2017年07月13日

かぶと


「かぶと」は,

兜,
甲,
冑,

と当てる。

「軍陣としては,頭にかぶる部分である鉢とその下に垂れて首の部分を覆う錏(錣 しころ)からなる。鉢の頂を頂辺(てへん),通俗には八幡座とも言い,鉢の正面のところを真向(まっこう)という」

と,『日本語源大辞典』にはある。

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埴輪や古墳の出土品からも「かぶと」は見られ,

「古墳から出土する甲(よろい)には短甲と挂甲(けいこう)の2種があり,冑にも衝角付冑(しようかくつきかぶと)と眉庇付冑(まびさしつきかぶと)の二つがある。形の上で衝角付冑は短甲に,眉庇付冑は挂甲に属するものと思われる。しかし関東地方出土の挂甲着装武人の埴輪に見られるように,ほとんどすべてが衝角付冑をつけており,古代の2種類の甲と冑との所属関係はかならずしも固定的なものではない。むしろ,衝角付冑と挂甲がいっしょに用いられたことが多かったと考えるべきであろう」(『世界大百科事典 第2版』)

といった説明が見られる。

ところで,当てられる漢字,兜,甲,冑を見ると,「兜」の字は,

「白(人の頭)+儿(足の部分)にその頭を左右から包む形を加えたもの。頭を包むことに着目した言葉。甲冑の甲は,かぶせるかたいかぶとのこと。冑は,首だけ抜け出る同槙のいた屋のこと」

とある。「甲」の字は,

「もと,うろこを描いた象形文字。のち,たねを取り巻いたかたいからを描いた象形文字。かぶせる意を含む。」

とある。「冑」の字は,

「冑の原字は,上部の頭にかぶとを載せた姿と,下部の冒(かぶる)の字からなる。冑は『かぶる,かくすしるし+音符由』。頭だけ上部に抜け出るどうまきのこと。」

とある。『大言海』は,

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秀吉所用・伊達政宗が拝領(銀伊予札白糸縅胴丸具足)


「甲(よろい)の字をカブトに用いるは,誤りなり」

とするが,漢字の由来から見ると,「甲」「冑」ともに,「かぶと」の意がある。しかし,甲冑(かっちゅう)という言い方は,「甲(かぶと)」と「冑(胴巻)」のセットで,鎧を指すので,間違いとばかりは言えない。ただ『広辞苑』を見ると,「甲冑」で,「甲(よろい)と冑(かぶと)」と載せているし,『大言海』の「甲冑」の項を見ると,

「禮記,曲禮,上篇『獻甲者執冑』鄭注『甲,鎧也,冑,兜鍪也』

を引用しており,中国でも,甲は鎧,冑は兜鍪(かま)を指しているようだ。『岩波古語辞典』にも,

「『甲は,日本にかぶとと読むは誤りぞ。甲はよろひなり。冑はかぶとなり』〈燈前夜話〉。『冑,加布度(かぶと)。首鎧也』〈和名抄〉」

と載る。『日本語源大辞典』にも,

「『甲』は本来ヨロイを意味する字であるが,これをカブトと訓むのは,『華厳経音義私記』の『甲,可夫刀』(上巻),『被甲 上(略)可何布流,下可夫度』(下巻),『甲冑 上又為鉀字,可夫止』(上巻)にまで遡ることかできるが,本来,誤用である。」

と載り,さらに,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%9C

にも,

「元来、『甲』は鎧、『冑』は兜を表していたが後に混同され、甲が兜の意で用いられる事もある。なお、兜、冑ともに漢語由来の字であるが、現代中国語では頭盔の字が使われる(突盔形兜の『盔』である)。」

とある。因みに,「突盔形兜(とっぱいなりかぶと)」とは,

「室町時代末期頃に発生した頂部が尖った兜。筋兜を簡略するかたちで変化したもの。椎実形、柿実形、錐形、筆頭形等の鉢頂部が尖った形の兜を総称して突盔形ともいう。」

とある。ついでに,戦国時代の兜の大きな変遷は,需要が増え,合理的な製作方法が開発され,鉄板数片で半球状をつくる方法になったようである。しかもこの方が従来の縦矧板を鋲留する煩雑な製造法よりも堅牢だったという。

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閑話休題。さて「かぶと」の語源である。

『岩波古語辞典』には,

「朝鮮語で甲(よろい)をkap衣をotという。その複合語kapotを,日本語でkabutoとして受け入れたという。」

と載る。『大言海』も,

「頭蓋(カブブタ)の約転(みとらし,みたらし。いたはし,いとほし)。朝鮮語ににもカプオトと云ふ」

とある。確かに,朝鮮語由来という説は捨てがたいが,『日本語源広辞典』には,

「カブ(頭,被る,冠)+ト(堵,カキ,ふせぐもの)」

とする。『日本語源大辞典』も,

「『かぶ』は頭の意と考えるのが穏当であろうが,『と』については定説を見ない。」

としている。語源説を拾ってみても,

カブは頭の意(古事記伝),
カフト(頭蓋)の音義(和語私臆鈔),
カブブタ(頭蓋)の約転(言元梯),
カブト(頭鋭)の意(類聚名物考),
カブは頭。トは事物を意味する接尾語(日本古語大辞典),
頭を守る大切なものという意で,カブ(頭)フト(太=立派なもの)か(衣食住語源辞典),
カブツク(頭衝)の義(名言通),
頭にカブルものだから(日本釈名。箋注和名抄),
カブルトの約か(菊池俗言考),
カブルはカブル,トはヲトコ(男)の上下略か(和句解),
カブシトトノフの義(桑家漢語抄),
カウベフト(首太)の義(柴門和語類集),

等々。単純に,

「被ると」

という意味だったのではないか,と思いたくなる。文脈依存なのだから,兜をかぶりながら,

「被ると安全。。。」

と言ったような。

参考文献;
https://matome.naver.jp/odai/2133715851085504501
藤本巖監修『図説戦国変わり兜』(学研)
笠間良彦『図説日本甲冑武具事典』(柏書房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
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