2017年07月12日

夢解釈


ユージン・T.・ジェンドリン『夢とフォーカシング―からだによる夢解釈』を読む。

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サブタイトルに,「からだによる夢解釈」とあるのが,本書のすべてを説明している。

「本書のねらい」で,著者は,

「伝統的な夢『解釈』の方法は,1つの理論を応用してある結論に達するのです。私はこのような夢解釈の方法を否定します。出てきた結論は,仮説にすぎません。その仮説に応じて,夢を見た人に具体的に,体験的に何かがひょいと出てこないかぎり,解釈にしたことにはなりません。そこで,私はこうしたさまざまの異なった視点を質問形式に組みかえました。ゆっくりとからだのフェルトセンスに問いかけてみます。何も出てこなかったら,次の問いかけへと進むのです。
 フェルトセンスそのものが反応したときは,からだからの信号があり,緊張がほぐれ,フェルトシフトが起こります。こうして起こったからだのシフトは具体的では実感できますので,私がその解釈は本当なんですよ,あなた自身が夢を解釈したんですよ,とことさら説明する必要もありません。」

と述べ,ここでの夢に対するフォーカシングは,一人でもできるように工夫されている。

「フェルトセンスは,怒り,恐れ,悲しみといった普通の感情ではありません。こうした見覚えのある感情に加えて,夢は分類できない,独特の感じをあなたに残してくれます。そのことを頭で考えることはできません。フェルトセンスは漠然とした,全体的な,わけのわからない,奇妙な,気にかかる,ぼんやりしたからだの感じです。
 私たちの方法は,そこに,つまりフェルトセンスに直接問いかけるのです。そして新しいものが浮かんでくるかどうか待ってみるのです。」

この方法には,

第一に,「1つの理論や信念の体型に限定されていないことです。」
第二に,「この方法の根本的な基準はあなたの中に何かが開かれてくる,あなたの自身のからだの感じにあることです。解釈は,あなたが気づき,つまり,からだのフェルトシフトを感じたときにだけ確かなものになるのです。」
第三に,「この方法は教えることができ,また,学習することができることです。」

という特徴がある,と著者は自信ありげである。確かに質問は,定式化されている。質問は5段階に分かれる。

◆連想を捉えるための方法
①何が心に浮かんできますか(夢にどんな連想をしますか,何が心に浮かんできますか等々)
②どんな感じがしますか(夢の中でどんな感じがしましたか,夢にもった感じは等々)
③きのうのことは(昨日何をしましたか,昨日のことを思い出してください等々)
◆場所・あらすじ・登場人物という物語をつくる3つの要素
④場所は(夢に出てきた主な場所は,そこから何を思い出しますか等々)
⑤夢のあらすじは(あらすじを要約,生活のどんなところと似ているか等々)
⑥登場人物は(夢の中の知らない人物は,その人物から何を思い出しますか等々)
◆登場人物と係るための3つの方法
⑦それはあなたの中のどの部分ですか(夢の中の他人はあなたの中のある部分を象徴しています,それは何等々)
⑧その人になってみると(その人物になってみる等々)
⑨夢の続きは(夢の最後の重要と思える光景を思い浮かべ,それを感じてください等々)
◆象徴・身体のアナロジー・反事実性など夢の(暗合を)解読するための3つの方法
⑩象徴は(夢の中のモノやコトの象徴,メタファーを考える)
⑪身体的なアナロジーは(身体に準えてみると等々)
⑫事実に反するものは(夢は何を変えたのですか等々)
◆成長における4つの次元
⑬子どものころのことは(夢に関連して,子どもの頃のどんな思い出が出てきますか等々)
⑭人格的な成長は(どんなふうに成長しつつありまいか,どんなふうに成長しようとしていますか等々)
⑮性に関しては(夢を,性的なものについてしたり,感じたりしていることの物語と考えると等々)
⑯霊性に関しては(夢は,創造的あるいは霊的な可能性について何か語っていませんか等々)

しかも,この質問は,

「夢をみた人が自分のからだに聞くためのものです。質問がからだの内部に届くようにしてください。質問はそこに向けてされるのです。1つの質問について,1分ほどかけてください。」

と,著者は言う。

「ただ,夢をみた人のからだだけが,夢を解釈できるのです。」

そのために,

「(質問によって)あなたの注意をからだの中へ向け,曖昧な感覚を感じてください。それを感じられたら,静かにその質問を内側に向けて問いかけ,待ってください。何が浮かんでくるかを見てください。」

この質問ステップは,ただ夢を解釈するだけではなく,自分自身の次への成長ステップにつながるものを見つけ出すところに主眼がある。

「何についての夢かを知るだけでは,まだ十分な解釈ではありません。私たちは,さらに先へ進むことができます。
 第2段階の目的は,夢から何か新しいものを得ることです。」

そういう著者自身は,

「すべての夢には,本当に役割があって新しいことを生み出すとは,私たちも科学的に確認したわけではありません。しかし,私はそう考えています。

として,

「夢解釈には2つの段階があります(ときには2つが一度に起こることもあるし,そうでないときもあります)。気づきが起こるとその夢が何について語っているか知ることができますが,それは,みんな以前から知っていたことかもしれません。それは,夢解釈の第1段階にすぎないのです。…第2段階…はどんな夢にも成功するとは限りません。それがうまくいくと,あなた自身の成長にとって新しい発見になるでしょう。」

なぜなら,

「有機体は,物質的なものだけを必要とする生物学的な機械ではありません。からだはコスミック・システムであり,概念を超えたいろいろな意味合いや,多様な方向性に富んでいます。人生の中では,私たちは『私たち自身であること』のほんの一部を成長させるにすぎません。
 成長していく方向は,あなたのからだでかんじられるものです。あなたが成長の方向を感じとり,その方向に沿って進むのに夢は役立つでしょう。」

ねらいは,

「目的は,あなた自身についていろいろ知ることではなく,成長すること」

であり,そのための夢フォーカシングであること,ここはぶれない。

著者自身は,このステップについて,

「このステップに理論は必要ありません。理論がここでは付録になっているのはそのためです。」

と,付録の「生きているからだと夢の理論」で述べている。あくまで,実践の書である,と言いたいらしいのである。

本書を通読して,正直のところ,物足りないと感じるところがある。それは,果たして,夢は,自分の人生について,何かを象徴したり,何かのアナロジーであったりするのか,という疑問である。所詮,夢は,自分の体験を記憶するための脳の機能に過ぎないのではないか,という思いがあるからだ。

しかし,反面,本書に惹かれたのは,あくまで,夢そのものではなく,夢を通して,

自分の中で起きている感じ,
あるいは,
起こっていた感じ,

に焦点を当て,自分自身がそこから何を得るか,というところにポイントを置くなら,それは,また別の,自分の今の感じ(フェルトセンス)を通して,自分自身を知り,そこに目覚めている意識していない自分の方向性を顕在化させる,という意味が見えてくる。そのとき,夢は,ただの自己理解と,自分の潜在的な方向性を感じとるための素材に過ぎなくなる。

それは,エリクソンが,クライエントに,

アネクドート(逸話),

を伝え,それをクライエント自身が勝手に解釈し,理解し,おのずと問題を解決していった,というそのアネクドートと似た役割を,夢に果たさせている,と解釈できなくもない。

参考文献;
ユージン・T.・ジェンドリン『夢とフォーカシング―からだによる夢解釈』(福村出版)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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