2017年04月04日

すてき


「すてき」は,

素敵,
素的,

と当てられる。

自分の好みに合っていて,心がひきつけられるさま,
程度や分量がはなはだしいさま,

といった意味になる。『大言海』は,

「出来過ぎの倒語」

とし,

最もすぐれたること,

と意味を載せる。『江戸語大辞典』も,やはり,

「出来過ぎの倒語」

とし,

数量・程度などの甚だしいこと,ひどい,めっぽう,沢山,

という意味を載せる。語源は,さておくとして,どうやら,「すてき」は,

たくさん,

という程度・分量を表す状態表現であったものが,そこに,出来不出来,という価値を加えた,価値表現へと転じたらしいことが推測される。とすると,語源は,「出来過ぎ」の倒語,とするのは,後知恵なのではないか。『古語辞典』には,少なくとも,「すてき」は載らないので,比較的新しい語ということになる。

手許の『日本語源広辞典』は,二説載せ,

説1は,「デキスギの逆言葉,スギデキの音韻変化」説,
説2は,「ス(素晴らしいのス)に的のついたもの,

として,

「江戸期の言葉で,非常に,甚だしいの意でした。現代語は,素晴らしい,優れている意です。」

と付記する。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/su/suteki.html

は,この二説について,

「素敵は、江戸時代後期の江戸で俗的な流行語として、庶民の間で用いられ始めた。当初は仮名書きが多く、『程度のはなはだしいさま』『並はずれたさま』といった意味で使 われていた。 明治頃から現在の意味に限定され、『素的』という字が当てられるようになった。大正頃から『素敵』の当て字がみられるようになるが、『素敵』が一般化したのは昭和に入ってからで、それまでは『素的』が多く使われていた。
素敵の語源には、『できすぎ(出来過ぎ)』の倒語『すぎでき』が変化した語とする説と、『すばらしい』の『す』に接尾語の『てき』が付いたものという説がある。倒語は『すてき』と同じ江戸時代の江戸で流行したものなので、時代的には『できすぎ』の説も考えられるが、『できすぎ』から『すぎでき』といった部分的な倒語であることや、その後更に変化するなど非常に複雑であることから考え難い。
『すてき』が当初は『並外れたさま』を意味していたことや、のちに『素的』の字が当たられていることから、一見『すばらしい』との関連性もないように見える。しかし,『すばらしい』は元々『とんでもない』『ひどい』という意味で使われていた言葉で、同じように意味が変化したとすれば『すばらしい』の説は十分考えられる。
『素敵』の漢字の由来は当て字なので解っていないが、『素敵』のほかにも『素適』といった当て字もあることから、『かなわない』という意味が関係していると思われる。
『適わない』は『望みが実現しない』の意味、『敵わない』は『対抗できない』『勝てない』の意味で使われるため、『素晴らし過ぎて敵わない』という意味から『素敵』が使われるようになり、もっとも使われる当て字になったと考えられる。」

と詳説している。当てた漢字の解釈は,さておくとして,どうやら,

素晴らしいのス+的,

が,語源説となると,上記のように,「すてき」の原義が,

沢山,

という状態表現であったとすると,「すばらしい」の語源が問題になってくる。『日本語源広辞典』は,

「ス(接続語)+晴らし」

で,「晴れやかなできばえ,みごと,程度がはなはだしい」の意とする。これでは,「すてき」の原義の状態表現と合わないのではないか。しかも,『古語辞典』の「晴らし」には,

晴れさせる,
晴れやかにする,

の意しか載らないのだ。「しっかり」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/445338219.html

の項で触れたが,『日本語の語源』は,「すばらし」について,

「『たいそう立派である,たいそう盛大である,たいそうすぐれている』という意のスバラシ(素晴らし)は,スッパリの形容詞化で,スッパラシの転音であろう。」

とし,「スッパリ」は,「シッカリ」から来ている。「シッカリ」は,「悉皆」から来ている,という。

「シッカイ(悉皆)は『すっかり。みな。ことごとく。全部』という意味の漢語である。…仏教の経典に多用されており,仏教用語として流布されていた言葉である。…シッカイ(悉皆)は語尾に子音(r)が添付されてシッカリになり,語尾の『シ』の母音交替(iu)でスッカリになった。さらに多くの語形に転音・転義したので,…整理しておくと,①全部(すっかり),②完全(すっかり),③確実(しっかり),④多数・多量(しっかり),⑤大変(しっかり)に分類されよう。」

「スッパリ」は,「スッカリ」から転音し,上記②の,

まったく,すっかり,

の意味を伝えている。「シッカリ」は,「スッカリ」に転化し,

ことごとく,まったく,

の意となり,「スッカリ」は,「スックリ」に転ずると,

すべて,みな,のこらず,

の意となり,「スックリ」は,その意を残したまま,「ソックリ」に転じて,

全部,

の意となる。また「スックリ」は,「スッキリ」に転じてもい,る。

「シッカイ」から転じた「シッカリ」は,「カ」が子音交替(kp)で,「シッパリ」に転じ,「ジッパリ」へと転じ,更に子音交替(r∫)を遂げた「ジッパシ」は,「ジッパ」へと省略され,

すぐれている,みごとである,欠点がない,

という意の「リッパ」に転音する,という。

こういう転訛の背景の中で,「すばらしい」をみると,上記の,

①全部(すっかり),②完全(すっかり),③確実(しっかり),④多数・多量(しっかり),⑤大変(しっかり),

の,

「五義を総合して最高のほめ言葉になった」

という,『日本語の語源』の言い分もわかる気がする。

『日本語源大辞典』は,「すてき」の本来の意味は,

程度がはなはだしいさま,度はずれたさま,滅法,

で,「19世紀初頭ころから,江戸のやや俗な流行語として使われ始めた」ものとし,それが,明治期に,

非常にすぐれているさま,すばらしい,

の意味に限定されてくる,としている。そうみると,やはり,

素晴らしいのス+的,

の語源をとりたくなる。なお,「滅法」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/437499017.html

で触れた。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル:素敵 すてき 素的
posted by Toshi at 05:16| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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