2017年03月04日

生意気


「生意気」は,

なまじいにいきがること。年齢・地位に比して,物知り顔をしたり差し出がましい言動をしたり,気障な態度をとったりすること。こしゃく。

と,『広辞苑』にはある。「傍から見て,しゃくに触るふるまい」ということなのだろう。「こしゃく(小癪)」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/424135393.html

で触れた。「小癪」の接頭語「小」についても,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/445760046.html

で触れた。「生意気」も「小」を付けて,「小生意気」ということがある。「ちょっととばかり生意気」というところだろうか。いずれにしても,外からの感情(価値)表現だ。

「生意気」の語源は,『日本語源広辞典』には,

「生(中途半端)+意気」

とあるが,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/na/namaiki.html

にも,

「生意気の『意気』は,『意気揚々』や『意気込み』などと使われるように,『やる気』や『心構え』のこと。
生意気の「生」は,「生煮え」「生乾き」 というように,中途半端な状態や十分に熟していない状態を表す接頭語で、ここでは「 年齢」や「経験」などにかかっている。「生意気」は,その本人ではなく不快に感じる側の感情の言葉なので,心構えだけで実が伴わない未熟な者に対し,差し出がましいと思う気持ちを表したものである。いかにも生意気なさまを『小生意気』というが,この『小』は接頭語の『こ』で,同じ用法では,『小憎らしい』『小賢しい』などがある。」

とあり,さらに,『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E7%94%9F%E6%84%8F%E6%B0%97

にも,

「『生』は『生ぬるい』などの生と同じ接頭語で、不十分・中途半端の意を表す。「意気」は気立ての意で、ここから気性や身なりが洗練されていて色気のある意の「粋(いき)」に派生する。したがって、『生意気』とは意気(粋)が中途半端な意で、粋がって得意になっている様子を表す。」

とある。しかし,『日本語の語源』は,漢字表記の「生意気」を前提にではなく,

「語調を整えるために母韻音調の『イ』『ウ』が添加された」

例として,

「『礼をしらぬさま。無礼だ』という意の形動ナメゲナリは,その語幹のナメゲがナマイキ(生意気)に転音した。」

と見なす。「生意気」が当て字なら,その「『生』+意気」から語源を考えることは,意味をなさないのではないか。『古語辞典』に,

なめげ,

は載らない。しかし「なめし」は,

無礼し,

とあて,

「(ナメ(無礼)の形容詞形)無礼である,無作法である。」

と意味が載る。『広辞苑』にも,「なめ(無礼)し」として,

「(一説に,『なめらか』『なめす』の『なめ』と同源。原義は,ぬるぬると滑る感じを言い,転じて,相手をないがしろにした態度に言う)礼儀がない,無礼である,無作法である」

と載る,『大言海』にも,「なめ(無礼)し」は,

「滑(なめ)義にして,怠る意か。或いは竝(なめ)の義にて,貴賤を押竝にする意かと云ふ,いかか」

とある。「生意気」よりは,

「なめげなり」の転,
「なめしげなり」の転訛,

という説の方に,信憑性を感じる。

「なま(生)」は,

生意気を略して,

も,「なま」と言ったりする(『広辞苑』)が,接頭語で,

未熟,,不完全,いい加減の意,
転じて,度合いが不十分の意から,中途半端,何となく,わずかながら,の意,

と,『古語辞典』にあるが,『大言海』の,

成り調わず,

がいい。その意味で,「未熟」であり「中途半端」である,

意気,

ということだが,「生(なま)」自体が,

なめし,

の語幹「なめ」の転じたものという可能性もあるのではないか。「なめ」は,

無礼,

と当て,「形容詞『なめし』の語幹」として,

無礼,
生意気,

という意味がある(『広辞苑』)のだから。

『大言海』『『広辞苑』』にもある「生意気」の語意の説明に,

「なまじひに,意気がること,聞いた風をすること」

の,「なまじい」というのが,「生意気」のニュアンスをよく表している。「なまじい」については,その転訛した,「なまじっか」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/441764979.html

で触れたが,

「ナマは中途半端の意。シヒは気持ちの進みや事の進行,物事の道理に逆らう力を加える意。近世の初期まで,ナマジヒ・ナマシヒの両形あった。近世ではナマジとも。」

というより,この「なま」自体が,「なめ(無礼)し」の「なめ(無礼)」の転訛なのかもしれないのである。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;
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今日のアイデア;
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