2017年05月14日

きら


「きら」は,

キラキラと見えるもの,また光のきらめき,

の意であるが,また,その状態から,

雲母(うんも),

を指す。あるいは,モノとしての雲母から,「きら」という言葉ができたのかもしれない。雲母は,

きらら,

とも呼ぶ。『大言海』には,

「煌煌(きらきら)の約。うらうら,うらら。きはきは,きはは」

と載る。因みに,「雲母」の項,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B2%E6%AF%8D

に,吉良氏の,

「『吉良』の語源は、三河国守護足利義氏の末裔の氏族が支配した吉良荘(愛知県西尾市及び幡豆郡)から『きら』すなわち雲母が採れた事である、とされる。」

とある。

雲母.jpg

(雲母)


ところで,「きら」には,例の,

綺羅星の如く,

と使われる,「綺羅」と当てる「きら」がある。『岩波古語辞典』には,「綺羅」について,

「『綺』はあやぎぬ,『羅』はうすぎぬ」

とあり,『大言海』には,

「綺(かんはた)と,羅(うすぎぬ)」

とあり,『デジタル大辞泉』は,

「綺」は綾織りの絹布、『羅』は薄い絹布の意」

としている。いずれも当時最大級の「美しい衣装」の意である。

綺羅を磨く,

という言い回しは,華美を凝らす,という意であり,

綺羅星,

は,「綺羅,星の如く」で,「暗夜にきらきらと光る無数の星」を意味する。

ところで,『日本語源広辞典』には,「綺羅」について,

「中国語で,『綺(あや絹)+羅(うす絹)』が語源です。美しい衣装や,美しい衣服を着た人のことをいいます。キラは,キラキラ,キラメク,という日本語の語源です。キラキラ星などといいます。」

とある。しかし,「綺羅」は確かに華美ではあっても,輝くというのには程遠い。「きら」は擬態語ではあるまいか。『大言海』は,「きら」に,

華麗,

の字を当て,

「煌煌(きらきら)しき意」

とする。『大言海』には,「きらきら」は,

呵呵,

と当てて,「笑ふ聲」の意と,

煌煌,

と当てて,「物の煌めく状」を指す意と載る。

「からから」は,「ころころ」とも通じ,高笑いを指す,とあるが,『擬音語・擬態語辞典』には,

「きゃあきゃあというような笑い声」を指した例もある,とあるので,嬌声に近いのかもしれない。「きらきら」の形容詞形は,

きらきらし,

だが,『大言海』には,「きらきらし」は,

端麗,
端正,

と当てて,

「(キラキラは,清らきよらの約なるべし)容姿(すがた),厳かにて,麗し,威厳,正し」

の意味を載せ,

煌煌,

と当て,

煌めく状,

の意とする。後者から,光り輝く意の,

きらめく,

になるし,前者からは,『岩波古語辞典』に載る,「立派で輝くばかりである意(古くは容姿について言うことが多い)」である,

きらぎらし,

に通じるようである。「きらきらし」について,『日本語源大辞典』は,光り輝く意と,容姿,大度が整っている意を合わせて,

「語根『きら』は,物が瞬間的に輝くさまを表し,『きらきらし』はそれを重ねて形容詞化したもの。人物の容姿・態度・性格,建物の様子などについて,その美しさを表すのに用いられる。『書記-允恭二三年三月』『霊異記-中・三』で『佳麗』『端正』の訓に『きらきらし』があてられているしころなどから,整った荘厳な美しさと考えられる。」

と,語源について,書く。こうしてみると,この「きらきらし」の「きら」は,

綺羅,

ではないか,と思えてくる。『擬音語・擬態語辞典』は「きらきら」の項で,

「輝く意の『きら』は,『きらめく』『きかつく』『きらびやか』や,『ぎんぎらぎん』等の語が派生している。但し,『綺羅』は美しい衣服のことで,『綺羅,星の如し』は,美しい服の人が居並ぶ様子。『綺羅星』で輝く星とするのは誤解から生じた。」

とし,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B6%BA%E7%BE%85

も,「綺羅」の項で,

「綺は綾織りの絹織物の意。羅は薄織りの絹織物の意。美しい衣服全般を指す。上記の意味から、美しい衣服で着飾っている人を指す。衣服だけでなく、権力者や優れた人に対しても用いる。上記のような人々が星のように多く集まっているのを形容して、『綺羅、星のごとく居並ぶ』と言う。『綺羅星のごとく』と綺羅と星をつなげて言うのは誤用であるが、現在では『綺羅星』と独立した単語として用いられる例も多数見られる。」

しかし,どうも,「きら」は,

擬態語としての「きら」,

綺羅の「きら」と,

とが,まじりあってしまったのではないか。「きらきらし」に,

容姿,

の意味があり,「きらぎらし」では,

容姿が整って美しい,
光り輝いている,
きちんとしている,

という意味が重なっている。「綺羅,星の如く」とは,

輝く意,

威厳の意,

とが含まれていておかしくはない。誤用というより,必然である。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B2%E6%AF%8D
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)


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