2017年09月06日
たて
「たて」は,
縦,
竪,
経,
と,『広辞苑』は当てる。『大言海』は,「縦」「竪」の字を当てて,
立つ義,
とする。「横」の項,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/422323173.html
で触れたように,
よこしま,
横槍,
横紙,
という言い方だけでなく,
横様
あるいは
横方
で,単に,
横の方向,
とか
横向き,
という意味ただけでなく,
当然でないこと,
道理に背くこと,
よこしまなこと,
という意味を持たせる。あるいは,
横言,
横訛り,
横飛び,
横恋慕,
横流し,
横取り,
と,「横」のつく言葉は,横向きという以外は,ほとんど悪意か,不正か,当たり前でない,ことを示すことが多い。「よこしま」
http://ppnetwork.seesaa.net/article/439853010.html
で触れたように,「よこしま」は,
「邪」
と当てるが,「よこ」には,漢字の「横」にはない,
正しくない,
という含意がある。『日本語源広辞典』には,「よこしま」について,
「『横+様』,yokosamaの音韻変化,yokosimaです。縦を正,横を不正と見た日本人の言語意識があります。」
とある。『古語辞典』に,
「縦しまの対」
とあるのは,その意味なのだろう。『大言海』は,
「横状(よこさま)の転,さかさま,さかしまの類」
とある。さらに,「よこさま」と別項に,
横方,
と当てて,
正しからざること,
と意味を載せる。つまり,「よこ」には,
正しからざる,
意が,ついて回る。しかし,「たて」には,どの辞書を見ても,
タテ(上下の方向,前後の方向),
か,
縦糸(経),
時間の流れ,
の意しか載らない。語源は,
「タチ,タツ(立つこと)」
の意が載る。
立てた時の上下の方向,
距離,
の意である。他には,
タテ(竪)は,タケ(丈)の意(言元梯),
タチテ(立手)の義(名言通),
と,いずれも,「立つ」と絡んでいる。「立つ」は,『岩波古語辞典』に,
「自然界の現象や静止していめ事物の,上方・前方に向かう動きが,はっきりと目に見える意。転じて,物が確実に位置を占めて存在する意」
とある。この含意は,
立役者,
の「立」に含意を残している気がする。因みに,漢字の「縦」は,
「从(ジュウ)は,Aの人のあとにBの人が従うさまを示す会意文字。それら止(足)と彳印を加えたのが從(従)の字。縦は『糸+音符従(ジュウ)』で,糸がつぎつぎと連なって,細長くのびること。たてに長く縦隊をつくるから,たての意となり,縦隊はどこまでものびるので,伸び放題のいとなる」
で,「竪」の字は,
「上部は『臣(伏せた目)+又(動詞記号)』での会意文字で,召使が目をふせ,からだをかたくしたさま。竪はそれと立を合わせた字で主人のそばに召使が直立した侍るさまを示す。豎(ジュ そばに直立してはべる召使)と全く同じ」
で,「經(経)」の字は,
「巠(ケイ)は,上のわくから下の台へたていとをまっすぐに張り通したさまを描いた象形文字。經は,それを音符とし,糸へんをそえて,たていとの意を明示した字」
とある。「縦」「経」も,糸に絡むようだ。
なお,「横紙」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/440054730.html
「横槍」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/440387740.html
「立つ」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/399481193.html?1501986945
で,それぞれ触れた。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
今日のアイデア;
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