2017年03月03日

おごる


「おごる」は,

驕る,
奢る,
傲る,

と当てる。『広辞苑』には,

「自分は他と隔絶した高い所にあり,質が違うのだと思い上がる意,また,その立場で行動する意」

として,

たかぶる,自分の才能・権勢などに得意になる,
思い上がってわがままな振る舞いをする,
分に過ぎて金銭を費やし,派手に暮らす,贅沢をする,
≪奢≫(他動詞としても使う)金を出して人にふるまう,

という意味が載る。『大辞林』には,

「『奢る』は“ぜいたくになる。人にごちそうする”の意。『あの人は口が奢っている』『友人に昼飯を奢る』
 『驕る』は“思い上がってわがままなことをする”の意。『傲る』とも書く。『驕った態度をとる』『驕る平家は久しからず』」

と,使い分けを整理する。『大言海』は,「驕(傲)る」と「奢る」の項を別とし,「驕(傲)る」については,

「大(おほ)ごるなどの意か。大きがるを云ふ。ひろごる,ほどこる」

と載る。「奢る」については,

「驕りて費やす意」

とある。「驕っているから奢る」のだという解釈になる。「ほこり」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/447072429.html

で触れたように,実は,『大言海』は,「ほこる」について,

「驕(おごる)の大ごるの上略と云ふ,廣ごるなどと同意と云ふ」

と,「ほこる」の語源とつなげている。「ほこ(誇)る」の語源説としては,その他にも,

オゴル(驕・奢)の義(日本釈名・言名梯),

という説があり,「おごる」と「ほこる」をつなげる考え方があるのである。『日本語の語源』は,逆に,「h」の脱落で,

「ホコル(誇る)はオゴル(驕る)になった」

とする。その関係について,『古語辞典』には,「ほこり」の項で,

「すぐれたものとして人目にたつように活動し行動する意。類義語オゴリは,自分は低い所にいるものとは違うのだと思い込んで,それらしく行動する意」

としている。しかし,その実体が伴うかどうかは,この場合,いずれも主観なので,「ほこり」がなくては,「おごり」はない。その逆はあり得ないはずだ,と思うが,如何であろうか。

『古語辞典』は,語源を,

「オゴはアガリ(上)のアガの母音交替形。オソ(遅)・アサ(浅)・コト(片)・カタ(片)・ホドロ(斑)・ハダラ(斑)などの類。アガリは下とは隔絶した高い所へ移る意。低い所にいたときとは,質の変わることがある。オゴリは,自分が下と隔絶した高い所にいると信じていて,自分は低い所にいるものとは質が違うのだと思う意。またその立場で行動する意」

としている。手許の『日本語源広辞典』には,

「語源は,『オゴル(おごり高ぶる)』です。オゴル(必要以上に贅沢をする)意となり,転じて,オゴル(他人に御馳走する)意にも使うようになります。」

とあるのでは,「おごる」の同語反復の感があって,意味不明だが,「おごる」の言葉の語源なのに,「おごる」を前提に説明しているのは,ちょっと可笑しい。

他の語源説を調べると,

『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E5%A5%A2%E3%82%8B

は,

「『平家物語』の「おごれる人も久しからず」のように、権威を誇り、得意になる意の「驕る」と同源の語であり、「あがる(上がる)」の母音交替形であるとされる。また、ぜいたくをする意でも用いられ、江戸時代ごろから「人にごちそうする」意が生じた。」

とある。上記『日本語源広辞典』の言いたいのは,このことだったのかもしれない。他に,

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q129837937

には,

「『おごる』は元々、『もる』という言葉にルーツがあります。薬を調合して人に与えることを『盛る』と言いますよね。毒薬を盛る、一服盛る・・・などと使われます。この『もる』が『おもる』になり、そこから『おごる』になっていったわけです。」

と,説く。ちょっとこの音韻変化は,無理クリの感がある。語源説を整理する(『日本語源大辞典』)と,

大きがるをいうオホ(大)ゴルの意か(古事記伝・大言海),
オホコル(大誇)の約(俚言集覧),
ホコルの転か(和語私臆鈔)
思い揚るの意から,あがる(揚る)の転(碩鼠漫筆),
オホゴトアル(大言有)の義(名言通),
雄凝ルの義か(和訓栞),
終りに懲ルルからか,また,大にハビコルからか(和句解),
オゴはアガル(上)のアガの母音交替形(『岩波古語辞典』),

等々となる。

アガル,

ほこる,

も同じく,「上にあると思う」ことだ,という意味では似ている。この段階では,当人の思い込みの,

主体(主観)表現,

に過ぎない。しかし,それを,

おごる,

と見るのは,他人目線からの,客体(客観)表現である。ある意味,「ほこる」「おごる」が共に外から見て(言って)いるのだとすると,

誇っている,

という,その人の状態表現が,

驕っている,

と,その人への価値表現へと転じた,と見ることもできる。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:22| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください