逆鱗


「逆鱗」は,,

「(竜のあごの下のさかさのうろこに触れると怒ってその人を殺すという韓非子の故事により,天子を竜にたとえていう)天子の怒り,宸怒(しんど)。また目上の人の怒り」

と,『広辞苑』にはある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ke/gekirin.html

「逆鱗に触れるの『逆鱗』とは、竜のあごの下にある一枚の逆さにはえたうろこのことで,出典は『韓非子(説難)』。この鱗にふれると普段はおとなしい竜がおこり、必ず殺されるという伝説から、天子の怒りを買うことを『逆鱗に触れる』というようになった(天子を指すのは、天子が竜にたとえられるため)。転じて、上司や先生など目上の人に逆らって激しい怒りを買う意味でも、『逆鱗に触れる』は用いられるようになった。」

とある。『大言海』には,

「天子を龍に譬ふ。竜顔など云ふ語あり。韓非子,説難篇『夫龍之為蟲也,柔可狎而騎也,然其喉下有逆鱗徑尺,若人有嬰之者,則必殺人,人主亦有逆鱗,説者能無嬰,人主之逆鱗,則幾矣』」

と原典を引く。

夫(そ)れ竜の蟲たるや、柔にして狎(な)らして騎(の)るべきなり。
然れども其の喉の下に逆鱗の径尺なる有り。
若し人之に嬰(ふ)るる者有らば、則(すなわ)ち必ず人を殺す。
人主も亦逆鱗有り。
説く者能(よ)く人主の逆鱗に嬰るること無くんば、則ち幾(ちか)し。

と,訓読するらしい。で,

嬰逆鱗,

つまり,

逆鱗にふる,
逆鱗に触れる,

という言い方をする。『大言海』には,用例も挙げられていて,例えば,『戦国策』

「燕策,『奈何以見陵之怨,欲批其逆鱗哉』」

あるいは,『後漢書』,李雲傳,

「今日殺雲,臣恐剖心之譏,復議於世矣,故敢觸逆鱗冒昧以請」

あるいは,『太平記』,二三人僧徒関東下向事,

「帝大いに逆鱗ありて,行生定まりて後,三奏すといへり」

あるいは,『保元物語』,主上三條殿行幸事,

「朝威を軽しめ奉る者,豈,天命に背かざらんや,早く凶徒を追討して,逆鱗を休め奉らば,先づ,日来申す処の昇殿に於いては,疑いあるべからず」

等々。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%86%E9%B1%97

は,「逆鱗」について,

「『竜』は、元来人間に危害を与えることはないが、喉元の『逆鱗』に触れられることを非常に嫌うため、これに触られた場合には激昂し、触れた者を即座に殺すとされた。このため、『逆鱗』は触れてはならないものを表現する言葉となり、帝王(主君)の激怒を呼ぶような行為を指して、『逆鱗に嬰(ふ)れる』と比喩表現された。
この故事をもとに、現代では、「逆鱗に触れる」として広く目上の人物の激怒を買う行為を指すようになり、また「逆鱗」が目上の人物の怒りそのものを指す言葉として用いられることもある。『逆鱗に触れる』を、漢語を使って『嬰鱗(えいりん)』とも言うが、一般会話においてはほとんど使用されない。」

と簡潔にまとめている。

ところで,龍(竜)については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%9C

に詳しいが,

「中国の竜は神獣・霊獣であり、『史記』における劉邦出生伝説をはじめとして、中国では皇帝のシンボルとして扱われた。水中か地中に棲むとされることが多い。その啼き声によって雷雲や嵐を呼び、また竜巻となって天空に昇り自在に飛翔すると言われ、また口辺に長髯をたくわえ、喉下には一尺四方の逆鱗があり、顎下に宝珠を持っていると言われる。秋になると淵の中に潜み、春には天に昇るとも言う。」

とある。

龍.jpg

(「九龍図巻」陳容画(南宋)、ボストン美術館蔵)


日本にも,中国から伝来したが,

「元々日本にあった蛇神信仰と融合した。中世以降の解釈では日本神話に登場する八岐大蛇も竜の一種とされることがある。」
「他にも水の神として各地で民間信仰の対象となった。九頭竜伝承は特に有名である。灌漑技術が未熟だった時代には、旱魃が続くと、竜神に食べ物や生け贄を捧げたり、高僧が祈りを捧げるといった雨乞いが行われている。」

となる。われわれにも,龍神としてなじみである。

日本の龍.jpg

(「釈迦八相記今様写絵」 二代目歌川国貞(歌川国政)、19世紀)


竜の字.png

(甲骨文字の「竜」)


「龍(竜)」の字は,象形文字。

「もと,頭に冠をかぶり,胴をくねらせた大蛇の形を描いたもの。それにいろいろな模様をそえて龍の字になった。」

と,『漢字源』にあるが,

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%BE%8D

には,

「もとは、冠をかぶった蛇の姿で、『竜』が原字に近い。揚子江近辺の鰐を象ったものとも言われる。さまざまな模様・装飾を加えられ、『龍』となった。意符としての基本義は『うねる』。同系字は『瀧』『壟』。」

とある。旧字体では『龍』だが、「竜」は「龍」の略字であるが,古字でもある,ともされる。音は,

呉音 : リュウ(リュゥ)
漢音 : リョウ(リョゥ)
慣用音 : ロウ(ロゥ)
訓読み : たつ

である。

なお,ドラゴンは,「龍」と訳されるが,別物で,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3

に詳しい。

参考文献;
http://www23.tok2.com/home/rainy/seigo-gekirin.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%9C
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%86%E9%B1%97


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