2017年04月02日

まい・おどる


三田村鳶魚は,舞いと踊りの違いを,

「舞というものは拍子を主としたもの、踊りというものは歌詞の説明を主としたものであります。」

と説明していた。『広辞苑』は,「おどり」に,

踊り,
躍り,

の字を当て,

音楽・歌曲に合わせて,足を踏み鳴らし,手振り・身振りをして舞うこと,

とした上で,

特に日本の伝統舞踊で,旋回動作を基調とする舞に対し,跳躍動作を基調とするもの,

とあり,「まい」については,

舞,
儛,

の字を当て,

舞は元来「まふ」こと,すなわち旋回動作で,歌や音楽に合せて,すり足などで舞台を回ることを基礎とし,踊りは跳躍に基づく動作で,リズムに乗った手足の動作を主とする。一般には,神楽,舞楽,白拍子,延年,曲舞,幸若舞,能楽,地唄舞などの舞踊を舞という,

とある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B8%8A%E3%82%8A

には,

「『舞(まい)』と『踊り(おどり)』は、今日では同義語のように用いられることが多いが、その場合、地域的には関東では「踊り」、関西では「舞」の使用例が卓越する。元来、旋回運動をもととする舞と跳躍運動をもととする踊りは厳然と区別されていたのであり、そのことをはじめに指摘したのは折口信夫であった。ところが東西における舞踊に関する地域的使用例に濃淡が生じていることは、江戸においては歌舞伎の舞台において踊りの有力な本源があるのに対し、京や大坂などの上方では能楽の舞台が舞踊の基準となる権威として機能していたという差異に由来する。」

とあり,さらに,

「踊り(おどり)は、日本舞踊のうちリズムに合わせた跳躍運動を主としたもの。明治以前 は舞とは厳然と区別されていた…。安土桃山時代に素人芸である踊りを興行化した出雲阿国らの歌舞伎踊りがあり江戸時代に大流行した が、これは語源の「カブク」が示すようにみだらな芸であり、舞が禄の対象であったのに 対し取り締まりの対象であった。」

とある。この地域性について,『日本語源大辞典』に,

「近世以来,上方においては,江戸長唄などを地とするもの,盆踊りなどのように手振りの種類が多く動きが派手な舞踊を『おどり』とよび,手振りの種類が少なく,動きが静かなものを『まい』とよぶ。」

とある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%9E

に,舞は,

「古典的な神楽に大陸からの渡来芸が加わったものとされ、民衆の中から生まれた踊りに較べて専門的技能を要するものである。ゆえに世襲的に伝えられてきたものが多いが、明治維新後は家禄を失ったことにより多くは絶えてしまい、伝統芸能としては能楽の要素として残される程度である。しかし多くの民俗芸能(郷土芸能)が重要無形民俗文化財に指定されている他、その伝統を引き継ぐものは多々あり、面影をしのぶことができる。」

とある。さらに,

「舞が囃子手など他者の力で舞わされる旋回運動を基本とするのに対して,踊りはみずからの心の躍動やみずからが奏する楽器のリズムを原動力に跳躍的な動きを基本とする。〈躍〉〈踏〉〈をどり〉などの字も用いる。舞が選ばれた者や特別な資格を持つ者が少人数で舞うのに対し,踊りはだれでもが参加できるため群をなす場合が多く,場も特殊な舞台を必要としない。」(『世界大百科事典 第2版』)

あるいは,

「日本舞踊は振り,舞,踊りの3要素から成り立っているが,舞が〈まわる〉を語源とする平面的旋回動作,踊りが〈躍る〉という言葉に発している上下的動作であるのに対して,振りは物まね的しぐさの,演劇的要素の強い部分を指している。歌詞に即して物まね的に演じることもあるが,その時点を超越すると扇1本,手ぬぐい1本,時には何も持たずに状況を観客の眼前にほうふつとさせることも可能で,深い奥行きをもっている。」(仝上)

と,つまり,「まう(ふ)」と「お(を)どる」とは,まったく異なる動作,ということになる。

『古語辞典』には,「まひ(舞)」の項で,

「マハリ(廻)と同根。平面上を旋回運動する意。同義語ヲドリは,跳躍運動する意が原義」

とあり,「をどり(踊)」の項に,

「はねあがる,飛び上がる意。類義語マヒ(舞)は,平面上を旋回する意」

とある。「舞う」について,『日本語源広辞典』は,

「マ(回)+フ(継続)」

とする。他の説も,

マハス(廻)の義(名言通),
マハルの約(名語記・和句解),
マハリフル(廻経)の義(日本語原学),
マハルと同根(岩波古語辞典),
円状に回転するところか,マロ(円)の転(日本語原考),
マヒのマはタマ(玉)・マル(丸)・マワル(廻)などの語幹(日本古語大辞典)
マは周の義,フは進む義(国語本義)
幻術の意の梵語マヤから(和語私臆鈔),

等々,「まわる」と絡めている。「まわる」の語源は,

「マワルは,メ(目)が語根です。『マワ(目の回転)+ス』」

とある。「ま」は,「め(目)」の転ではある。たしか,『大言海』は,「語る」について,

「形を活用せしめ(宿(やど)る,頭(かぶ)る,の例),事象を言ふ意なるべし」

と,「こと(言)」の活用とした。それに倣うと,「ま(目)」の活用と見られなくもない。

「お(を)どる」の語源は,『日本語源広辞典』は,

「オドロ(目の覚めるような大袈裟な行動)を動詞化」

とする。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/o/odori.html

は,

「『踊り(踊る)』の語源は、『お』が『尾』で『どり(どる)』が『とどろく』の意味とする説や、『繰り返す』という意味の『ヲツ』と関係する語といった説、『をとぶある(小飛有)』の意味など諸説あり、未詳である。」

としている。

つまりは,「おどる」も「まう」も,語源が詳らかではない。ただ,どちらも,日常の動作であったものが,特別のために用いられることで,特別な言葉に転じた。いずれも,

「古代以来,踊りは宗教と深く結びつき,したがって巫女や僧侶などの宗教者たちによってになわれ,伝承され,広められた。」(『ブリタニカ国際大百科事典』)

「呪術的,宗教的舞踊は日本では神楽(かぐら),舞楽,延年(えんねん),呪師,盆踊などのなかに見られる。のち舞踊はみずからの楽しみのために踊り,また鑑賞するものに発展した。古代の〈歌垣(うたがき)〉(嬥歌(かがい))や中世の〈風流(ふりゆう)〉などをはじめ民俗舞踊や郷土舞踊がそれにあたる。(『世界大百科事典』)

と言われるように,ただの「飛び上がる」「回る」動作に,特別の時の動作としての価値が加えられることで,「踊る」「舞う」となった,元々特別の動作でなかったからだろうか,語源は詳らかではない。。

参考文献;
三田村鳶魚『江戸ッ子』(Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

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posted by Toshi at 05:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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