2017年05月27日

かんばせ


「かんばせ」は,

顔・容,

と当てる。

「カオバセの転」

とある(『広辞苑』)。

顔つき,容貌,

という状態表現の意から,

体面,面目,

という価値表現へと転じている。最近聞かないが,

何のかんばせあって相まみえん,

といった使い方をする。『日本語源広辞典』には,

「顔+馳すの連用形。馳せ(顔+心ばせ)」

とあり,

「顔の様子,顔つき,などの意です。転じて,面目」

とある。『日本語源大辞典』には,

カホバセの義(大言海),
カホハシ(名言通),

の二説を載せるが,『大言海』は,

かほばせの音便,

とし,「かほばせ」の項には,

ころばせの語源をみよ,

とある。「こころばせ」の項には,

「心馳の義。心の動きの状を云ふ。こころざしに同じ。類推して,顔様(かんばせ),腰支(こしばせ)など云ふ語あり。かほつき,こしつきにて,こころばせも,こころつきなり」

とある。

心の向かうこと,心ばえ,こころざし,

という意味になる。心ばえについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163582.html

「映え」はもと「延へ」で,外に伸ばすこと。つまり,心のはたらきを外におしおよぼしていくこと。そこから,ある対象を気づかう「思いやり」や,性格が外に表れた「気立て」の意となる。特に,心の持ち方が良い場合だけにいう,という意味であった。

は(馳)せ,

は,

ハシリ(走)と同根,

とある。

走るように早く行く,

という意味で,

心を馳せる,

という意味で使う。だから,

「心+馳せ」

で,「心の動き」を言う(『日本語源広辞典』)。しかし,そういう状態表現から,

心のゆきとどくこと,たしなみのあること,

といった価値表現へと転ずる。『日本語源大辞典』は,

「性格・や性質にもとづいた心の働き,人格を示すような心の動き,才覚,気転の程を示すような心の動き」

と意味を載せる。

心が先へと走る,

という心の状態,働きが,

先へ先へと気(配慮)が回る,

と,そのもたらす効果というか,価値を指すように転じたというのがよく見て取れる。「心ばえ」は,

その性格がおのずと外へ出る,

と言っているのに対して,「心ばせ」は,

その振る舞いが外へ出ている,

ということだろうか。「かんばせ」は,そういう様子だと言っていることになる。

「かほ(顔)」について,『岩波古語辞典』は,

「表面に表し,外部にはっきり突き出すように見せるもの。類義語オモテは正面・社会的体面の意。カタチは顔の輪郭を朱にした言い方」

としているが,『大言海』は,「かほ」を,

姿形,

と当てて,「なりすがた」の意と,

顔,

と当てて,「顔面」の意とに分けている。「顔」で提喩的に,その人全体を表現する,という意味になる。

もともと「顔」自体に,「顔面」の意以外に,

体面,

という意味を持っているが,「かんばせ」と言ったとき,「顔」で何かの代表を提喩するように,

そのひとそのものの,

提喩でもある使い方になっているのではあるまいか。その意味で,

オモテ,

とは言い得て妙である。

中将.jpg

中将


参考文献;
http://museum.city.fukuoka.jp/archives/leaflet/306/index.html
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
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