2017年04月24日

きりきりまい


「てんてこまい」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/449226351.html

で触れたが,その類義語に「きりきりま(舞)い」という言い回しがある。

非常な勢いで回ること,せわしなく立ち働くさまをいう,
相手の激しき動きについていけず,うろたえて動くさま,

という意味になる。特に後者は,

速球にきりきり舞いする,

などという言い方で使われる。『大言海』には,

身をきりきりと旋回(めぐらす),

とある。さらに,

きりきり(と),

については,

キリキリは音なり,

とあり,

管(くだ),独楽などの,巻き廻る音に云ふ語,
歯を強くくひしばる音に云ふ語,
弓弦を,強く引きしぼる音に云ふ語。約めて,きりりと,

と,擬音語であることを示唆している。そこから,『広辞苑』や『古語辞典』は,

きつく締め上げるさま,
きつくきしむさま,
きつく巻きついたり勢いよく回転するさま,
弓を強く引き絞るさま,
てきぱきとするさま,
錐を揉みこまれるように鋭い痛みが持続するさま,

等々と擬態語へと拡大しているさまが見て取れる。室町末期の『日葡辞典』には,

キリキリトシマウ,

という用例が出ている。「てきぱき」の意のようだ。『江戸語大辞典』には,その流れか,

ことを速やかになすさま,

という意が載る。『日本語源広辞典』は,

「キリキリ(擬態語)+舞い(まわる)」

とし,「こまが回るように速い勢いで回ること」を言うとしている。

http://ppnetwork.seesaa.net/article/448651477.html

で触れたように,

舞は元来「まふ」こと,すなわち旋回動作で,歌や音楽に合せて,すり足などで舞台を回ることを基礎とし,踊りは跳躍に基づく動作で,リズムに乗った手足の動作を主とする,

なので,「舞い」に準えたことが推測される。『由来・語源辞典』

http://yain.jp/i/%E3%81%8D%E3%82%8A%E3%81%8D%E3%82%8A%E8%88%9E%E3%81%84

も,

「もとは、独楽(こま)のように、片足で立って勢い良く回転することをいい、その様子からのたとえ。『きりきり』は糸などをきつく巻きつけたり、物が回転したりする様子を表す擬態語。」

とする。ちなみに「きりぎりす」(古語では「こおろぎ」)の語源も,

「きりきり(擬音)と鳴く虫」

から来ている。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1421889534

は,「きりきりまい」を,

「もともと日本の古典舞踊の踊りに『てんてこ舞い』という物がありました。これは太鼓の『てんてこ』という音に合わせて激しく踊る物で、この舞いが片足を軸にして大工道具のキリのように回転するところから『きりきり舞い』とも呼ばれていました。」

とする。「てんてこまい」の回転動作に注目した言い回し,ということなのだろうか。

http://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/9217/meaning/m0u/

は,

「てんてこまいい」は来客、応対など用事が多く、忙しくたち回ること。「てんてこ」は太鼓の音。
「きりきりまい」は、十分に対応できないほど忙しく動き回ること。また、異常な事態によって翻弄(ほんろう)されることにもいう。

と使い分けを示していたが,由来から見ると,「小太鼓」に合わせて舞う「てんてこ舞」に対して,「きりきり舞い」は,自律して立ち働く,という感じに受けるが,用例は,真逆のようだ。

「豪速球にきりきりまいする」

という使い方からすると,他者に振り回されている感じがより強いのは,「きりきりまい」のようで,コマのイメージとは逆に,周囲に振り回されている,感じが強い気がする。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
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今日のアイデア;
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