2017年01月29日

気づきトレーニング


J・オールダム,T・キー,I・Y・スタラック『ゲシュタルト・セラピー-自己への対話』を読む。

ゲシュタルト・セラピー.gif


原題は,

Risking Being Alive,

「ゲシュタルト・セラピストによって研究開発された心理学的な道具を紹介する考え方,そして,読み物を集めたものです。」

と「はじめに」に,ある。ゲシュタルト・ツール集なのか,と読み終わって,この一文の存在に気づいた。確かに,全15章の各章ごとに,気づきを確認する「実験」4~11が設けられ,一人で,あるいはパートナーと,15のテーマについて「気づき」トレーニングの実践をしながら,読み進めていく仕掛けにはなっている。

もちろん,

地と図,

のどこ(何)を図とするかに正解があるわけではない。著者の一人,イゴール(Y・スタラック)は,

「今これを書きながら,『私は今どこにいるのだろう』と自問しています。そして,『私は過程の中にいる』というのが答えです。私の一生が終る日まで,私は過程の中にあるでしょう。今の中に存在し,生きているということがもたらす違いは,はっきり反応することができるということです。」

と書く。

いま・ここ,

にあるとは,そういうことなのだろう。それは,自分が,何を図として見ているか,に気づいていること,でもある。

「『ゲシュタルト』とは,ドイツ語で『かたち,全体のかたち,全体性』を意味する言葉です。(中略)どのような物体,かたち,あるいは形状を認識するば場合でも,まず最初にその物体を周囲から区別するという過程が必要です。つまり,物体は『地』の上に浮かび上がる『図柄』として見られなければなりません。物体に焦点が定められ,『地』との間の境界がはっきりと識別されると,ゲシュタルトが形作られたといわれます。(中略)私たち一人一人は,自分の意識の全体という地の中から,……明確で変化の可能性に富んだ図柄の実体をつくり出す能力を持っているとゲシュタルト・セラピストは考えています。」

この瞬間瞬間の気づきを広げることが,自分自身を理解するよう助ける,とする本書は,

気づきのトレーニング,

の書でもある。気づきの対象は,

外側の領域(感覚的な気づき),

内側の領域(感覚的な気づき),

だけではなく,

中間の区域(抽象的な気づき),

にも向けられる。つまり,

思考,夢想,空想,過去の思い出,将来への計画,

等々,多くこうした認知が気づきを妨げる。ゲシュタルト・セラピーの創始者フリッツ・パールズは,

「神経症的な苦しみというのは,想像上の苦しみ,空想上の苦しみです。」

というが,不安,恐れ,怒りの多くは,自分の思いが引き起こす。

「私たちは自らの考えと空想の世界に閉じ込められていると,危険を冒して,実際に起こることを体験しないかぎり,自分が考え出した悲観的な予想を試したり,それが正しくないと説明することができなくなります。」

そして,

「ゲシュタルトの気づきのトレーニングは,私たちがある瞬間に感じることそのものと,外の世界で起こっていることそれ自体に私たちの気づきの焦点を合わせることをうながして,固定化した行動様式を崩すことを目的としています。私たちはある特定の瞬間に自分が誰であるかを見るだけでなく,その瞬間に自分がどのように万物の体系に組み込まれているかをも見なければなりません。このようにして初めて,私たちは自分自身と周りの世界にはっきりと反応することができます。しかし,これには危険が伴い,私たちは自分の行動の責任をとらなければならないのです。」

さらに,

「ゲシュタルト・セラピーでは,『責任』という言葉がしばしば『反応能力』を意味するものとして使われます。
 普通,日常用いられる『責任』という言葉には,社会から与えられる道徳的,または倫理的な要求という意味を付近でいます。(中略)こうした一般的な意味では,『責任のある』という言葉は,私たちの自然のままとは関係のない一連の期待に対する反応という意味を含んでいます。それに対して反応できる能力を持つということは,私たちが゛どのように選択するかを選ぶという意味を持っています。(中略)重要なことは,私たちは選択することができる,と認識することなのです。」

気づき,
図柄と図,
責任,
反応する能力,
接触,
三つの回避,

等々,と続く各章の流れは,なかなかよく出来ている。気づきの実験を重ねていくことが,

「私たちの生きる世界全体は絶え間なく変化し,私たちはその変化に遅れないように,意識的に気づきを用いなければなりません。世界がいつも新しいと気がつくことは,心をワクワクさせ,本当の喜びにつながることがありますが,私たちは変化が私たちのためのなるようにしなければなりません。変化から常に自分を守ろうとしてはいけません。私たちが好むと好まざるとにかかわらず,世界は変化し続けているのですから。
 変化が私たちの役立つためには,『今,この瞬間』に生きていることができる必要があります。『今,この瞬間』は,他のどの瞬間とも違う時であり,『今,この瞬間』に私たちが話している人は,一瞬前に話していた人とは違うのです。この瞬間に生きるためには,私たちはその時に何が起こっているかを決定しなければなりません。それをするためには,瞬間的に,見,触れ,感じ取る選択の自由をもち,そして,ほんの少し前の過去に見たことの記憶にとらわれないようにしなければならないのです。気づきの実検は,手っ取り早い方法です。」

と,有効なのだ,と。で,

「この瞬間に生きることによって,私たちは自分の運命をコントロールすることになる」

と。ある意味,何気なく流さない,という意識,メタ化を重視するところは,西欧的であるが,どこか禅に通じることを,パールズが(どこかで禅を)けなしていた以上に,強く感じさせられる。

参考文献;
J・オールダム,T・キー,I・Y・スタラック『ゲシュタルト・セラピー-自己への対話』(社会産業教育研究所)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:25| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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