2017年06月07日

二つ返事


「二つ返事」は,『広辞苑』によると,

「ためらうことなく,すぐ承諾すること」

という意味で,

二つ返事で引き受ける,

という使われ方をするが,『デジタル大辞泉』には,

1 「はい」を二つ重ねて返事をすること,

とあり,次いで,

2 気持ちよく、すぐに承諾すること,

と載り,本来は,ただ,

「はい」を二つ重ねた,

という状態表現であったものが,

すぐ承諾する,

という価値表現へと転じたものだと見ることができる。

『デジタル大辞泉』には,

「文化庁が発表した平成23年度『国語に関する世論調査』では、『快く承諾すること』を表現するとき、本来の言い方とされる『二つ返事』を使う人が42.9パーセント、本来の言い方ではない『一つ返事』を使う人が46.4パーセントという逆転した結果が出ている。」

とある。つまり,

二つ返事,

の価値表現が,あまりいい意味でないとというふうに受けとられるようになったために,代わって,

一つ返事,

という,ただ,

「はい」と一回返事する,

という状態表現にすぎないものを,

快く承諾する,

という価値表現へとシフトさせた,ということになる。その背景を伺うに足る質問が,

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1413357754

に,

「二つ返事で快く引き受けてもらった といいますが、なぜ一つ返事ではないのでしょうか?『はい はい』とか『Yea Yea』は相手を小ばかにした、不真面目な言い方というのだと思うのですが。」

という質問に見ることができる。回答は,

「『はい』で済むところを『はい、必ず』とか念を押すようにOKするのが二つ返事で引き受けること。これは良い意味です。
『はい、はい』は確かに不真面目な言い方です。これは厳密には『重ね言葉』だと思われます。なぜ重ね言葉が嫌われるかというと、お葬式での忌み言葉を連想させるからでしょう。葬式では『くれぐれも』とか『たびたび』など、二回繰り返す言葉が禁じられています。不幸が続くといけませんから。つまり、理想の二つ返事は、同じ意味のことを違う表現で繰り返すことなのです。」

となっている。既に回答者自体が,「はい,はい」を,貶めている風潮の中にあると見えてなかなか,この回答は嗤えるのではないか。

http://yaoyolog.com/%E3%80%8C%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%81%A4%E8%BF%94%E4%BA%8B%E3%80%8D%EF%BC%9F%E3%80%8C%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%81%A4%E8%BF%94%E4%BA%8B%E3%80%8D%EF%BC%9F%E3%81%A9%E3%81%A1%E3%82%89%E3%81%8C%E6%AD%A3%E8%A7%A3/

でも,

「アンケートを取ってみると、おおよそ半数の人が間違いているようで、その原因としては『返事は一回』と、しつけられて育った印象が強くて、『はいはい』と二回返事をするのはイメージ的に悪い事と感じるのではないかとの事。…ですが、二つ返事の意味としては『快諾』という意味で、本来の意味としては、普通に一度返事するだけでなく、前のめり気味に強調しているイメージになるようですね。同じ二つ返事でも『ハイ、もちろんです』や『はい、了解です!』と言われれば、確かに気持ち良く聞こえますよね。」

も,同じ罠にはまっている。

『日本語源広辞典』には,

「『ハイ,ハイ』と気持ちよくひきうける」です。ためらうことなく即座に返事することです。」

とある。これは,「はい,はい」を言う文脈が違うのだ。嫌々,「はい,はい」というのは,

「はい,は一度でいい」

と返される「はい」であり,子どもが「おやつ」と言ったとき,母親が,

「はい,はい」

と,軽く受け流すときは,たぶん苦笑が出ている。そして,これを頼むぞ,と信頼する上司から言われたとき,

「はい,はい,」

と,テンポ良く,連発する時は,快諾である。文脈次第で変わる。と考えれば,いつの間にか,

ハイは一度でいい,

という文脈を共有するようになった,ということなのではないか。

『大言海』の「二つ返辞」は,

「言下に承諾すること,喜むで承知すること」

とある。あるいは,

「はい,はい」

と,「はい」を重ねることではなく,

言下に承知すること,

を指して,

二つ返事,

と言ったのかもしれない。それは,

イエス,いくつでもイエス,

と,告白に返事する気持ちと同様の,心の声といっていいのかもしれない。しかし,そこには,

はい,はい,

という返事が,

ふざけやおちょくる意図があるとは受け取らないという文脈があったことだけは間違いない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

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