2017年09月23日

日本の支配構造


矢部宏治『知ってはいけない~隠された日本支配の構造』を読む。

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著者の『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/411281361.html

で触れた。本書は,日本の支配構造全体に,迫ろうとする。僕自身の異和感のきっかけは,2010年,普天間基地の県外移設を唱えて,失脚させられた鳩山首相の件である。著者もこう書く,

「誰が見ても危険な人口密集地の外国軍基地(普天間基地)を,『県外または国外』へ移そうとしたところ,官僚や検察,大手マスコミから激しいバッシングを受けて,あっけなく政権が崩壊してしまった」

ことがきっかけで,沖縄米軍基地のガイドブックをつくった,という。鳩山首相は,

「このとき官僚たちは,選挙で選ばれた首相鳩山ではない,なにかほかのものに忠誠を誓っているのではないかという思いがしました。」

と語っている。それはいったい何なのか。本書は,次の九つの視点から,今日,真に日本を支配しているのは,何(誰)なのかを明らかにしようとしている。各章が,それを示している。

第一章 日本の空は,すべて米軍に支配されている
第二章 日本の国土は,すべて米軍の治外法権下にある
第三章 日本に国境はない
第四章 国のトップは『米軍+官僚』である
第五章 国家は密約と裏マニュアルで運営する
第六章 政府は憲法にしばられない
第七章 重要な文書は,すべて英訳で作成される
第八章 自衛隊は米軍の指揮のもとで戦う
第九章 アメリカは「国」ではなく「国連」である

既に,国内の空域制限や日米合同委員会については,著者らによって,他でも触れられつつあり,目新しいものではないかもしれないが,驚くべきことは,

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「まず,多くの官僚たちが『横田空域』の存在そのものを知らない。ごくまれに知っている人がいても,なぜそんなものが首都圏上空に存在するかについては,もちろんまったくわかっていない。
 これほど大きな存在について,国家の中枢にいる人たちが何も知らないのです。日本を普通の独立国と呼ぶことは,とてもできないでしょう,」

という一文だ。さらに,基地だらけの沖縄では,

嘉手納空域,

がある。

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「嘉手納空域とはつまり,沖縄本島の上空はすべて米軍に支配されているという意味なのです。」

そして,航空法特例法の適用除外によって,米軍は,

離着陸する場所,
飛行禁止区域,
最低高度,
制限速度,
飛行計画の通報と承認,

が適用されないことになる。なぜなのか,それは,

「日本政府は,軍事演習を行う米軍機については,優先的に管制権を与える」

という日米合同委員会での「密約」に基づくものらしいのである。しかも,

「日本国の当局は,所在地のいかんを問わず米軍の財産について,捜索,差し押さえ,または検証を行う権利を行使しない」(日米合同委員会・公式議事録)

という治外法権も与えている。さらに,

「平和条約および安保条約の効力が発生すると同時に,米軍を日本国内およびその周辺に配備する権利を,日本は認め,アメリカは認める」(旧安保条約第1条)

によって,

「米軍が日本の国土のなかで,日本の憲法も国内法も無視して,
 『自由にどこでも機智を置き』
 『自由に軍事行動をおこなう』
ことを可能にする法的しくみ」

がつくられ,これによって,「国内および周辺」にもとづき,

「米軍とその関係者は,日本政府から一切チェックを受けることなく,いつでも首都圏の米軍基地に降り立つことができ…,到着後,米軍基地からフェンスの外へ出て日本に『入国』するときも,日本側のチェックは一切はいっさいありません。」

と,それは日本の国境を越えて自由に軍事行動ができることを意味している。その運用を支えているのが,

日米合同委員会,

ということになる。その異様さは,外交ルートを通さないという意味で,アメリカ大使スナイダーが,

「ようするに日本では,アメリカ大使館がまだ存在しない占領中にできあがった,米軍と日本の官僚とのあいだの異常な直接関係が,いまだ続いていることなのです。」(アメリカ外交文書)

と,言っているほどのことなのだ。著者は,それを,

「つまり『戦後日本』という国は,
 『在日米軍の法的地位は変えず』
 『軍事面での占領体制がそのまま継続した』
 『半主権国家』
として国際社会に復帰したということなのです。」

とまとめる。一番衝撃的なのは,

憲法九条は,太平洋憲章第8項がルーツとし,

太平洋憲章

連合国共同宣言

ダンバートン・オークス提案

国連憲章,

という連合国の一連の文脈の上で,憲法九条「戦争放棄」になるとし,

「ですから憲法九条とは,完全に国連軍の存在を前提として書かれたものなのです。」

と,著者は断定するところだ。彼らの視点に沿ってみたところが,新鮮である。そして,朝鮮戦争を介して,二つのことが,決められる。

戦争になったら自衛隊は米軍指揮下に入る(旧安保条約),
日本中どこにでも,必要な期間,必要なだけの軍隊を置くことができる(国連安保理に基づく二国間協定),

その結果,

占領下での米軍への戦争協力体制,

が生まれることになる。それが,以降60年も継続している。著者は言う,

「だから現在,私たちが生きているのは,実は『戦後レジーム』ではなくて,『朝鮮戦争レジーム』なのです。」

と。奇しくも,日本と韓国だけが,米国軍を国内およびその周辺に配備する権利を与えている。だから,ライス国務長官は,回顧録で,

「太平洋軍司令官は昔から植民地総督のような存在」

と称していた。

こんないびつな独立国はない。そのことを多くの国民が知らないこと,無関心なことが,一番の問題なのではないか。著者が,

「すべてのポジショントークを一度やめて,遠く離れた場所(沖縄・福島。自衛隊の最前線)で大きな矛盾に苦しむ人たちの声に真摯に耳を傾け,あくまで事実に基づいて,根本的な議論を行うときにきていると私は考えます。」

という言葉が響く。

著者の『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/411281361.html

で触れた。

参考文献;
矢部宏治『知ってはいけない~隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:02| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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