2017年02月07日

ほのぼの


「ほのぼの」は,

仄仄,

と当てるが,『大言海』は,

微微,

とも当てている。意味は,

かすか,ほんのり,ほのかに明るいさま,
「ほのぼの明け」の略,
ほんのりと心暖まるさま,

という意味になる。あるいは,「かすか」という意味の外延を広げて,

わずかに聞いたり知ったりするさま

という意味もあるようだが(『デジタル大辞泉』),当然,想像できるように,

「東の空が仄仄としてくる」

というような,たんなる状態表現が,

「仄仄(と)した母子の情愛」

といった,価値表現へと変化しているのは,言葉の意味変化の流れの原則に合致する。

「ほのぼの」は,

「ホノカ(仄か)の繰り返し」

が語源である,とする。「ほのか」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/446671381.html

で触れたが,『日本語の語源』に,

「ヒ(火)をホと発音する例は多い。ホナカ(火中)・ほのほ(火の穂,炎)・ホカゲ(火影)など。ほてる(火照)虫の省略形のホテルがホタル(蛍)になった。」

とあり,「ほのか」が,

ホノカ(火香)の義,
ホノホ(炎)を活用したもの,
ホノカ(火影),

と,「ほ(火)」とかかわりが深そうな語源説が多い。

しかし,『大言海』は異説を立て,「ほのかに」の項で,

「おほのかにの略。聞くに風,聞見に仄の義」

とあり,「おほのかに」については,

「名義抄に『訥,オオノク,オソシ,ニブシ』(字類抄に『訥,おほめく』)と云ふ動詞あり,オホノクの未然形オホノカを,副詞に用ゐること,オホドクの,オホドカニと用ゐらるるに同じかるべし」

として,「オホドカニに同じ」とある。「おほどかに」を見ると,

「オホドクの未然形オホドカを,副詞にしたる語,オホノク,オホノカニ。さはやぐ,さはやかに,やはらぐ,やはらかに」

として,

「人の性の,寛(ゆるやか)に静なる状に云ふ語」

とある。これは,ほぼ「ほのぼの」の意味の範囲になる。あくまで,『大言海』は,「ほのか」の由来について書いているのだが, これはむしろ「ほのぼの」の由来といっていいのではあるまいか。

僕には,どうやら,

ほのぼの,

の由来と,

ほのか,

の由来は,別なのではないか,と思えてくるのである。億説かもしれないが,「ほのか」の「ほの」は,

ホノカ(火香)の義,
ホノホ(炎)を活用したもの,
ホノカ(火影),

と,「ほ(火)」とかかわりが深い。「ほ(火)」の語源は,

ヒ(火)に通ず(『名語記』『和訓栞』),
ヒ(火)の中国音から(『外来語辞典』),
火の穂の義(『国語本義』),

等々で,

「キ(木)に対して,複合語に現れる『コ』(木立ち,木の葉)と並行的な関係にある」

とある。

一般には,「ほのか」は,擬態語の「ほのぼの」「ほんのり」と,同語源らしく,

「ほんのり」

は,『大言海』は,

「ホノの延」

とあり,『語源辞典』には,

「ホノ+リ」

で,

「ホノカナリの語幹,ホノにリがか加わわり,音韻変化で撥音化して,『ホ+n+ノ+リ』となったもの」

とある。「ほのぼの」は,だから,

「ホノカのホノの繰り返し」

で,

ほんのりと,幽かに暖かみのある,

意とされる。しかし,

ほのぼの,

の「ほの」は,『大言海』のいう,

おほどかに→おほのかに→おほのかにの略→ほのり→ほんのり…ほのぼの,

なのではないか。「ほ(火)」由来の「ほのか」と「おほのかに」由来の「ほのぼの」は,別系統だったのではないか,という気がしてならない。「仄か」という字を当てた時,重なり合った,というように思えてならない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:25| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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