2017年07月26日

とんでもない


「とんでもない」は,『広辞苑』には,

「『途(と)でもない』の転」

とあり,

とても考えられない,思いがけない,途方もない,
(相手のことばを強く否定して)そんなことはない,

と意味が載る。後者はともかく,

とても考えられない,
思いがけない,
途方もない,

は,同じ意味ではない。「途(と)でもない」の,

途,

は,

みち,
道筋,

という意味である。

帰国の途につく,
途中,
前途,

という使い方をする。この「途」は,漢字「途(漢音ト,呉音ド)」から来ている。意味は,

みち,

である。

「辶(行く)+音符余(おしのばす)」

で,長く延びる意を含む,とある。とすると,

道でもない,

という原意から,上記の意味の外延を,

とても考えられない→思いがけない→途方もない→そんなことはない,

と,広げていく,ということになる,と推測される。

『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/to/tondemonai.html

も,

「とんでもないは、『途でもない(とでもない)』が変化した語。『途』は『道』『道程』の意味 から、『手段』や『物事の道理』も意味するようになった語で、同じ用法の和製漢語には『途轍』『途方』がある。その『途』に否定の『無い』をつけ、『道理から外れてひどい』『思ってもみない』などの意味で『途でもない』となり、『とんでもない』となった。『思いがけない』の意味で『飛んだ』という語があるため、とんでもないの語源を『飛んでもない』とする説もある。しかし、とんでもないが『飛んだ』の否定であれば,『思いがけなくない』『当たり前』といった意味になるため誤りで,反対に『飛んだ』を『とんでもない』の語源と関連づけることも間違いである。」

とする。また,『江戸語大辞典』も,

「上方語『とでもない』を移入後,撥音化したものか。一説に,『飛んだ』の強調形とするには従い難い」

とし,

つがもない(埒もない,途方もない,ばかばかしい),
そでない(しかるべきでない,不都合である,尋常でない),

と同義,とする。しかし,「けしからん」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/452101005.html?1500925250

で触れたように,『岩波古語辞典』は,「けしからず」を,

「『け(怪)し』の普通でない意を更に打ち消して,普通でないどころではない,と強調した表現。平安時代には,ケシカリの形はほとんど見えず,中世以後にはケシカリとケシカラズとがほぼ同じ意に使われた。現代語のトンダ・トンデモナイの類」

と,解釈していた。つまり,「とんでも」の否定と見なしていた。さらに,

https://dictionary.goo.ne.jp/jn/162083/meaning/m0u/

も,

「『とんでも』に『ない』の付いた形だが、『とんでも』が単独で使われた例はなく、『とんでもない』で一語と見るのがよい。とすれば、『ない』を切り離して『ありません』『ございません』と置き換えて丁寧表現とするのは不適切で、丁寧に言うなら『とんでもないことです』『とんでもないことでございます』『とんでものうございます』と言わなければならない。しかし、最近は『とんでもありません』『とんでもございません』と言う人が多くなっている。
平成19年(2007)2月文化審議会答申の『敬語の指針』では、相手からのほめ言葉に対して謙遜しながら軽く打ち消す表現として『とんでもございません(とんでもありません)』を使っても、現在では問題ないとしている。
なお、『とんでもない』には『もってのほかだ』と強く否定する意味もあり、『とんでもないことでございます』を使う場合は注意が必要と『指針』は述べている。

「とんでも」の否定と見なしている。

とすると,たとえば,

https://matome.naver.jp/odai/2136555485973193401

で,

「× とんでもございません
 ○ とんでもないことでございます
『とんでもない』が1つの言葉なので、『ない』を『ございません』には置き換えられない。『とんでもないことです』でも○」

というのは,「とんでもない」を,「とんでも-ない」と一語と見るのか,「途でも‐ない」の転とみるのか,によって,正否は違ってくる。一語と見なせば,

とんでもありません,
とんでもございません,

とは言えない。しかし,「途でもない」の転なら,

とんでもありません,
とんでもございません,

でOKとなる。言葉遣いの是非は,そう簡単ではない。しかし,いずれの場合でも,

とんでもないことです,
とんでもないことでございます,

なら,問題はない,「こと」で,それまで全体を受けて,丁寧に言いかえているからだ。

https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/183.html

で言う,

「『とんでもない』の『~ない』を『~ございません』『~ありません』と言いかえた語形の『とんでもございません(とんでもありません)』という言い方…に対しては『本来の表現ではない』『伝統的な語法ではない』『誤用だ』として強い抵抗感・違和感を持つ人がいます。」

とあるが,多くは,50年を遡らない,個人的な感覚に過ぎず,語源から見ると,実は正否は決め難い。

ちなみに,

とんでもはっぷん,

という,50年代に流行した言葉は,

『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/20to/tondemo-happen.htm

にあるように,

「日本語の『とんでもない』と英語『never happen』の合成語で、『とんでもない』『まさか』といった意味で使われる。もともと戦後の学生間で使われていた言葉だが、後に獅子文六が朝日新聞に連載した長編小説『自由学校』で使用。更に同小説の映画化の際も使用し、流行語となった。1980年代には派生語「飛んでも8分歩いて10分」という言葉も生まれている。」

とある。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

【関連する記事】
posted by Toshi at 04:54| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください