2017年03月27日
うみ
「うみ」とは,
海,
のことである。「海」の字は,
「『水+音符毎』で,暗い色のうみのこと。北方の中国人の知っていてたのは,玄海,渤海などの暗い色の海だった。」
とある。「うみ」を引くと,いわゆる「海」の意の他に,
湖など広々と水をたたえた所,
という意味があり,いわゆる「湖」も,
「うみ」
と呼んでいた。確か,琵琶湖も,
うみ,
と呼んでいたと思って調べると,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%B5%E7%90%B6%E6%B9%96
に,琵琶湖は,
「都から近い淡水の海として近淡海(ちかつあふみ、単に淡海とも。万葉集では『淡海乃海』(あふみのうみ)と記載)と呼ばれた。近淡海に対し、都から遠い淡水の海として浜名湖が遠淡海(とほつあふみ)と呼ばれ、それぞれが『近江国(おうみのくに、現在の滋賀県)」と遠江国(とおとうみのくに、現在の静岡県西部)の語源になった。別名の鳰海(におのうみ)は、近江国の歌枕である。」
とある。「遠江」を,
とおとおみ,
と呼ぶのは,浜名湖が遠淡海(とほつあふみ)と呼ばれていたことに由来するのだろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E6%B1%9F%E5%9B%BD
に,遠江國について,
「古くは『遠淡海(とほつあはうみ)』と表記した。この遠淡海は、一般的に浜名湖を指すと言う(ただし、国府のあった磐田郡の磐田湖(大之浦)を指すとする説もある)。これは、都(大和国)からみて遠くにある淡水湖という意味で、近くにあるのが琵琶湖であり、こちらは近淡海(ちかつあはうみ)で近江国となった。」
とある。因みに,それと関連させれば,「近江國」の「近江」も,琵琶湖と関わっていて,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E6%B1%9F%E5%9B%BD
に,
「『古事記』では『近淡海(ちかつあはうみ)』『淡海(あはうみ)』と記されている。7世紀、飛鳥京から藤原宮期の遺跡から見つかった木簡の中には、『淡海』と読めそうな字のほか、『近淡』や『近水海』という語が見えるものがある。『近淡』はこの後にも字が続いて近淡海となると推測される。国名は、琵琶湖を『近淡海』と称したことに由来するとする説が広く知られているが、琵琶湖を『近淡海』と記した例はなく、『万葉集』をみても、琵琶湖は、『淡海』『淡海之海』『淡海乃海』『近江之海』『近江海』『相海之海』と記されている。『淡海』の所在する国で、畿内から近い国という意味であり、『近つ「淡海国」』であり、『「近つ淡海」国』ではない。おおよそ大宝令の制定(701年)・施行を境にして、近江国の表記が登場し、定着する。」
とある。閑話休題。
「うみ」の語源は,『大言海』には,
「大水(おほみ)の約轉。う(大)の條をみよ。禮記,月令篇,『爵(すずめ)入大水為蛤』註『大水,海也』」
とある。「う(大)」を見ると,「大」を当て,
「オホの約(つづま)れる語。」
として,
「おほみ,うみ(海)。おほし,うし(大人)。おほば,うば(祖母)。おほま,うま(馬)。おほしし,うし(牛)。おほかり,うかり(鴻)。沖縄にて,おほみづ,ううみづ(洪水),おほかみ,ううかめ(狼)」
と例示する。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/u/umi.html
も,
「『う』は「大」の意味の転、「み」は「水」の意味で、「大水(うみ・おほみ)」を語源とする説が有力とされる。 「産み」と関連付ける説もあるが、あまり有力とはされていない。 古代には 、海の果てを「うなさか」といい、「う」だけで「海」を意味した。 また、現代でいう意味以外に,池や湖など広々と水をたたえた所も『海』といった。」
と同説をとる。『日本語源広辞典』は,二説挙げる。
説1は,「溟」meiに,母韻uが加わり,umeiとなり,umiと変化した(荒川説),
説2は,「ウ(大)+ミ(水)」説。「万葉期,沼,湖,海,のことを,ミとか,ウミとか言ったようです。ウミを一語と見て,分解しないのがいいのかもしれません。大いに水をたたえているところの意です。」
とある。『日本語源大辞典』は,「うみ」の語源説を,
ウミ(大水)の意(東雅・日本古語大辞典・日本声母伝・大言海),
オホミ(大水)の約転か(音幻論=幸田露伴),
アヲミ(蒼水)の約転(言元梯),
ウミの語源はミで,マ・メと同根。マは間・場の意でこれに接頭詞ウを添えたもの(神代史の新研究=白鳥庫吉),
ウミ(産)の義。イザナギ・イザナミの神が初めて産み出したことから(和句解・和訓栞),
ウクミチ(浮路)の反(名語記),
ウミ(浮水)の義(関秘録),
ウカミ(浮)の略(桑家漢語抄・本朝語源),
ウツミ(全水)の義(名言通・和訓栞・言葉の根しらべ・国語の語幹とその分類),
ウキニ(浮土)の転呼か(碩鼠漫筆),
等々,諸種挙げるが,「大水」以外は,どうも,語呂合わせが過ぎるようである。
ところで,「うみ」を「わたつみ」とも呼ぶが,「わたつみ」は,
海神,
海津見,
綿津見,
等々と当てる。『古語辞典』には,
「海(わた)つ霊(み)の意。ツは連体助詞」
とある。
https://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%82%8F%E3%81%9F%E3%81%A4%E3%81%BF
には,
「わたつみ 【海神, 綿津見】海うみにおわす神かみ。海うみ。」
と意味を載せ,
「わた(さらに古形は『わだ』)」は海の非常に古い語形、『つみ』は同系語に、山の神を意味する『やまつみ(cf.オオヤマツミ)』等が見られるように、『つ』は同格の助詞『の』の古形であり、『み」は神霊を意味する。なお、『わた』の語源は、現代朝鮮語「바다(/pada/ 海)」の祖語であるとの説もある。』
と説き,『大言海』も
「ツは,之,ミは,霊異(くしび)と通ず,或いは云ふ,海(わた)ツ海(うみ)の重言かと」
という。『日本語源広辞典』は,
「海の意味のワタツミの語源は,『ワタ(海)+ツ(の)+ミ(水)』です。ウミ,大海,のことです。ワタノハラとも,いいます。
とする。しかし,『日本語の語源』がシンプルに,
「ワタツカミ(海津神)―ワタツミ(綿津海)」
と書くように,神のなから転じたと見るのが妥当なのではあるまいか。『日本語源大辞典』は,
「ワタツウミの語形は,ミをウミのミと俗解したところから現れたものでも平安時代以降にみえる」
とする。「海津神」が,意識されなくなったところから来ているのだろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%BF%E3%83%84%E3%83%9F
は,
「ワタツミ・ワダツミ(海神・綿津見)とは日本神話の海の神のこと、転じて海・海原そのものを指す場合もある。
『ワタ』は海の古語、『ツ』は『の』、『ミ』は神霊の意であるので、『ワタツミ』は『海の神霊』という意味になる
『古事記』は綿津見神(わたつみのかみ)、綿津見大神(おおわたつみのかみ)、『日本書紀』は少童命(わたつみのみこと)、海神(わたつみ、わたのかみ)、海神豊玉彦(わたつみとよたまひこ)などの表記で書かれる。」
としている。「わた」は,『古語辞典』は,
「朝鮮語pata(海)と同源」
としているが,『大言海』も,
「渡る意と云ふ,百済語。ホタイ,朝鮮語パタ」
としている。『日本語源広辞典』は,
説1は,ワタ(渡)。島々を渡っていくウミを意識した語根,
説2は,ワタ(内蔵,内容物,ハラワタ)です。大海を生命体と意識した語根
と,二説挙げている。その他に,
遠方,他界を表すヲト・ヲチ(遠)と同根と見る説もあるらしい。いずれも,広い大海を意識した言葉で,ウミの,
大水,
とは発想を異にする。渡来人の毛もたらした言葉なのかもしれない。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%9C%E5%90%8D%E6%B9%96
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%B5%E7%90%B6%E6%B9%96
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