2017年04月20日

やみ


「やみ」とは,

闇,

の字のそれだが,語源は,『日本語源広辞典』には,二説載る。

説1は,「光が射すことのヤミ(止み)」で,暗夜の意,
説2は,「夜見」が語源で,夜の暗さ,暗闇の意,

とある。『大言海』は,

「光の止みたるにて,暗き意」

と,「止み」説を取る(その他,『和訓集説』『名言通』など)。

「暗くなる義の動詞ヤムから」(『続上代特殊仮名音義』),

もそのつながりだろうか。しかし,『日本語源大辞典』にある,

「日神が岩戸に籠った時は人間の業をすべてヤメたことからか。また月が天を行くのをヤメた意か」(和句解),

は,いただけない。少しこじつけすぎる。「やむ」は,

「ヤム(移動,進行がトマル)」

で,とまる,中止する,おわる意と,『日本語源広辞典』は言うが,同義反復のようだ。

止む,
病む,

があるが,「止む」については,『古語辞典』は,

「雨・風などの自然現象や病気などが,自然に絶えて消え去る意。類義語トマリは,動きがそこまでで停止すかるけれども,動きの主体はそのままそこにある意」

とし,「病む」については,

「身心が病に侵される意。類義語ワヅラヒ(煩)は,心労や病根となる者に,触れ,長くかかずりあう意」

と区別する。「病む」も「止む」も,同源と見ていいのかもしれない。動きや状態が停止する「ヤム」と「闇」にはどうもつながらない気がする。

他方,夜見説の,

「夜見」

から類推される,

ヨミ(黄泉),

を語源とする説もある(『言元梯』)。「黄泉」をみると,『広辞苑』は,

「ヤミ(闇)の転か,ヤマ(山)の転ともいう」

として,「やみ(闇)」とのつながりを指摘しているが,『大言海』は,

「夜見(よみ)の義にて,暗き處の義,夜の食國(をすくに)を知ろしめす月読命のヨミも夜見か,闇と通ず」

とする。つまり,

yomi⇔yami

は,つながるのである。『日本語の語源』は,

「死者の魂が行くという地下の世界をヤミ(闇)の国といった。「ヤ」が母音交替(ao)をとげてヨミ(夜見,黄泉)の国に転音し,そこへ行く道をヨミヂ(冥途)といった。」

とし,『日本語源広辞典』も,

「ヤミ(闇)の母音交替形」

とし,『古語辞典』も,

「ヨモツのヨモの転。ヤミ(闇)の母音交替形か」

とする。『日本語源大辞典』には,

ヤミ(闇)の転,

とする説(『仙覚抄』『万葉集類林』『冠辞続貂』『言元梯』など)以外に,

ヤミヂの義。ヤミミチの反イミの転(名語記),
ヨミ(夜見)の義(和訓栞・大言海),
梵語yamiの中国語ヨミ(須弥)で閻魔または夜摩の訛転(外来語辞典),
ヨモツ(黄泉)ノヨモの転(『岩波古語辞典』),

とあるが,やはり,闇⇔黄泉,特に黄泉という概念は,メタ化されたものなので,闇→黄泉という流れではあるまいか。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/yo/yomi.html

は,

「古代中国では、死者が行く地下の世界を『地下の泉』の意味で、『黄泉』(こうせん)といった。『黄』は五行思想で『土』を象徴することから、『地下』を表している。日本では大和言葉の『よみ』を漢語の『黄泉』に当てているため、語源は異なる。古くは、『よみ』を『ヨモツクニ(よみのくにの意)』といった。『ヨモ(よみ)』の語源には、『ヨミ(夜見)』や『ヤミ(闇)』の意味。 梵語『Yami』、中国語『預弥(ヨミ)』から『閻魔』の意味。『ヨモ(四方)』の意味からや、『ヤマ(山)』など諸説ある。あの世が地下にあるとするならば、『夜見』や『闇』の説が妥当であるが、『古事記』では雷神が登場し、地上にある世界のように表されていることから、『山』の説も考えられる。」

とするが,「やま」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/448386982.html

で触れたように,

神が住む神聖な地域,

という意味だけではなく,三輪山が大神(おおみわ)神社の神体であるように,

神体,

であった。それを闇とつなげ,黄泉とつなげるのはおかしくはないが,少し首をかしげる。

「あの世が地下にあるとするならば、『夜見』や『闇』の説が妥当である」

が順当ではあるまいか。なお,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E6%B3%89

は,黄泉の語源を,

「夜」説。夜方(よも)、夜見(よみ)の意味、あるいは「夜迷い」の訛り,
「四方」説。単に生活圏外を表す,
「闇」説。闇(ヤミ)から黄泉(ヨモ・ヨミ)が派生した,
「夢」説。もともと夢(ユメ)のことをさしていた,。
「読み」説。常世国の別名とする説で、常世国から祖霊が歳神(としがみ)として帰ってくる正月を算出するための暦(こよみ=日読み)から,
「山」説。黄泉が「坂の上」にあり、原義は山である,

と諸説を整理している。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:08| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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