2017年08月17日

めぐむ


「めぐむ」は,

恵む,
恤む,

と当てる。当てている「恵(惠)」の字は,

「惠の上部は,まるい紡錘(糸巻きの輪)を,ぶらさげたさま。惠は,それと心を合わせた字で,まるく相手を抱き込む心をあらわす」

とある。まさに,「めぐむ」で,

温かくいつくしむ,
相手を温かく抱き込む思いやり,

という意味である。「恤」の字は,

「血は,全身くまなく巡る血のこと。恤は『心+音符恤』で,心をすみずみまで思いめぐらせること」

で,

気の毒な人に思いを巡らす,
情けを巡らす,

という意味になる。「めぐむ」に丸めれば同じだが,「恤」は,どちらかというと,「あわれむ」で,上から目線である。『広辞苑』の「めぐむ」は,

情けをかける,憐れむ,恩恵を与える,
あわれに思って物品を与える,施す,

という意味が載るが,

相手をあわれに思う→施す,

と,いずれも,「あわれむ」の含意で,単なる心情表現から,その心情を行動に表す意味へとシフトしている,と見える。しかし,『岩波古語辞典』を見ると,「めぐみ」の項で,

「メグシと同根。眺めるのに耐えない意から,憐憫を催す意。進んで,相手に恩恵を与える意。類義語ウツクシミは,肉親や小さいものへの愛情を感じる意。」

とあり,「めぐし」をみると,

愛し,
愍し,

と当て,

「メは目。グシは,ココログシのグシで,苦しい意」

とある。「めぐし」は,

見るも切ないほどかわいい,

の意から,

見るに堪えない,いたわしい,

と,「せつない」意味が,

かわいい→いたわしい,

へとシフトしている。そして,「めぐみ」は,

(神仏・天皇などが,人々のために)心を砕きいつくしむ,
憐れんで助ける,
物を施し与える,

と意味がシフトしている。どうやら,もともと,「めぐむ」には,

上から目線,

であり,本来は,

救恤,

といった言い方をする,「恤む」の当て字が,本来なのかもしれない。それが,目線が下がり,対等以下の相手へと移ることで,

あわれむ,

という意味へとシフトし,それが,

施す,

という行動へとひろがったという流れに見える。

さて,「めぐみ」の語源については,『語源由来辞典』,

http://gogen-allguide.com/me/megumi.html

は,

「めぐみは、『いとおしい』『かわいい』を意味する形容詞『めぐし(愛し)』が動詞化した『 めぐむ(恵む)』の名詞形。 『めぐし』の『め』は『目』、『ぐシ』は『心ぐし(心苦しい)』と同じく 、『痛々しい』『切ない』の意味。 『目に見て痛々しい』『気がかりである』というのが『めぐし』の本来の意味で、そこから『切ないほどかわいい』『いとおしい』の意味が派生した。『めぐみ(めぐむ)』も,派生する前の意味を含んだ語であるため、困っている人を哀れんで金品を与えることや、情けをかけることをいう。」

としている。たしかに,「めぐし」は,『日本語源大辞典』も言うように,

「『め』(目)と『心ぐし』の『ぐし』(苦しい)から成り,目にみて苦しい,気がかりであるが本義であり,ここから胸が痛むほどかわいい,いとしいの意も派生したと思われる。」

とあり,さらに,

「近世には,『めぐし』から転じた『めごい』があらわれ,ここから,メゴコイ・メンゴイ・メゲーの語形が派生した。『めんこい』は,このうちメゴコイ・メンゴイから変化した語形と見られる。」

とする。しかし「めぐし」に,

愛し,

だけでなく,

愍し,

の字を当てていた,ということは,「めぐし」には,ただ「気がかり」というだけでなく,「あわれむ」意もあったに違いない。「めぐし」から「めぐむ」が派生したことで,

めぐし→めごこい→めんこい,

と可愛い意が純化し,逆に,

めぐむ,

は,あわれむ意をより強化し,施す,という意を強化していったように見える。

https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/1793/meaning/m0u/

は,

「与える(あたえる)/授ける(さずける)/恵む(めぐむ)/施す(ほどこす)/やる/あげる/差し上げる(さしあげる)/くれる/くださる/賜る(たまわる) 」

を比較し,「めぐむ」は,

「困っている者を哀れんで、いくらかの金品をその者に移動し、所有させる意。『恵んでやる』『恵んでもらう』『恵まれる』などのように、授受の動詞をともなった形や受身の形で用いられることが多い。」

と,意味の純化が進んでいることを示している。

なお,「あわれむ」については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/451236668.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/448793462.html

で触れたし,「いつくしむ」についても,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/451028421.html

で触れた。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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