2017年06月12日

せせらぎ


「せせらぎ」は,古くは,

セセラキ,
セゼラキ,

とも言うらしい。

浅い瀬などを流れる音,またそういう場所,

を意味する。擬音語からきているのではないか,と思わせる。『岩波古語辞典』には,

せせらき,

で載る。狭い所を,

せせり,

というらしい。楊枝で「せせる」の「せせり」である。『岩波古語辞典』には,「せせり」として,

狭い所を,無理につつきほじくる,
突き散らしてあさる,
あれこれとからかいもてあそぶ,

という意味が載る。あるいは,「相手を鼻先であしらって笑う」意の,

せせら笑う,

の「せせら」は,ここから来ているのかもしれない。

せせらぎ.jpg


『大言海』の「せせらぎ」の項には,

せせらぐの名詞形,

とあり,「せせらぐ」は,

さざらぐの転,

とあり,

水浅くさざなみ立てて流る,

とある。「さざらぐ」は,

潺,
湲,

の字を当て,

水の音のサザを活用せしむ(薄らぐ,柔らぐせ),

として,

水,サザとして流る,
水,砕けて,流る,

意であり,「さざる」の項で,

潺,
湲,

の字を当て,

水音,サザを活用せしむる(長るる,熱(あつ)るる),

として,

さざる,

に同じ,とする。どうやら「せせる」は,別で,『大言海』は,

迫(せ)り迫(せ)るの略,

の,「つつく」意と,いまひとつ,

静岡県にて,玩(もてあそ)ぶを,セセルと云ひ,又,玩具(せせりもの)とも用ゐる,

とある「せせる」の二系統があることを示す。「せせらわらい」は,後者から来た,

迫(せせ)り笑ひの義,

ということになる。

閑話休題。

「さざ」については,「さざめく」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/450667068.html?1496865415

の項で少し触れたが,「さざ」は,

水の音,

を指す擬音語で,『大言海』には,

さざらぐ,さざるる,さざら波,さざれ波など,これより出ず。万葉集に,沙邪禮(さざれ)浪とあれば,第二のサは,濁る。水をザッとかけると云ふのも,是なり,

とある。「ざっ」についても,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/450667068.html?1496865415

で触れた。擬音語で語源が尽きているようだが,そう簡単ではなく,『日本語源広辞典』は,

「瀬+さやぎの音韻変化」

とするし,『日本語源大辞典』にも,「さざらぐ」の転とする『大言海』説以外に,

セマリセマル(迫々)の義から(名言通),
小流の水の音から出た語(俗語考),
セセラギはササラミ(小水)の義(言元梯),
セセラキのセセは瀬々,ラキはラヤ,ケミの反(名語記),

と,いろいろある。しかし,やはり,水音から来ている,と見たい。『日本語の語源』には,

「水が音をたてて流れることをササラグ(潺ぐ)といった。<心地よげにササラギ流れし水>(更級)。
 名詞形のササラギ(潺ぎ)は母韻交替[ae]をとげてセセラギ(細流)に転音し,サラサラと音をたてて流れる浅瀬のことをいう。<小鮎さ走るセセラギに>(謡・鵜飼)。
 セセラギ(細流)は『ラ』が強化の子音交替[rn]をとげてセセナギ(細流。小溝)に転音し…ている。」

とある。やはり,『大言海』の「さざ」という擬音から来ていると見なすのが説得力がある。

参考文献;
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前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
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