2017年07月14日

さけ


「さけ」は,

鮭,
鮏,

を当てる。『広辞苑』を見ると,

「アイヌ語サクイベ(夏の食物)からとも,サットカム(乾魚)からともいう」

とある。いわゆる,

サケ目サケ科,

の,サケ,ベニザケ,ギンザケ,マスの一部の総称,である。

『日本語源広辞典』も,

「『アイヌ語sakipe秋』です。シャケからサケへ変化した語です。秋の魚の意です。方言アキ(秋)+アジ(味)という語があり,語源が似ています。」

とアイヌ説をとる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/sa/sake_sakana.html

も,諸説挙げた上で,

「アイヌ語で『夏の食べ物』を意味する『サクイベ』や『シャケンベ』は,魚の『マス』を意味する語に通じることや,鮭の大きなものを古語では『スケ』と言い,『shak』の部分は『スケ』や『サケ』の音に変化することは十分に考えられることから,アイヌ語説は有力とされている。」

さけ.jpg



確かに,アイヌ語由来というのは,頷けなくもない。『大言海』も,

「かたこと(慶安,安原貞室)『此魚,子を生まんとて,腹のサケはべる,とやらむと云へり』,和訓栞さけ『鮏の字を讀むは,云々,裂けの義。其肉,片々,裂けやすし,と云へり』,共に,いかが,古語に,此魚大なるを,スケと云へり,参考すべし。」

と,「裂け」説に疑問を呈し,「スケ」説を取っている。因みに,『大言海』によると,「すけ(鮭)」は,

「古へ,鮭の大いなるものの称」

で,常陸風土記の注に,

「鮏祖は,鮭の親の義にて,鮭の大いなるものを云ふと云ふ」

とあるとし,更に新編常陸風土記の,

「常陸國南部,及び,松前の土人は,鮭の大なるを,佐介乃須介と云ひ,鱒の大なるものを痲須乃須介とと云ふ。彼土人の説を聞きたるなり。本國にても,往古は,此称ありしこと,明らかなり。魚鳥平家に,鮭大介鰭長と云へる名を設けしも,此塩湖りての事ぞと思はる」

を引く。

http://zatsuneta.com/archives/001763.html

も,

「古く東日本で『スケ』と呼ばれていたものから転訛したという説。身が簡単に裂けるから『サケ』の名が付いたという説。アイヌ語の『シャケンペ』に由来する説がある。アイヌ民族はサケを『神の魚』として尊んだという。」

としている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%B1

によれば,

「日本系サケと若干のマス類は、先史時代から漁獲の対象となってきた。かつて山内清男が縄文文化が東日本でより高度に発達した理由をサケ・マス資源の豊富さに求める説を唱えた。この説に対し当初は批判が多かったが、その後の発掘調査において東日本各地の貝塚でサケの骨が発見されるにおよび評価されるようになった。なお、平安時代の「延喜式」にも日本海沿岸諸国からの河川遡上魚の献上の記事が載せられている。」

とあり,東日本中心,ということが,いっそうアイヌ説に重みを持たせる気がする。なお,

http://www.nihonjiten.com/data/45609.html

は,

「『夏の食物』を意味するアイヌ語『サクイベ』・『シャケンべ』→『シャケ』→『サケ』と転訛したとする説、身が『裂(サケ)』やすいことに由来する説、肉の色が『酒(サケ)』に酔ったように見えることに由来する説、赤と同語源である『朱(アケ)』色が転じた説など、他にも諸説ある。」

とした上で,「鮭」「鮏」の漢字表記について,

「『鮭(サケ)』は国訓であり、『桂』の花が咲く頃に、川を上ってくることから『圭』の字を当てたとする説がある。本来は『鮏』と書き、生臭い意を表す。」

としている。しかし,

http://zatsuneta.com/archives/001763.html

によると,

「漢字の『鮭』は本来『フグ』を意味する。『圭』が『怒る』を表し、『怒ると腹がふくれる魚』=『フグ』となったという説がある。他にも説があり、シャケは元来『魚へんに生』で『鮏』と書いていた。これはサケが生臭い魚であったことに由来する。しかし、この漢字ではイメージが悪いため、『鮏』によく似た『鮭』に替えたという。」

の説を載せる。『大言海』も,

「鮭(けい)は,河豚(ふぐ)なり,鮏(せい)は,魚臭なり,ともに当たらず」

としている。『字源』には,「鮭」は国字,とあり,「鮏」(セイ,ショウ)の字のみ載せる(「なまぐさし」と)。『漢字源』は,「鮭」(ケイ,ケ)の字のみ載せ,「ふぐ」と「さけ」の意として,

「魚+音符圭(三角形に尖った,形がよい)」

と解字する。この辺りは,これ以上確かめようがない。

『日本語源大辞典』の諸説を整理しておくと,

肉が裂けやすいところから,サケ(裂)の義(日本釈名・滑稽雑談所引和訓義解・和訓栞・言葉の根しらべの),
稚魚のときから全長一尺に達するまで,胸腹が裂けているところからサケ(裂)の義。また,肉の赤色が酒に酔ったようであるところからサカケ(酒気)の反(名語記),
産卵の際,腹がサケルところからか(かた言),
海から川へサカサマにのぼるところから(和句解),
肉に筋があってほぐれやすいところから,肉裂の略か(牛馬問),
肉の色から,アケ(朱)の転(言元梯元),
セケ(瀬蹴)の義(日本語原学),
鮭の大きいものを言う古語スケと関係がある(大言海),
スケと同根,スケは夷語か(日本古語大辞典),
夏の食物の意のアイヌ語サクベイからか(東方言語史叢考=新村出),
アイヌ語シャケンバ(夏食)が日本語に入ったもの(世界言語外説=金田一京助),

等々。やはり,古代の生活史から考えても,サケの実態から考えても,アイヌ説が有力である。因みに,いつも異説を立てる『日本語の語源』は,

「秋,川をさかのぼって上流の砂底に産卵した後,死ぬ。その語源はサカノボル(遡る)魚で,その省略形のさか魚が,サケ魚・サケ(鮭)・シャケに転音したと推定される。」

としている。

参考文献;
http://www.zukan-bouz.com/sake/sake/sake.html
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

ラベル:さけ
【関連する記事】
posted by Toshi at 04:48| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください