2017年09月30日

トロ


「トロ」は,

「『とろり』とする舌触りからか」

と『広辞苑』にある。

大トロの握り寿司.jpg

(大トロの握り寿司)


「マグロの腹側の脂肪に富んだ部分」

のことだ。「まぐろ」について,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/451639508.html

で触れたように,

『岩波古語辞典』には,

「大魚よしシビつく海人よ」(古事記)

と例が載る。さらに,

「江戸の世相を記した随筆『慶長見聞集』ではこれを『しびと呼ぶ声の響、死日と聞えて不吉なり』とするなど、その扱いはいいものとはいえなかった。これは鮮度を保つ方法が無く、腐敗しやすいことが原因である。かつては魚介類の鮮度を保つには、水槽で生かしたまま流通させる方法があったが、マグロの大きさではそれが不可能であった。また干魚として乾燥させる方法もあるが、マグロの場合は食べるに困るほど身が固くなる(カツオの場合は、乾燥させた上で熟成させ、鰹節として利用したが、マグロはその大きさから、そういった目的では使われなかった)。唯一の方法は塩漬にする事だが、マグロの場合は食味がかなり落ちたため、下魚とされ、最下層の庶民の食べ物だった。」

とある。事実『江戸語大辞典』には,「まぐろ」の項に,

「しび・かじき・きわだ・びんなが(実はサバの一種)等の総称。総じて下賤の食用なれど,きわだを上,かじきを中,しびを下とする。安永七年・一事千金『まぐろのさし身にどじやうの吸い物,ふわふわなどでせいふせんととのへ』」

とある。「かじき」より下だったらしい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD

にも,

「かつての日本、特に江戸時代以前では、マグロといえば赤身を指し、赤身に比べ品質が劣化しやすいトロの部分は上等な部位とは考えられておらず、切り捨てられるか、せいぜい葱鮪鍋などにして加熱したものが食べられていた。それは猫もまたぐと言われていた程であった。」

とある。確かに『江戸語大辞典』にも,「まぐろなべ」の略である,

まぐなべ,

しか載らず,

「鮪の肉と葱を汁沢山に煮た鍋料理」

とある。

ねぎまなべ,

とも呼ぶ。「ねぎま」の項では,

「ねぎまぐろの略」

とあって,

「鮪の身を賽の目に切ったのと葱の五分切とを鍋で煮ながら食べるもの」

葱鮪鍋,
鮪鍋,

とも言った。今日では,

「トロといえば高級品といったイメージがある。価格も近代になってから急激に上がり、現在では赤身の2倍以上の値段がつく。」

が,

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD

には,

「吉野昇雄『鮓・鮨・すし-すしの事典』によれば、吉野鮨本店の客が『口に入れるとトロッとするから』と命名したという。」

とある。『日本語源広辞典』にも,

「トロトロ(擬態語)」

とある。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/to/toro.html

にも,

「トロは脂肪分を多く含み、食べると舌の上でトロッとしたとろけるような感触があることから、こう呼ばれるようになった。この部位が『トロ』と呼ばれ始めたのは大正時代で、『トロ』の呼称が定着する以前は、『脂身』なので『アブ』と呼ばれていた。 トロが好んで 食べられるようになったのは、大正末期以降のことといわれ、江戸時代には赤身が上等な部位と考えられていた。特にトロが注目されるようになったのは、保存や輸送の技術が向上し,食の欧米化が進んで脂分の多い食べ物が好まれるようになった戦後からである。『トロ』は本来マグロの部位を指す呼称であるが、豚肉の『豚トロ』や鮭の『とろサーモン』など脂の乗った肉(身)を表すようにもなった。」

とある。

中トロの握り寿司.jpg

(中トロの握り寿司)


「とろ」の項,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/453813503.html?1506629096

で触れたことと重なるが,擬態語「とろっ」「とろり」「とろとろ」について,『擬音語・擬態語辞典』には,

「『とろり』よりも,『とろっ』の方が状態を瞬間的にとらえて切れのある感じを表す。また,『とろり』と比べて『とろーり』の方が持続的でより滑らかに流れる感じを表す。『とろり』が状態を一回で切り取って把握するのに対して,『とろとろ』は何度も繰り返して継続的な感じを表す。」

とある。「トロ」の,とける感じは,

とろとろ,

とろっ,

とろーり,

とろり,

か,どれだろうか。まあ,個人的には,

とろっ,

よりは,

とろり,

のような気がする。

参考文献;
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AD
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:09| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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