あさって


「あさって」は,

明後日,

と当てるが,『広辞苑』には,

「(アサテの促音化)」明日の次の日,明後日,

とある。その次は,

しあさって,

明明後日,

と当て,

やのあさって,

とも言う,と『広辞苑』にはあるが,後述するように,ここは,一般化しかねるところがある。

『大言海』は「あさって」について「あさて」の項で,『日本釋名』(元禄)を引き,

「明後日(あさて),あさってと云ふ詞,古語に見えたり,あす去って後の日なり」

とした上で,

「あさと云ふは,急呼なれど,(こち,こっち)語源に近きが如し,しあす,しあさっての條をみよ」

としている。で,「しあさって」を見ると,

「重明後日(しきあす)の意」

とある。さらに,『燕石雑志』から,

隔明後日(ひきあさつて),

をも載せる。一筋縄ではいかないのは,「しあさって」の項の次に,

「しあす」

の項があり,

明後日,

と当てて,

重明日(しきあす)の略,

として,「明後日に同じ」としていることだ。

まず,「あさって」の語源は,『大言海』の,

あす去って後の日なり,

と言うように,

「アス+去って」の音韻変化,

が主流のようである。 『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/a/asatte.html

も,

「あさっては、平安時代の『蜻蛉日記』に『明日はあなたが塞がる。あさてよりは物忌みなり』とあるように、古くは『あさて』の形で用いられていた。『あさて』から『あさって』に音変化 にしたのは、室町時代頃からである。『あさて』は、鎌倉時代の語源辞書『名語記』に『あすさての義也。明日去りての心也』とあり、『明日が去って後の日』の意味を語源としている。このことから、『あすさりて』が『あすさて』になり、『あさて』『あさって』に変化したとする説が有力とされている。」

としているが,『日本語の語源』は,少し違う。

「『明日が終った次の日』という意味でアスハテ(明日果て)といったのが,スハ[s(uh)a]の縮約でアサテ(明後日)となった。〈アサテばかり車をたてまつらむ〉(源氏)。〈あす,アサテまでもさぶらひぬべし〉(枕草子)。」

とし,明日の次の日,という意味では変わらない。

「しあさって」は,諸説ある。

シキアサッテ(重明後日)の義(三余叢談),
シはスギ(過)の約で,過後日の義(俚言集覧),
スギアスサッテ(過明去而)の約(菊池俗言考),
今日より数えて第四日目をいうところから。
隔明後日(ひきあさつて),ヒはシ(隔)の転。(燕石雑志)
シアサテはサアサテの訛音(名語記),

等々ある。『日本語源広辞典』は,『日本語源大辞典』が「肯けない」としたのに近い,

「四+アサッテ」

と,四番目の朝を迎える日,

を取っている。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/si/shiasatte.html

は,

「しあさっての語源には、『シ』を『過ぎし』の意味とする説や、『ひ(隔)』の転訛とする説。『シ』は『さい(再)』の意味で、『再あさって』が縮まったとする説。『明日』の重なりであることから、『し』は『しき(重・敷)』の意味など諸説あるが未詳。『あさっての翌日』をさす言葉は地方によって異なり、主に西日本と東京(一部近郊地域も含む)では『しあさって』で、これが共通語となっている。東京を除く東日本では『やのあさって』や『やなあさって』が多く用いられる。
 『やのあさって』の『や』は『いや(弥・彌)』の『や』と同じで、物事がたくさん重なることや、程度がよりはなはだしいさまを表す語である。『あさっての翌々日』(しあさっての翌日)を指す言葉は、西日本では『ごあさって』と言い、その翌日を『ろくあさって』と言うことから、これは『しあさって』の『し』を『第四日目』と考えたものであろう。
 東京では、あさっての翌々日を『やのあさって』、その他の東日本では『しあさって』と言い、順番が逆になって使われている。ただし、これらの分類は主なもので、『しあさって』と『やのあさって』の順番は、同じ都道府県内であっても地域によって異なるところがある。それに加えて、『さあさって』や『ささって』『しらさって』などの方言もあり、時差のない小さな島国と思えないほど複雑である。」

と,地方による違いを詳説している。つまり,

あす→あさって→しあさって→やのあさって,

あす→あさって→やのあさって→しあさって,

となるわけだが,『大言海』は,「やのあさて」について,

「(彌の明後日(あさて)の義)音便にヤノアサッテ。ヤナアサッテ。明明後日(しあさて)の次の日。京都にて,五夜さってと云ふ。(一,今日(けふ),二,明日(あす),三,明後日(あさて),四,明明後日(シアサテ),五,彌明後日(やのあさて))」

と説く。

あす→あさって→しあさって→やのあさって,
は,
あす→あさって→しあさって→ごのあさって,

とも言うということだ。

『日本語源大辞典』は,

「『あさっての翌日』は,東日本がヤノアサッテ,西日本がシアサッテという東西対立分布がある。しかし,都区内は,例外的にシアサッテである。『あさっての翌々日』は,西日本がゴアサッテ,都区内はヤノアサッテ,都区内を除く関東一帯はシアサッテである。すなわち,『あさっての翌日』と『翌々日』の組み合わせは,西日本が,シアサッテ/ゴアサッテ,都区内がシアサッテ/ヤノアサッテ,都区内を覗く関東一帯は,逆に,ヤノアサッテ/シアサッテということになる。西日本の体型は,シアサッテの『シ』を『四』と意識したために生まれたと考えられる。」

と,整理する。ただ,もう少し詳しく見ると,少し事情が違う。『日本語の語源』は,例によってこう述べている。

「(シアサッテ(明明後日)は)『再度の明後日』という意味でサイアサッテ(再明後日)といった。サイ[s(a)i]が縮約されてシアサッテになった。
 岐阜県不破郡・京都・淡路島・徳島・島根ではこの日をゴアサッテ(後明後日)という。
 また,この日をイヤノアサッテ(彌の明後日)と呼んだため,盛岡(御国通辞)・仙台(浜萩)・岩手・宮城・新潟・長野県上田・群馬県勢多郡・埼玉県入間郡・千葉・静岡県田方郡ではヤノアサッテ(明明後日)になり,東北・佐渡・群馬・埼玉県入間郡・千葉・山梨・長野・富山県では,ノア[n(o)a]が縮約されてヤナサッテ(明明後日)という。
(ヤノアサッテ(明々々後日)は)『アサッテ(明後日)の次の次の日』という意味で,一般的にはイヤノアサッテ(彌の明後日)といった。語頭を落としてヤノアサッテ(明々々後日)といい,縮約されてヤノサッテになった。これが標準的な呼び方である。
 ところが,シアサッテ(明々後日)を『四明後日』と誤認した地方では,この日をゴアサッテ(五明後日)と呼んでいる。(中略)さらに子音[i]を添加してゴヤサッテという。(中略)さらに,『ヤ』が子音交替[jr]をとげてゴラサッテという。」

とある。転訛はありうるが,この言葉の伝播に,地域の文化の伝播とそのエリア差がありそうな気がする。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)

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