弓矢の名称については,「はず」
http://ppnetwork.seesaa.net/article/450205572.html
で,既に一部触れた。
江戸時代の弓矢(和弓)
弓は,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%93_(%E6%AD%A6%E5%99%A8)
では,
「日本の弓は三国志の魏志倭人伝も記しているように長弓で7尺前後、弓幹の中央より下を握りの位置とするのが特徴である。既に縄文時代に漆を塗った複合弓と丸木弓とが併用され、鏃には主に黒曜石を使っていた。」
という。矢は,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A2
で,
「縄文時代までは石の他、鮫の歯、動物の骨や角などで作られていたが、弥生後期には急速に鉄製(鉄鏃)に変わっている。」
とある。「矢」は,
箭,
とも当てる。「矢」と「箭」の違いは,中国由来で,
「(函谷)関より東は矢,西は箭といふ」(『字源』)
「函谷関より西の方言」(『漢字源』)
とある。つまり,戦国期の秦は「箭」と呼び,それより西の国々では「矢」と呼んだということだろう。
『大言海』の「矢」の項には,
「遣りの義,音転して射るの語あり」
とある。確かに,「射る」の語源説に,
遣る,
とする説があり,
「矢を敵方へヤルの音韻変化で,イルとなった」
とある。ただ,『日本語源広辞典』の「矢」の項には,
「『イ・ヤ(射る・遣る)の語幹』です。イヤ>ヤで,弓で射て遣るものの意です」
とあるので,「射る」行為があって,「矢」になったのか,「矢」で射るから矢になったのかは,ちょっと微妙かもしれない。『日本語源大辞典』には,
ヤリ(遣)の義(名言通・大言海),
ヤル(遣)の義(日本釈名・日本声母伝・天朝墨談),
の「遣」る系以外にも,
ヤ(破)の義(東雅),
ヤブル(破)の義(古今要覧稿・言葉の根しらべ),
ハヤ(早)の義(言元梯),
竹を並べたところが胡簶(やなぐい)に似ているところから,ヤナの反(名語記),
イヤル(射遣)の義(言葉の根しらべ),
イヤリ(射遣)の義(日本語原学),
イル(射る)の転,イラの約(和訓集説),
射る時の音からか,また,ハ(羽)の転か(和訓栞),
当たるか当たらぬかはさだめがたいところから,疑問詞のヤ(国語本義),
と諸説あるが,
射る,
遣る,
行為とのかかわりが深い。「矢」から「射る」になったのか,「射る」から「矢」になったかが,見極め難いが,
射るから遣る,
というよりは,
遣るために射る,
であることから考えると,「遣る」が先,なのかもしれないが。。。
「弓」の語源を考えると,その辺りが,ますます混濁してくる。『大言海』は,「弓」について,
「ユは射(い)と通ず。射る物の意と云ふ」
とある。
しかし,『日本語源広辞典』は,二説載せる。
説1は,「ユビ(指)の音韻変化」で,指に当てて引くものの意,
説2は,「ユ(射る)+ビ(もの)の変化>ゆみ」で,射る道具,
とある。いずれも,「射る」行為に焦点を当てている。しかし,『日本語源大辞典』には,「射る」以外にも,弓の形態から見る説がある。
ゆがんでいるところから,ユガミの中略(日本釈名),
ユはユガム(歪)の意のユ,ミは身の意か(国語の語幹とその分類),
タルミの上略か(類聚名物考),
木をたゆめて作るところから,タユムのユムの転か(古今要覧稿),
タユミ(撓)の義(言元梯),
たゆみやすいところからか(和句解),
ユルミ(緩)の義か(名言通),
「ゆみ」の形状の「たわめる」「たゆめる」から来たという説に魅力がある。「遣る」ために射るのが,「矢」なら,「射る」ために「たわめる」のが「弓」の方が,自然な気がする。
ちなみに,「ゆんで」は,
弓手,
で,左手を指す。では右手はというと,
「右手には手綱を持つ。因りて,右手を馬(め)手と云ふ」(大言海)
が,当然,
矢手,
とも言う。
参考文献;
http://ecoecoman.com/kyudo/item/yumi_meishou.html
http://dictionary.goo.ne.jp/jn/222435/meaning/m0u/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%93%E7%9F%A2
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
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今日のアイデア;
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