→ヘッコム→ヘコム)

というのがあるらしい。「凹む」意味は,

物の表面がくぼむ,

という意味をメタファに,

損をする,
やり込められて屈服する,弱りくじける,

という意味になる。「凹む」は,

屈服する,

という状態表現が,

くじける,

という価値表現に転じているが,これだけで十分,

めげている,

という表現になっているのに,「たれる」をくわえているが,この,

たれる(垂れる),

とは何か。よく,

へたれ,
とか
ばかたれ,
とか
はなたれ,
とか

と,

人を悪く意を表す語,

ではないか。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q108696890

には,

「『たれ』というのは『垂れる』という言葉からきています。
①重みで下にだらりと垂れ下がる、その「たれ」です。その姿がだらしなく見えて、という説があります。
②もうひとつはやはり『垂れる』から自力では何もできなく依存している惨めな様をあらわしているというところからきたという説もあります。
③直接的に『垂れる』を表現したという説もあります。『はなたれ小僧』などは、鼻水が『垂れている』とみるわけです。『くそったれ』も同じ…。
『ばかたれ』などは直接的ではないが、これも『馬鹿』をぶら下げている人間とみることができます。
こうしたものの総体だということもできます。」

というが,穿ち過ぎではないか。「垂れる」自体,

たらり,

という擬態語から来ているのではないか。「たらり」は,

液体が一滴または一筋垂れ落ちる様子,

を表し,それをメタファに,

重量感のない物が弛緩して垂れ下がっている様子,

を表現する。「だらり」と濁ると,

長い物が弛緩して力なく垂れ下がっている様子,

で,それをメタファに,

生気や活力が全く感じられない,

を表現する。

たらたら,
だらだら,

と関連する擬態語がある。『擬音語・擬態語辞典』は,

「『だらり』『だらだら』の『だら』は,『たらり』『たらたら』の『たら』が濁ったもので,語源的に『垂らす』と関連があると考えられる。また『だらり(drari)』『だらだら(daradara)』のように『d―r』という子音の組み合わせを含む語は,停滞感や無気力感など,重量感があって不活発な印象を伴う場合が多い。『だれる』『だるい』『でれでれ』『どろどろ』など。」

としている(たしかに,「あほたれ」より「あほんだれ」のほうが意が強まる)。恐らく,先に擬態語があり,それを抽象化して,汎用の「たれる」と動詞化する。「垂れる」と漢字を当てはめたことから解釈すると,逆立ちになる。

凹む,

に,

た(だ)れる,

という無気力な状態を強める意味で,

凹たれる,

となったものと考えるのが納得がいく。その関連後には,

へこたれ,
へこたらす,
へこたる,

と,いくつかの音韻変化しつつバリエーションが広がる。ただ,

へたる,
へたれ,

は,「へたばる」から来ている。

ヘタ(べったりと)+バル(平伏する),

で,「へたりこむ」は,

ヘタ(べったりと)+コム(すわりこむ),

で,「へたる」は,

へたばるの簡約,

となり,「へたれ」は,その名詞形ということになる。この「へた」は,

へたへた,

という擬態語で,室町時代から,

「古くは『へた』『へた』『へったり』とも言った。(中略)疲れて音を上げる意の『へたばる』この語から派生した語である。」

とある。やはり擬態語由来なのである。

なお,類義語の「萎える」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/410663002.html

で,「心が折れる」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/398404438.html

で,それぞれ触れた。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
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posted by Toshi at 05:29| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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