2017年06月16日

ジャコメッティ


国立新美術館の「ジャコメッティ展」

http://www.nact.jp/exhibition_special/2017/giacometti2017/

を観てきた。

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いまさら,ジャコメッティでもないかもしれないが,僕なりに,いま感じたことを書きとめておきたい。こと改めて言うのも恥ずかしいが,「立つ」ということを考えていた。日本語の「立つ」については,

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(女性立像)


http://ppnetwork.seesaa.net/article/399481193.html?1497439641

http://ppnetwork.seesaa.net/article/404789268.html

で触れたことがあるので,少し重なるが,「立つ」の語源は,「タテにする」「地上にタツ」らしい。

「立」の字は,

大+-線(地面)

で,

人が両手両足を広げて地上に立つ形の象形,

を意味する。立つは,人にとって特別の意味があるらしい。だから,「立つ」には,目立つ,際立つニュアンスがある。しかし,立つことで,周りから,

はっきり姿が目立つ

という以上に,当事者にとって,視界が変わる,ということが大きい。ある意味で,立ったときから,ものを見る視界が変わったのは,何か,ただ視界が変っただけではないような気がしてならない。

言葉を覚えたころに,空中を飛ぶ夢を見る,とはユンギアンが書いた中で見たことだが,それは,ものをメタ・ポジションから見る,という意味でもある。立つこととそれは関係あるのではないか,とひそかに思う。

キルケゴールの,

人間は精神である。しかし,精神とは何であるか?精神とは自己である。しかし,自己とは何であるか?自己とは,ひとつの関係,その関係それ自身に関係する関係である。あるいは,その関係に関係すること,そのことである。自己とは関係そのものではなくして,関係がそれ自身に関係するということである。

という,自分に対するメタ・ポジションを取るのも,それとつながる。

右側の頭頂葉の「角回」という部位を刺激すると,被験者の意識は2メートルほど舞い上がり,天井付近から,「ベッドに寝ている自分」が見える,という実験が報告されている。

幽体離脱といわれる現象である。その部位がどうやれば刺激されるのかはわからないが,この実験を紹介していた池谷博士は,健康な人でも30%は幽体離脱を経験すると言い,

「有能なサッカー選手には,プレイ中に上空からフィールドが見え,有効なパスのコースが読めるというひとがいます。こうした俯瞰力」

も幽体離脱と似ている,と指摘している。さらに,

「客観的に自己評価し,自分の振る舞いを省みる『反省』も,他者の視点で自分を眺める」

という能力も,いわば,幽体離脱の延長というふうに言えると指摘している。

ちょっと話が横にずれた,ジャコメッティの立像は,人が,

立つ,

そのものを形象化している。象徴ではなく,立つことそれ自体の顕現である。そこに実存だの,なんだのと意味を付与することには意味がない。「立つ」行為自体の現前化そのものだからだ。あるいは,

グランディング(grounding),

そのものの形象化でもある。敢えて言うと,

大地に立つ,

ということの顕現でもある。それは,二足歩行の,

ホモ・サピエンス・サピエンス(Homo sapiens sapiens)

であることの顕現である。人の容姿も意味もすべてはぎ取った後,そこに顕れるのは,

立つ,

という行為である。しかしすべてを剥ぎとったはずなのに,「犬」「猫」そのものはあるのに(「牡犬」「牝猫」ではない),

「女の立像」
「ベネツィアの女」
「3人の男のグループ」
「小像(女)

と,(今回観た範囲でいえば)ほとんど性別だけが残るのはなぜだかわからない(「3人の人物しひとつの頭部」「7人の人物とひとつの頭部」と例外はわずかだ)。なぜ,

立つ人,

ではないのだろう。

当然,歩く像も,その「立つ」延長線上に,

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(歩く男)


(二足で)歩く,

という行為そのものの顕現である。しかし,この場合も,「歩く男Ⅰ」「歩く男」と性別がある。

参考文献;
池谷裕二『脳には妙なクセがある』(扶桑社)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

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posted by Toshi at 04:22| Comment(0) | 展覧会 | 更新情報をチェックする
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