2017年03月09日

ほたる


「ほたる」は,

螢(蛍),

と当てる。『世界大百科事典』には,

「甲虫目ホタル科Lampyridaeの昆虫の総称。世界から約2000種,日本からは約30種が記録されている。なかでもゲンジボタル(イラスト),ヘイケボタル(イラスト)は日本各地に産し,光る虫として親しまれている。ホタルの語源については〈火垂る〉〈火照る〉〈星垂る〉〈火太郎〉など,いろいろな説があるが,いずれも光ることに関連する。」

とある。

ホタル_蛍.jpg


「螢(蛍)」の字は,

「螢の上部(音ケイ)は,火でまるくまわりをとりまくさま。螢はそれを音符とし,虫を加えたもの」

で,同じホタルを指す。しかし由来は違う。「ほたる」は,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%BF%E3%83%AB

によると,

「ホタル発光研究の草分けとして知られる神田左京は『ホタル』の名が日本書紀(彼地多有蛍火之光神)や万葉集(螢成)にすでに見られると指摘する」

という。古くから馴染みのあるものらしい。『大言海』は,

「火垂(ほたり)の転。或いは云ふ,火照(ほてり)の転と。」

とし,『日本語の語源』は,

「ヒ(火)をホと発音するレイも多い。ホナカ(火中)・ほのほ(火の穂。炎)・ホカゲ(火影)など。ホテル(火照る)虫の省略形のホテルがホタル(蛍)になった。」

とする。『日本語源広辞典』は,

「火照る」
「火垂る」

の両説を挙げる。

「火+垂る」は,光をコボス虫の意,
「火+照る」は,発光する虫の意,

と。『日本語源大辞典』は,いくつかの説を併記している。

ホタリ(火垂)の転(和句解・日本釈名・滑稽雑談所引和訓義解・重訂本草綱目啓蒙・大言海),
ホテリ(火照)の転(和語私臆鈔・俚言収攬・日本語原学・大言海),
ホタル(火焼)の義(和語私臆鈔),
ホタル(火焔)の義(東雅・和訓栞),
ヒタル(火足)の義(名言通),
ホタロウ(火太郎)の義(燕石雑志),
星垂の意か(重訂本草綱目啓蒙),
ひかるの意の語,ホトロから(万葉代匠記所引仙覚説),

等々。同書も言うように,

「ホを『火』の交替形ないし同語源とみる所は諸説一致」

しており,「タル」の解釈で別れているということになる。『語源由来辞典』,

http://gogen-allguide.com/ho/hotaru.html

は,

それを,

「ホタルの語源には,『ほたり・れ(火垂)』の転。『ほてり・れ(火照)』の転。『ひたる(火足)』の転。『ほたる(火立る)』の意味。『ほしたる(星垂)』の意味など諸説ある。これらの説は,ホタルの特徴である『光』を基本に考えられており,『ほ』を『火』の母音交替形とすることでも一致していることから,ホタルの『ホ』については『火』と考えて間違いないであろう(『星』の『ホ』も『火』が語源と考えられている)。ホタルの『タル』については,『火垂』や『火照』が有力と考えられているが,どれも決定的ではないため未詳である。」

と整理する。「ホ(火)」は,「ほのか」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/446671381.html

でも触れたが,

ほなか,
ほむら,
ほかげ,
ほや,
ほくち,

等々,「ホ」は,

「『キ(木)』に対して,複合語に現れる『コ』(例,木立,木の葉)と並行的な関係のもの」

とされ,

「オ列音が母音交替(oi)をとげてイ音列に転化した」

例とされる。そうなると,「ホシ(星)」も気になる。

『大言海』は,

「火白(ほしろ)の意かと云ふ」

とするが,『日本語源広辞典』は,

「ホ(日・火・光り)+シ(助詞)」で,空に光るものの意,
「ホ(晶・あきらか)+シ(すがすがしい)」で,空にキラキラ輝くもの,

の二説を挙げる。その他にも,『日本語源大辞典』は,

ホは火の義(箋注和名抄),
ホは火の義,シは助詞(東雅),
ホシイ(火石)の義(和句解・名言通・和訓栞・日本古語大辞典),
ホシ(火気)の義(松屋筆記),
ホイキ(火気)の義(松屋棟梁集),
ホシロ(火白・日白)の義(日本釈名・柴門和語類集),
ホはヒ(日)の義,シは子の義(玄同放言),
日子の転(和語私臆鈔),
ホはヒで光の意。シはサキの約。月や日に比して光が小さい物であるところから(和訓集説),
朝鮮語の星と同源(岩波古語辞典),

を挙げるが,「ヒ(日)」自体の語源が,「ヒ(火)」とする説もあり,ここでも,「ヒ(火)」の翳がつきまとう。結局,

ほてり(火照),

ほたり(火垂),

の転訛,ということになりそうである。「ホタリ」という言い方はないが,

火照り,

という言い方は残っている。

のぼせて顔が赤くなること,

であり,それをメタファに,

夕焼け,

風の吹こうとする海面の赤く光る,

ことを指す。あるいは,後者が先で,前者が後かもしれない。こういう状態表現をホタルに当てはめた,という方が,語呂合わせより自然に思うが,如何であろうか。『山家鳥虫歌』の,

恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす,

は,『松の葉』の,

声にあらわれ なく虫よりも 言わで蛍の 身を焦がす,

を元歌とするらしい。

鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす,

やはり,「ほたる」は「火照る」のような気がする。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%BF%E3%83%AB

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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