2017年05月06日
みすぼらしい
「みすぼらしい」は,
身なりが悪い,
外見が貧弱である,
という意味である。『広辞苑』には,
「身が窄(すぼ)るような意」
とある。「みすぼらしい」は,転訛して
みそぼらしい,
とも言うらしい。単なる外見の悪さを状態表現しているだけなのに,そこに貶める価値表現へと転じていく含意が読める。『デジタル大辞泉』にも,
「『すぼらシ』は動詞『窄 (すぼ) る』の形容詞化。『身窄らしい』で、身がすぼまるさま、また『見窄らしい』で、すぼまるように見えるさまの意ともいう。」
とある。しかし,「すぼる」は,「すばらしい」の項,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/449516842.html?1493667734
で触れたように,
「すぼむ(窄む)」は,「つぼむ(窄む)」の,
tu→su,
の子音交替である。『日本語の語源』に,
「『ツ』の古語は[tu]であった。二つの子音が結合している破擦音のツ[tsu]は子音交替が困難であるが,直音の『ツ』は破裂運動を摩擦運動に変えることによって容易に『ス』に移行した。」
とある。そして,「つぼむ」あるいは「つぼる」は,
は,
つぼ(壺)を活用させた語,
である。つまり,「小さくすぼむ」意である。『古語辞典』「つぼみ」の項には,
窄み,
莟む,
噤む,
の字を当て,
「壺を活用させた語」
として,
壺の口のように,小さくすぼむ,
開いていた花がしぼむ,
つぼみをもつ,
といった意味が載り,そのアナロジーで,
散らばっていた人数が一か所にまとまる,
人数をまとめてひきこもる,
といった意味があるとする。だから,
狭く小さくなる,
という意味で,「つぼむ」
は,
すぼむ,
つぼまる,
すぼまる,
とも言う(『大言海』)。当然連想されるように,
蕾(莟)み,
ともつながる。『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/mi/misuborashii.html
「みすぼらしいは『みすぼらし」の口語で、語構成は『み(身)』+『すぼらし(窄らし)』。すぼらしは、『狭くなる』『縮む』『小さくなる』といった意味の動詞『すぼる(窄る)』の形容詞形 で、みすぼらしいは『身が窄るようになる』。 つまり、『身が細くて貧弱である』という意味。動詞『すぼる』には『すばる』という形もあり,みすぼらしいは『みそぼらしい』ともいう。また『すばる』の形容詞形『すばらしい(素晴らしい)』である。』
は,「すぼむ」が「つぼむ」転訛であることを見逃しているように見える。これでは,「蕾」につながっていかない。
「つぼ(壺)」の語源を見ると,『日本語源広辞典』は,
説1「ツボ(丸い)+ミ(芽)」で,丸い芽の意,
説2「つぼむの連用形名詞」で,蕾と,ツボマル,局は同語源,
とし,『日本語源大辞典』は,
その形がツボ(壺)のようにツブラ(円)であるところから(東雅),
ツブラメ(円芽)の義か(名言通),
その形から,ツボミ(円身)の義か(和語私臆鈔),
ツボはツブオ(粒発)の約(国語本義),
とするが,壺を活用化した,
窄む,
の名詞化でいいのではないか。『日本語の語源』によると,つぼみ(蕾)を,
つぼ,
と呼ぶ地方もあるようだ。確かに,壺に似ている。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
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