2017年04月06日

ひととなり


「ひととなり」は,

人となり,

とも書くが,

為人,

とも当てる。

生まれつきの人柄,もちまえ,天性,性,
からだつき,背丈,

という意味である。どちらかというと,前者の意味で使うことが多い。『論語』学而篇に,

其の人と為りや孝弟にして、上を犯すを好む者は鮮(すく)なし,
上を犯すことを好まずして、乱を作(おこ)すを好む者は、未だ之れ有らざるなり。
君子は本を務む。本立ちて道生(な)る。孝弟は、其れ仁に為すの本なるか,

とある。その,

為人,

を指す。『古語辞典』では,

身長,

という意が最初に来ているが,上記「為人」は,本来,

ヒトであるそのあり方,

を指すので,意味を広げてわが国では使ったということではあるまいか。

其為物(そのものたるや),

と書くと,

物であるそのあり方,

その物の性質を指す。『大言海』には,「ひととなり(為人)」の次項に,

ひととなる(為人),

として,

人並みの身となる,

という意を載せる。似た用い方で,

為我,

を,「ゐが」と訓まず,

我がためにす,

と訓ませ,

己を利するためにする,

という意を載せ,さらに,

為体,

と書いて,

ていたらく,

と訓ませる。『大言海』には,

體たる,の延,

とあるが,『広辞苑』には,

タラクは助動詞タリのク語法,

とある。ク語法については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E8%AA%9E%E6%B3%95

に詳しいが,「おもわく」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/439786326.html

で触れたように,

「上代(奈良時代以前)に使われた語法であるが、後世にも漢文訓読において『恐るらくは』(上二段ないし下二段活用動詞『恐る』のク語法、またより古くから存在する四段活用動詞『恐る』のク語法は『恐らく』)、『願はく』(四段活用動詞『願う』)、『曰く』(いはく、のたまはく)、『すべからく』(須、「すべきことは」の意味)などの形で、多くは副詞的に用いられ、現代語においてもこのほかに『思わく』(『思惑』は当て字であり、熟語ではない)、『体たらく』、『老いらく』(上二段活用動詞『老ゆ』のク語法『老ゆらく』の転)などが残っている。」

で,『日本語の語源』は,断定の助動詞「たり」の変化について,

「テイ(体)は。『すがた。態度。体裁。様子』のことであるが,チイタルコト(体たる事)はテイタラク(為体)となり,『ありさま。状態。様子。かっこう』の意となった」

とある。はじめは,

すがた,ありさま,

を指す状態表現であったものが,

(後世は非難の意をこめて用いる)ざま,

と,価値表現へと転じた,とみていい。『学研全訳古語辞典』に,

「『てい(体)』に助動詞『たり』の未然形『たら』と体言化の接尾語『く』が付いて一語化したもの。直訳すると、『そのようなようすであること』の意。単なる姿・ようすではなく、何かの事情から生じた姿・ようすをいう。現代では、『何という体たらくだ。』のように、人をさげすんだり、ののしったりする場合に用いるが、古くはそのような意味はなかった。」

とある。「えたい」は,

得体,

と当てるが,『広辞苑』には,

「一説には『為体(ていたらく)』の音読イタイの転。『得体』とも書く」

として,

正体,本性,

の意で,「得体が知れない」といった使い方をする。『大言海』は,「えたい(えてい)」を,

為體,

と当て,

「為體(ゐたい)の転(いばる,えばる。えこじ,いこじ)。為體(ていたらく)の字を音読したる語。所為(しょゐ)をセヰと読む類なり」

とある。為体も,

ありよう→ざま→本性,

と,価値表現も極まった感じである。ただ,「得体」の語源については,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/e/etai.html

は,二説があるが未詳,として,

「ひとつは、『偽体(ていたらく)』の音読『 いたい・えてい』が転じたとする説。もうひとつは、平安朝時代には僧侶の着ている衣で 宗派や格式がわかったことから、『衣体(えたい)』が転じたとする説。」

を挙げる。『日本語源大辞典』も,二説載せ,「衣体」について,

「衣の色によって宗派・格式を判断したために,ちょっと見て検討のつかない衣を着ることを,衣体がわからぬといつたところから」

と説く。『語源辞典』は,「得体が知れない」の項で,

「衣体が知れない」

の意とする。しかし,どうも,音韻変化の方が,意味の変化と合わせて考えると,説得力があるような気がする。そもそも,

衣体,

という言い方をするのかどうかも疑わしい気がする。

因みに,

http://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/2260/meaning/m0u/

は(『類語例解辞典』),

人柄(ひとがら)/人物(じんぶつ)/人間(にんげん)/人(ひと)/人となり(ひととなり)

を比較し,

「人柄」は、多く、良い性格、性質に関して一般的に使われる,
「人物」は、性格にやや品位を加えた意味合いとして使われる,
「人間ができている」は、慣用句化した表現。この場合の「人間」は人格の意を表わす,
「人」は、多く「人が良い」「人が悪い」の形で使われ、その人の性質、特に心の底にある気持ちから出た性質をいう,
「人となり」は、「人柄」とほぼ同じ意。やや改まった言い方,

と使い分けを整理している。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
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posted by Toshi at 04:53| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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