2017年03月18日

ときめく


「ときめく」を引くと,

ときめく,

時めく,

が出る。「ときめく」は,「胸がときめく」の意味の,

喜びや期待などで胸がどきどきする,

という意味であり,「時めく」は,

よい時機に合って栄える,持て囃される,
主人などの寵愛をうけてはぶりがよくなる,
にぎやかにさわぐ

といった意味になる。両者に関係があるのではないか,という気がしないでもない。『日本語源広辞典』の,「ときめき」の項には,

「語源は,『時+めく(そういう様子になる)』です。『良い時期に巡り合い,栄える』意味です。現代語では,喜びや期待などで,胸がどきどきする意です。トキメキは,その名詞形です。」

とあり,

時めく→ときめく,

とする。これで言うと,状態表現としての「栄えている」という,客体表現言から,主体の感情表現に転じたということになる。「めく」は接尾語で,

「体言・副詞などについて,五段活用の動詞をつくる。特にそう見える,そういう感じがはっきりする」(『広辞苑』),
「名詞・形容詞・形容動詞の語幹や擬声語・擬態語などに付いて「~のようになる」「~らしくなる」「~という音を出す」などの意の動詞を作る接尾辞」(『ウィクショナリー日本語版』),
「名詞や副詞,形容詞や形容動詞の語幹に付いて,…のような状態になる,…らしいなどの意を表す。『夏-・く』 『なま-・く』『ことさら-・く』『時-・く』『ちら-・く』『ひし-・く』『ざわ-・く』」(『大辞林』),

等々と説明される。

『古語辞典』をみても,『大言海』も,「ときめく」と「時めく」は,別の項として立てている。仮に,『日本語源広辞典』の説が正しいとしても,早くから別々に使われてきた,ということになる。

「ときめく」は,どこか擬音語ないし擬態語の気配があるが,『擬音語・擬態語辞典』の,

「どきどき」

に,

「『どきどき』は『はらはら』『わくわく』と合わせて使うことも多い。…また,『どきどき』からできた語に期待や喜びなどで心がおどる意の『ときめく』がある。」

とある。ちなみに,「どきどき」は,

激しい運動や病気で心臓が鼓動する音,
あるいは
心臓の鼓動が聞こえるほど気持ちが高ぶる,

の意味で,心臓の「ドキドキ」の擬音語である。

とすると,「ときめき」は,

どき(どき)めき→ときめき,

と,転訛したことになる。さらに,

どきめき→時めき,

と転訛したということもありえる。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1115078051

には,

「『ときめき』は、『ときめく(動詞)』の名詞です。『ときめく』は、喜び・期待などで胸がドキドキすることで、『動悸』に『めく』がついた『動悸めく』がなまったものじゃないでしょうか。「○○めく」とは、○○のように見える、○○の兆しが見える、という意味。(春めく・おとぎ話めく・きらめく・さんざめく、など)。ちなみに、「時めく」という動詞もあって、こちらは、時流に乗って栄える、という意味。」

と載り,あるいは,

http://www.lance2.net/gogen/z581.html

には,

「『ときめく』っていうのは、『何かに心が揺り動かされて喜びとか期待を感じてドキドキする様子』の事を指して使われる表現だね。これと同じように語尾に『めく』がくっついている言葉っていうのは『◯◯みたいに見える』というような意味で使われる事が多いんだよね。『ときめく』の場合は、『とき』というのが『動悸』からきているという説があるんだよね。つまり「ドキドキしているように見える」という意味から『動悸めく』という言葉が生まれて、そこから派生して『ときめく』という表現になったと考えられるね。」

とある。つまりは,

動悸めく→ときめく,

の転訛とする。こう見ると,接尾語「めく」を中心に考えると,

時+めく,
動悸+めく,

と,「ときめく」と「時めく」が二系統でできたとする考え方もあるが,いまひとつ,元々擬音語のドキドキからきた,

どきどき+めく(あるいは,どき+めく),

が,主体の,

いまの興奮状態を指し示す,

状態表現から,

その状態を外からの視線で見て,

もて囃されている,

と,客体表現に転じた,と見ることもできる。『語感の辞典』には,「ときめき」について,こうある。

「心臓がドキドキする意から。宝くじに当たったことを知った瞬間の喜びより,それによる素晴らしい未来を想像して昂奮する方に中心がある。」

ここにある語感は,いまの主体表現としての,

興奮した状態,

を,未来の主体表現,あるいは,未来の状態表現,

そういう状態にいる自分,

という含意がある。そこからは,外部の,他者の状態表現に転じやすくはないだろうか。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
中村明『日本語語感の辞典』(岩波書店)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル:ときめく 時めく
posted by Toshi at 05:08| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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