2017年05月09日

つぼ


「つぼ」は,古くは,

つほ,

と清音であったらしい。

壺,

の字を当てるが,『広辞苑』は,

自然にくぼんで深くなったところ,

の意味を最初に載せる。それに準えて,

容器,

の意味になったものか,その逆に,壺から,それをメタファーに,窪んだ土地をいったものかは,これだけではちょっと分からない。しかし,次いで,

あるものに差し込む部分,

の意味が載り,

つぼがね,

笙の管を立てる椀型の共鳴部分,頭(かしら),匏(ほう),

という意味が載る。「つぼがね」は,「壺金」とあて,

開き戸の釣り元に開閉のために打つ金具。軸となる肘金(ひじがね)を受ける壺状の環のついたもの,つぼかなもの,ひじつぼ,

である。

http://sugiitakunn.blog.shinobi.jp/%E3%81%B2/%E8%82%98%E5%A3%BA%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%EF%BC%88%E3%81%B2%E3%81%98%E3%81%A4%E3%81%BC%E3%80%80%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%85%A5%EF%BC%89

をみると,肘壺の上の金物と下の金物を分られていて,

ひじつぼ.jpg


「下の金物が、枠や、柱につき,上の金物が、建具に付く真ん中の座金のような金物は、蛇の目と呼ばれる金物」

と呼ばれたようである。「ひじがね」は,

戸の開閉に用いる金具で,肘形に曲げて作って開き戸の枠に取り付け,柱にある肘壺(ひじつぼ)にさし込んで蝶番(ちょうつがい)のような役をするもの,

となる。こうみると,「つぼがね」とは,窪みのことを指す。笙の,「笙の管を立てる椀型の共鳴部分」というのは,

匏,

と呼ばれるが,雅楽に用いる管楽器の笙は,

「匏(ほう)の上に17本の長短の竹管を環状に立てたもので、竹管の根元に簧(した)、下方側面に指孔がある。匏の側面の吹き口から吹いたり吸ったりして鳴らす。奈良時代に唐から伝来。」

笙.JPG


とされる。「匏」とは,「ひさご」の意味で,

http://saisaibatake.ame-zaiku.com/gakki/gakki_jiten_show2.html

を見ると,笙のさまざまな変型があり,笙の匏(ふくべ)の部分が,「匏」と呼ばれている謂れがわかる。ここでも,壺は,

窪み,

に準えて言っていることがわかる。そして,

坪,

とあてる「つぼ」も,また,ここから来ている。『広辞苑』の「坪」の項では,

壺,

とも書く,とある。『大言海』の「坪」の項には,

「殿中の間(あはひ),或いは,垣の内の庭など,一区の窪まりたる地の称(常に壺の字を借書す)」

とある。これも,窪みのアナロジーである。さらに,『広辞苑』は,

ここと見込んだ所,

という意で,

矢を射る時ねらうところ,
すぼし,
急所,かんどころ,
灸で据えるべき場所,灸点,

と意味を載せる。ただ,この「ツボ」は,窪みとつながらず,少し由来が違うのかもしれない。という気がする。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/tu/tsubo.html

は,

「口と底がつぼまっていることから,『つぼむ(窄む・蕾む)』に由来するといった説があるが,『つぼむ』は『つぼ』の動詞化と考えられているため,この説は採用しがたい。壺は丸くふくらんでいるので,『つぶら』『粒』など丸いものを表す『つぶ』に通じる。しかし古形は『つほ』なので,濁音の『つぶら』から清音の『つぼ』が生じ,濁音に戻ったという点で疑問が残り,同語系と考えるにとどまる。」

とし,「急所や勘所,灸などの治療で効果のある体の『ツボ』は別に項を改める」としているので,別系統かと予想できる。『日本語源広辞典』は,

「つぼむ(すぼむ)」

説を取っているが,「すばらしい」「みすぼらしい」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/449516842.html?1493667734

http://ppnetwork.seesaa.net/article/449628311.html

で触れたように,「すぼむ(窄む)」は,「つぼむ(窄む)」の,

tu→su,

の子音交替である。『日本語の語源』に,

「『ツ』の古語は[tu]であった。二つの子音が結合している破擦音のツ[tsu]は子音交替が困難であるが,直音の『ツ』は破裂運動を摩擦運動に変えることによって容易に『ス』に移行した。」

とある。そして,「つぼむ」あるいは「つぼる」は,

は,

つぼ(壺)を活用させた語,

である。その意味で,壺があっての語だから,語源とはならない。『日本語源大辞典』は,

口がツブラ(円)であるところから(東雅,萍(うきくさ)の跡・玄同放言・和訓栞・言葉の根しらべ・日本古語大辞典・蝸牛考=柳田國男),
口がつぼんでいるところから(国語の語幹とその分類・日本語源・上方語源辞典),
つぼむ(莟む)の義(万葉集類林・名言通),
ツツヒロの反(名語記),
土でつくるところから,ツは土の義,ボはクボムの義(和句解),
ウツホ(空)の義(言元梯),
アツボ(虚洞)の義か(和語私臆鈔),

等々載せるが,古形が「つほ」であると考えると,

うつほ→つほ,

に惹かれる。矢を盛って腰に背負う宙空の籠を,

うつぼ(空穂・靫),

と呼ぶが,想像されるように,

うつほ→うつぼ,

と転じたとみられる。さらに,「うつほ(空)」は,

ウツホラ(空洞),

の約で,

うつお(空),

つまり,中かがからである,意である。となると,

うつほら→うつほ→うつぼ,

あるいは,

うつほら→うつほ→うつぼ,

うつほら→うつほ→うつお

は別系統,でもありえるように思えてくる。なお,

勘所,

の意のツボ,

壺にはまる,
ツボを押さえる,

のツボは,

壺,

の字を当てたりするが,由来が違う。また,

思う壺,

の壺も,由来を異にするようだ。これは,項を改めることにしたい。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%99
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

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