2017年07月22日

破調


根津太一展(報美社主催)に伺ってきた。

根津太一.jpg


全体に静かなたたずまいである。穏やかと言ってもいい。すべての作品は,

みえない糸で繋がる命,

と題されている。僕の好みでは,案内ハガキにあった,

「みえない糸で繋がる命(循環 大河)」

と題された作品に惹かれてお邪魔したようなものである。でも,写真と作品は,別物で,作品に両サイドから光を当てて撮ったもの,と作家はおっしゃった。輝いている部分は照明の効果で,現実の作品は,沈んだ色遣いである。それはそれで悪くはない。

今回僕がいいと思ったのは,入口右手に並んでいた,

みえない糸で繋がる命(赤茶),
みえない糸で繋がる命(赤黒),
みえない糸で繋がる命(黒赤),

と題された作品群で,とりわけ,

みえない糸で繋がる命(黒赤),

が僕には好印象であった。それに並んでいた,

みえない糸で繋がる命(層Ⅱ),
みえない糸で繋がる命(層Ⅲ),

もいい。しかし,「Ⅰ」にあたるらしい,

みえない糸で繋がる命(層),

のコンパクトなものの方が,僕には落ち着いて見えた。

全体として,落ち着いた雰囲気の中で,

みえない糸で繋がる命(赤茶),
みえない糸で繋がる命(赤黒),
みえない糸で繋がる命(黒赤),

が破調に見えた。ふと,

美は乱調にあり,

という,瀬戸内寂聴の,甘粕事件で大杉栄と共に虐殺された伊藤野枝の生涯を描いた小説のタイトルを思い出した。この言葉は,大杉栄の,

「美はただ乱調にある。階調は偽りである。」

という言葉に由来するらしい。正確には,

「生の拡充の中に生の至上の美を見る僕は、この反逆とこの破壊との中にのみ、今日生の至上の美を見る。征服の事実がその頂上に達した今日においては、階調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。階調は偽りである。真はただ乱調にある。」(「生の拡充」)

という文脈らしい。ついでながら,この言葉は,

http://d.hatena.ne.jp/elmikamino/20070302/1172855740

によると,フランシス・ベイコンの,

There is no excellent beauty, that hath not some strangeness in the proportion.

に出自があるらしい。

「プロポーションがちょっと乱れたり、歪んだり、傾いたり(some strangeness)しているところにこそ、本当の美(excellent beauty)がある」

という考え方らしい。たまたま,

「美はただ乱調にある」

を思い出したのは,全体に静謐な雰囲気に,僕なりにちょっと反発してみたくなったせいかもしれない。

命はゆらぎ,

であると思う。僅かなゆらぎから始まったビックバンにわれらの命が由来するなら,ゆらぎがなくては,ならない。あるいは,

そよぎ,
もつれ,

でもいい。それを,

破調,

と呼ぶなら,乱調と言わないまでも,破調が欲しい。その意味で,破調の窺える,

みえない糸で繋がる命(赤茶),
みえない糸で繋がる命(赤黒),
みえない糸で繋がる命(黒赤),

の中でも,

みえない糸で繋がる命(黒赤),

をまず指を折る。次いで,

みえない糸で繋がる命(赤茶),

を取る。沈んだ底から,ほとばしる何かを抑える体がある。

参考文献;
大杉栄『生の拡充』(http://www.aozora.gr.jp/cards/000169/files/2312_13472.html


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 04:31| Comment(0) | 個展 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください