ツボ


壺については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/449713166.html?1494273038

で触れたが,

つぼにはまる,
ツボを押さえる,

のツボは,いずれも,

壺,

の字を当てることもあるが,由来が違うようだ。また,

思う壺,

の壺も,由来を異にするようだ。

つぼ(壺)には(嵌)まる,

は,

要所をついている,勘所を押さえている,
予想通りに物事が運ぶ,

といった意味で使われる(『広辞苑』)が,どちらかというと,

まんまと図に当たる,

という意味(『大辞林』)が近い。

つぼ(壺)をおさ(抑・押)える,
つぼ(壺)を心得ている,
つぼ(壺)をはずす,
つぼ(壺)をつく,
笑いのつぼ(壺),

等々の「ツボ」は,

http://yain.jp/i/%E5%A3%BA%E3%82%92%E6%8A%91%E3%81%88%E3%82%8B

で言うように,

物事の大切な所,勘所,

の意で,

「この『壺』は、鍼や灸、指圧なのの効き目のある所のことで、転じて、物事の勘所をいうようになった。」

という,いわゆる,

体にあるツボ,

つまり,

経穴,

を指す。経穴については,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E7%A9%B4

に詳しいが,

「経穴 (けいけつ) とは、中医学、漢方医学、経絡学の概念で、体内の異常に応じて体表の特定の部位に対応して現れるもので指圧、鍼、灸で刺激を与えることで体調の調整、諸症状の緩和を図るものである。一般には「ツボ」とも呼ばれる。筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome)におけるトリガーポイント(例えば腰痛の原因となる筋・筋膜内の好発部位)と大半が一致する。」

とか。

陰陽.png


https://oshiete.goo.ne.jp/qa/3292498.html

によると,「経穴」も,「つぼ」と訓ませるようだ。それには理由がある気がする。経穴もまた,

全身の体表に存在する、陥凹(かんおう)点、圧痛点,

等々を指すが,メタファとして,

壺,

といったに違いない。 「壺」は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/449713166.html?1494273038

で触れたように,

窪み,

に由来し,笙の匏(ほう),壺金(つぼかね)ともつながるところから見ると,(実際にあるわけではないが)窪みに準えての含意として,「壺」という言い方は,当を得ているのではあるまいか。だから,やはり,ツボも,

壺,

の仲間なのである。

ところが,

思う壺,

の「ツボ」は,「経穴」由来ではない。『日本語源広辞典』には,「ツボ」は,

賭博で采を入れて振る道具,

の意である。『デジタル大辞泉』では,

相手の壺にはまる,

をその用例として挙げる。しかし,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/o/omoutsubo.html

は,

「『壺』は,博打でサイコロを入れて振る藤や竹で編んだ『壺皿』のこと。熟練の壺振師は,思った通りの目を出せることから,こう言うようになった。『思う壺にはまる』という表現は,狙った通りになる意味の『壺にはまる』に合わせたものであるが,この『壺』は博打で用いる壺皿のことではない。」

つまり,「壺にはまる」の「壺」は,「経穴」のそれらしいのである。この辺り,しかし,壺の意が混じり合っているので,厳密な区別は難しいのかもしれない。では,

深く落ち込んだ状態や最悪な状況のこと,

を意味する,

どつぼ,

の「つぼ」はどうか。『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/20to/dotubo.htm

によると,

「どつぼとは深く落ち込んだ状態や最悪な状況を意味し、そういった状況になるという意味の『どつぼに嵌まる(はまる)』といった形で使われることが多い。どつぼはもともと関西エリアで肥溜め(肥溜めは野にあることから野壷ともいい、それが音的に崩れたものか?)のことをいうが、関西芸人が最悪な状況を肥溜めにはまった状況に例え、楽屋言葉としてどつぼというようになったとされる(壷に閉じ込められ、落ち込む様をどつぼと言い出したのが最初という説もある)。一般には1970年代末辺りからよく使われるようになる。」

とある。「凹む」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/410104152.html

で触れたように,「落ち込む」は,

「落ち+込む」

で,「穴に落ち込む」の意味から来ている。メタファとして使われている。その意味で,「どつぼ」の壺は,「窪み」の意味の壺から来ているとみていい。

心が穴に落ちている状態,

を言っている。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E7%A9%B4

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

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