2017年07月31日

しゃあしゃあ


「おめおめ」の類語には,

のめのめ,
のうのう,
ぬけぬけ,
ぬくぬく,

等々とあるが,既に,「おめおめ」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/452224251.html?1501271127

で,いくらか触れた。厚かましさを指す言い回しには,

いけしゃあしゃあ,

というのがある。「いけ」は接頭語だから,

しゃあしゃあ,

である。『広辞苑』には,

ひとにどう思われようが,つら憎いまで平気でいるさま,

とある。

蛙の面にしょんべん(あるいは「水」),

である。『江戸語大辞典』には,それを動詞化した,

しゃあつく,

という言葉も載る。

シャーシャー,

とも表記する。接頭語「いけ」は,

イッケ,

とも言うが,

卑しめののしる意を強く表す,

ために使う。たとえば,

いけ(いっけ)好かない,
いけずうずうしい,

等々。前にも,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/449373160.html

で,触れたことがあるが,『日本語の語源』は,

「副詞のイカイは,カイ[kai]の融合で,『ひどく,たいそう』という意のイケになった。〈そしてまあイケ外聞の悪い〉(浮世風呂)。〈イケらちが明かない〉(八笑人)。」

あるいは,

「イカイ(偉い)はイケになって『イケ図々しい』という。」

と言っている。また,他方,

「漢語の偉大(イダイ)は,イライを経て,エライ(偉い)に転音した。」

ともある。現代語で言うと,「えらい」になるが,

えらい出世,

という使い方をする。口語では,「えらい」は,

偉い,

と当てるが,いわゆる「すぐれている」という意の他に,

普通ある状態より程度が甚だしい,ひどい(「えろう寒いな」「えらく人が集まった」「えらい騒ぎ),
思いかげない,とんでもない(「えらいことになった」),
くるしい,つらい(「えらい坂道」),

という使い方をする「甚だしい」という意を表した,「いかい」は,一方で,

ikai→ike,

と転訛し,他方で,

ikai→erai,

と転じたことになる。いずれにも,「いかい」のもつ程度の甚だしさを保っていたが,

「いかい」は悪意に,
「えらい」は敬意に,

それぞれシフトした,ということになる。その「いけ」を外すと,

しゃあしゃあ,

は,明らかに擬音語で,『擬音語・擬態語辞典』には,

くま蝉の鳴声,
液体が勢い良く流れ出る音,
かすれる漢字の鋭い音,

と並んで,

厚顔無恥なこと,

という意味が並ぶ。なぜ,そういう意味になったかは分からない。

じゃあじゃあ,

と濁ると音が大きくはなるが,厚かましいという意味は消える。水音と関係があるのだろうが,「蛙の面にしょんべん(水)」なら,「しゃあしゃあ」ではなく,「じゃあじゃあ」なのだが。『大言海』は,「しゃあしゃあ」について,三項に分け,

水を洒(そそ)ぎかくるに云ふ語。蛙の面に,水をしゃあしゃあかけると云ふは,平気の状に云ふ語,
多量に水を洒(そそ)ぎかくる音に云ふ語,
厚かましくて,恥を思はざるに云ふ語,

と意味を載せる。この説明から見ると,「しゃあしゃあ」と「蛙の面に水」とは関係があるのかもしれない。

『日本語俗語辞典』

http://zokugo-dict.com/12si/syasya.htm

には,

「しゃあしゃあとは厚かましく羞恥心のないさまを意味し、多くは『と』をつけ『しゃあしゃあとやってくれたものだ』といった形で使われる。意味だけで捉えると悪いイメージが強いが、嫌みまじりの褒め言葉(憧れ)として用いられる場合もあり、特に悪いイメージ(憎悪)を強調する場合には『いけしゃあしゃあ』が用いられる。また、しゃあしゃあは平仮名表記の他に漢字表記の『酒蛙酒蛙(酒酒)』やカタカナ表記の『シャアシャア』がある。ただし、漢字表記はほとんど使われなくなっている。」

とある。『大言海』には,「水を洒(そそ)ぎかくるに云ふ語」の場合は,当てていないが,厚かましい意の時だけ,「しゃあしゃあ」に,

洒洒,

の字を当てている。

参考文献;
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 04:53| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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